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    竹鉢、学パロ高校生、夏っぽいきらきらかわいい話にしたいですね

    文字書きワードパレット/檸檬
    10番 檸檬色<鮮やかな恋心・綺麗・瑞々しい>

    10番 檸檬色三郎はわりと諦めの境地。中学生のときに通っていた塾で知り合ってから5年ほどずっといやいやこれは違うと言い聞かせていたけど、たぶんもう無理。ぎいと歯噛みする。諦めることを諦めきれない三郎をまえにして、雷蔵は4年くらいずっと諦めなよって言ってる。まだ違うって言い続けてきたけどそろそろ認めるしかないかもしれない、ってぼんやり考えていたら、ぶにっと眉間が押される。
    ひょこっと雷蔵が三郎の顔を覗き込む。眉間を押してきた指は雷蔵の指で、教室で三郎の前の席に座って本を読んでいた雷蔵は笑いを堪えたような顔をしている。三郎の眉間から指を離して、エアコンによって冷えた教室と、窓際の熱の寒暖差で風邪を引きそうだね、三郎の耳元で囁く。たわいないことしか言ってないのに、なんだかやたら距離が近い。そうだな、って三郎も雷蔵の耳元で囁く。
    雷蔵と三郎の視線の先には八左ヱ門がいる。中学生のときに塾で知り合って、同じ高校に入学した。それからずっと仲がいい友達だった。八左ヱ門が笑う。その八左ヱ門の横顔を綺麗だななんて思ってしまう。クラスメイトとのおしゃべりなんていつものことだというのに、ぐつぐつと腹のなかで煮えたぎるものがある。これは嫉妬だ。
    雷蔵と三郎の視線に気づいたのか八左ヱ門がクラスメイトとの会話をきりあげて、ふたりのところへやってくる。八左ヱ門はじつと三郎を見つめて、おもむろに手を伸ばすと壁について開けっぱなしだった教室のレースカーテンを閉める。暑いだろ、って言うから三郎は、うん、とだけ返す。八左ヱ門から瑞々しい香りがして戸惑う。香水なんてつけるタイプじゃない。誰かにつけてと言われたのか。三郎は動揺する。
    雷蔵が首を傾げて、檸檬の香りがするね、て八左ヱ門の腕に顔を近づける。檸檬が庭でなったんだ、って八左ヱ門が言う。庭、と三郎が鸚鵡返しをして、おばあさまの菜園?と雷蔵が訊く。家庭菜園を趣味にしている八左ヱ門の祖母の庭からつい先日、できたてのトマトを捥いだばかりだ。朝方、檸檬の実が熟したことに気づいた祖母から味を見ようと誘われて皮を剥いて食べたという。だから檸檬の香りがすると思う、って八左ヱ門が三郎の鼻先に指を差し出す。爽やかな香りが広がる。
    ぎいと歯噛みする。だってなんかもう、腹立たしい。知り合って5年、仲が良くなってからは頻繁に一緒にいて、これは恋なんかじゃないと言い聞かせてきたのに認めてしまった。はっきりとした鮮やかな恋心が三郎に現実をつきつける。
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