15番 表面三郎は怒っている。八左ヱ門との距離感のことだ。恋仲になったのに八左ヱ門は遠慮がちに三郎に触れる。もっとこう、がばっとこい!と思うし、なんだったら恋仲になる前のほうががばっときていた、友人の触れ合いの範疇だけど。
それがなくなて、遠慮がちになって、正直なところ三郎は寂しいし、腹を立てている。ふいに三郎の面に触れそうになった八左ヱ門の手がふわりと逃げた。ごめん、じゃない!八左ヱ門なら面にも触っていいって言った!さすがに面を剥ごうとしたら怒るけど、八左ヱ門はそんなことしないっていう信頼は友人の頃からある。だから三郎は面に触れていいっていうのに、触れようとしない八左ヱ門に怒っている。
三郎は逃げようとした八左ヱ門の手をがしっと掴む。ちょっと力がはいりすぎてきりきりと締め上げるみたいになったけどご愛敬。三郎の怒りに気づいた八左ヱ門が背を正す。三郎は八左ヱ門の手のひらを頬に当てた。
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