見える偽眼ルガール「コンタクトレンズを外したとき、左右が分からなくなることがあるんだよね」
ベガ「ふぅーん」
ギース「待て。ルガールは左目だけに装着すれば済むのでは？　右は義眼だろ？」
　豪鬼、これは話がすれ違う流れだと思うが、訂正するほどではないと判断し黙っている。
ルガール「あー、うん。義眼を付けてるよ。薄くて、被せるタイプの」
ギース「義眼も？」
ルガール「偽眼オン義眼」
ギース「義眼に義眼を被せるって？」
ベガ「確かに日によって右目のカラーリングが異なるなぁ」
ルガール「運転するときはコンタクトレンズをつけるよ。気分によっては眼鏡も」
ベガ「格闘技のときもつけろ」
ギース「突っ込むのはそこじゃないだろう。ルガール。お前、右眼に視力があるのか？」
ルガール「調子が良ければ見えるよ」
ギース「調子がいい時ってなんだ。ゲーニッツに右目を潰されたか抉り取られたんじゃなかったのか？」
ルガール「薄い、被せるタイプの義眼を、右目に装着している。その下に、眼球、らしきものが残ってる。病巣でもない、無機物でもない、生物でもない。調べてもよく分からないから放置してるね」
ギース「……。もしや『偽眼』って言ってたのか？」
　豪鬼、軌道修正したことに感心する。
ギース「まあ良い。オロチの力の象徴か具現……いや見えるってなんだ。右目があることになるじゃないか」
ルガール「私の元々の右目はなくなったよ。でも、見えるものは見えるんだもの」
ギース「光だけ知覚できる、とか、ぼんやりと輪郭が分かる、とか？」
ルガール「そんな感じ」
ベガ「脳の異常では？」
ギース「そうだ、ベガに診てもらえ」
ルガール「イヤだよ。見られたくないから義眼で覆っているのに。お尻の穴を見られるより恥ずかしい」
豪鬼「お前の右目は尻の穴だったのか？」
ルガール「変なところに食いつかないでくれるかな？」


　ルガールの右の眼孔には、オロチの力が納められている。それが殺意の波動と融合した時に、千里眼の如き力を発揮した。原子の理、万物の根源を観測する眼球。神の目と言っても差し支えはあるまい。
　今は豪鬼によって殺意の波動がほぼ除かれたため、沈静化している。
　だが、偶に視えるようだ。