突然降り出した雨の中、クロウは駆け足でアジトへと戻っていた。カードを教えていた子ども達をマーサハウスに送り届けた帰り道だった。
「……あーついてねぇぜ。」
濡れて色が濃くなったジャケットが肌に張り付く感覚が不快だ。
こんなことになるならばマーサハウスで傘の一本でも借りてくればよかったかもしれないと独りごちる。
アジトの入り口が見え、足を早める。中に入っても全身が濡れた肌寒さからぶるりと体が震えた。
窓の外は相変わらずの土砂降りである。雷こそ鳴っていないが、遠くからゴロゴロという音が聞こえてくる。
これは近いうちに稲妻も見えるだろう。
ふぅ、と息を吐いてクロウは衣類が入ったケースの中からタオルを取りシャワー室へと向かった。
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