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    ひぐらし

    ひぐらし@higurashi113043
    ※作品は全て二次創作です。公式様とは一切関係ありません。

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    ひぐらし

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    2(1ヶ月後、ウェンの一言まで)

    2「ガイアさんじゃないか!!最近見てなかったから心配したんだぞ!」

    呼ばれたその名に、周りにいた人達がみんな一斉に振り返る。

    「おぉ、久しぶりだな」

    みんなが振り返った先で青髪の青年、ガイアはその青い髪を揺らしていつもと同じように笑っていた。

    「いやぁ、昨日まで旦那様に外出するのを止められていてな…今日ようやく出られるようになったばかりなんだよ…」

    ガイアはやれやれ、という風に肩を竦めて笑う。
    実際は外出を禁止されるどころか、つい一週間前ほど前までずっとディルックに抱きかかえられてでしか移動させてもらえなかったのだが、それは心の内にそっと閉まっておく。

    そんな風にガイアが考えていることなど露知らず、ガイアの姿を久しぶりに見た人々は、一斉にガイアの元へ駆け寄り、久しぶりだとか、寂しかっただとか口々に言い出した。
    そんななか、突然一際大きな声で、

    「そうだ!せっかくだし今からエンジェルズシェアで飲もう!!」

    と誰かが叫んだ。
    モンドは自由の国として有名だが、酒を愛する国でもある。だから、そんな誘いが聞こえて乗らないモンドの人間はまずいない。



    そんなこんなで真夜中に差し掛かる頃には、エンジェルズシェアのあちこちに寝っ転がった酔っ払い達が、幸せそうな顔で夢の世界へと旅立っていた。
    ガイアはそんな酔っ払い達を見つつ、まるで水を飲むかのように酒を呷る。

    「…やっぱりわからないな」

    そう独りごち、席を立つ。
    トントンと螺旋階段を降り、カウンターの方へ歩いていく。
    カウンターには後片付けをしているディルックの姿があった。

    「もう1階の後片付けはほとんど終わったから、あとは上の後片付けだけだよ。だからもう少し待っていてもらえるかい?」

    ディルックは申し訳ないそうに言う。

    「あぁ、いや、大丈夫だ。…じゃあ上で酔い潰れてる奴らを起こしてくる」

    「ありがとう、でも今日は久しぶりの外だろう?だから休んでいてくれ」

    もう一度上の階に行こうとするガイアを呼び止め、ディルックは代わりに階段の方へと向かっていった。

    「はぁ……」

    階段を登っていくディルックの姿を見届けたガイアは、深いため息をつく。
    なんだか、ずっとぬるま湯に浸かっているような気がする。自分はこんな場所でのうのうと生活していていいのだろうか。

    ガイアは一度、この国を裏切り、深淵に沈んだカーンルイア側へついた。そして、その償いとして、暁の光を見ることが永遠にない場所で、風の吹かない場所で死んで、地獄でさ迷い続けるつもりだった。それが自分の罪の償い方だと信じていた。

    なのに、その計画は完全に潰れてしまった。
    予想外のことが2つあったのだ。

    1つ目は、ようやく死ねると思ったのに何故か生き長らえてしまったこと。
    いや、生きるというのは語弊があるかもしれない。確かにあの時、ガイアは死んだ。自分で自分の喉笛を掻っ切ったのだから間違いない。
    なのに、何故か今、こうして酒場で酒を飲めているのだ。

    2つ目は、ディルックがガイアを風の吹くこのモンドへ連れ戻したこと。
    もう少しこの世界に存在することが許されたとはいえ、ガイアはモンドの裏切り者だ。二度と太陽に、風にあたる資格はないはず。それなのに、ディルックはそんなガイアの悩みなんて知らないのか、普通にガイアを再び地上へと連れ出したのだ。
    ここはあまりにも暖かすぎる。街のみんなは、知らないとはいえ、裏切り者の自分を当たり前のように迎え入れてくれるのだ。そして、ガイアが裏切り者だと知っている人も、みんなガイアを嫌がったりしない。みんないつも通りに接してくれる。
    ディルックだってそうだ。彼はガイアをモンドへ連れ戻したあと、1ヶ月もの間、殆ど付きっきりでガイアの世話をしてくれた。ガイアの体が硬くなる度に体をほぐしてくれたり、ガイアの現状について沢山調べてくれたりした。
    本当にここは良い場所で、自分のような罪人には、あまりに過ぎる幸福なのだ。勿論、優しくされるのを迷惑だと思ったことは一度もない。けれど、自分なんかに時間を使ってほしくないと思うのだ。
    だから、ただただ暖かくて、ただただ苦しい。

    …少し酒を飲みすぎてしまったのだろうか。せっかくアルコールを体に入れたはずだというのに、悪いことばかり考えてしまう。

    「ディルック!少し風にあたってくる」

    ガイアは2階にいるディルックに聞こえるよう声を張り上げ、裏口の扉を開けた。


    「こんばんは、ガイア」

    サァと一陣の風が吹き抜けた。

    ガイアが声の聞こえた方を見ると、城壁に沿って積まれている酒樽の一番上に、緑の吟遊詩人ウェンティが座っていた。

    「これはこれは、名高い吟遊詩人が一体なんの用で?」

    ウェンティはガイアの言葉にくすっと頬を緩ませる。

    「今日は君に質問があってきたんだ」

    ふぅと一度息を吐いてから、ガイアを見下ろして続けた。


    「君、このままだと今度こそ本当に死んじゃうよ?」

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