o0カチリ。ダイヤルを鳴らして道の対岸にいる二人に声をかけた。
試しにかざしてみたインスタントカメラのレンズ越し、ぽかぽかの太陽に照らされた昼日中の往来は柔らかく霞んで目に写る。
「野郎ども、ツーショ撮ってやるから笑え」
「うっす!オナシャス!」
「今食ってんだけど」
季節のフルーツ盛り合わせクレープを手に持った男は、にぱにぱと笑っている。
おかずクレープをもそもそ食べてる男は、文句を言う割に満更でも無い顔を隠しきれていない。
──本当にベストポジションだ。クレヨンで描いたような花と太陽は、分かりづらいけど確かに見つめ合っている。
「おい、伏黒笑えって」
「オマエが俺の分笑っとけばいいだろ」
「虎杖ー、撮るからこっち向けー。いちたすいちはー?」
「にーー!!」
パチリと時間が切り取られる。カメラの残りの枚数を確認してから二人の隣に戻れば、はにかみたくなるような甘い空気が雑踏に塗れて霧散していくのが分かった。
「伏黒のやつ味なに?」
「スモークサーモンとチーズ」
「うまそ。なんかしょっぱいもんの口になっちゃった、一口もらってもいい?」
「おかずクレープ選ぶ男って、最初に靴履く方の足決めてそうよね」
「オマエは俺にどういう反応を望んでるんだ?」
「雑な偏見だなぁ」
現像される日が楽しみだ。私の気遣いはどんな風な形にされるんだろう。ペンでハートでも書き込んでから贈ってやろうか。付き合い始めたことに私が気づいてないと思っているバカどもの気恥ずかしげな顔が目に浮かぶ。
一日二十個限定クレープの上に王冠みたいに乗っかった、きらきら輝くシャインマスカット。
ちょっと先の未来に思いを馳せながら口の中で弾けさせたそれの甘さは、私だけが知っている。