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    ume8814

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    ume8814

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    Dom/Subユニバース仁竜のプレイ成功ターン

    掌中に満ちる 竜三が作った料理をツマミに俺が選んできた酒を飲む。ほんの数時間前まで仕事をしていたことすら忘れそうな程に穏やかな時間だ。なんてことの無い話に相槌をうち、朗らかに笑い、薄らと頬を酒精に染めている竜三見ていると薄らと湧き上がる欲があった。
    「竜三、しないか」
    「あ〜?別にいいが、どっちだ」
     突然すぎたかと思ったが特に気にした様子もない竜三に安堵する。しかし確かに、どっちだろうか。どっちにしろ俺は竜三を甘やかしたい気分だ。こちらに視線を向けながらちびちびとお猪口に口をつけている竜三を見ながら俺も揃いのお猪口に口をつける。
    「なんだよ。しねぇのか」
     怪訝そうな顔をした竜三が口に含んでいた酒を飲み干すとカラカラと笑う。随分と機嫌がいいようだ。酒の力を借りる訳では無いが、今日ならプレイも上手くいく気がした。
    「久しぶりにプレイしよう」
    「いいぜ」
     竜三の表情が曇るのではないかと少し不安だったが、変わらずに薄らと赤い頬のまま笑っている。前回のプレイから1ヶ月程たっただろうか。前は上手く行かなかったが、この様子なら今日は上手くいくかもしれない。

    「セーフワードは」
    「境井」
     テーブルの向かいに座る竜三にいつもの問いをする。返ってきた答えは決めた通りの単語だったが、語尾にハートマークでも着いているのではないかと思うほどご機嫌で、それがおかしくて笑みがこぼれる。
    「少し待っていてくれ」
     その言葉に竜三が頷いたのを確認して、俺は一足先にいつものソファへと移動する。
    「竜三、come」
    「おおせのままに」
     ふわふわとした口調の割にしっかりした足取りでこちらへ竜三が向かってくる。

     可能な限り傷付けることのないようにしたいと思っているが、どれだけ気をつけたつもりでいても、コマンドを出してみなければどう転ぶか分からないのが竜三とのプレイだった。いつもの場所でいつものように、そうやって何度も繰り返し、今回も大丈夫だろうかと出すコマンド。何度繰り返そうと、それを竜三が聞き届けてくれた時の喜びは何にも勝る。
     余所見もせずにこちらへ向かってきた竜三は俺の正面に立ち、得意げに俺を見下ろしている。所在なさげにコマンドに応えるていることも多い竜三にしては珍しい姿だ。酒のせいだけではないだろう、普段より少しだけ体温の高い竜三の手を握る。
    「good boy. いい子だ」
     眦を下げてまるでそうだろうとでも言うようにこちらを見る竜三が堪らなく愛しい。
    「Kneel」
     撫で回してやりたくて褒めるのもそこそこにコマンドを出してしまった。さっきのコマンドに対する様子から、恐らく今日は最後までできる日だと思う。しかしそれでも竜三が僅かに逡巡しているのが気にかかった。
    「どうした」
    「ん〜」
     よっぽど心配が顔に出ていたのだろうか。ちらりと俺の顔を見た竜三が、違うそうじゃないんだと呟く。
    「なあ、これでもいいか」
     ほんの数秒の躊躇の後、そう言うと竜三は俺の正面のラグの上にどっかりと胡座をかいた。最近徐々に慣れてきた割座で座る竜三の頭の位置よりも一段低い所から、上目遣いの竜三がこちらを覗き込む。
    「駄目ならいいんだ」
    「ああ、ああ、もちろん構わないさ」
     了承の言葉など口にすれば随分素っ気ないが、満たされる思いに言葉が詰まる。思わず、無防備にこちらに向けられている竜三の額に頬に口付けてしまう。ふふっと漏れる竜三の笑い声と口付けの合間に、ありったけの語彙で竜三を褒めちぎった。
     DomとSubのパートナー関係は、Subからの信頼があってこそ成り立つものだ。これまでの竜三との関係に信頼がなかったとは思っていないが、最初からすんなりことが運んだ訳では決してない。それがこうして、これまでの竜三なら我儘だとでも思うのだろうか、恐らく言わなかったような提案をしてくることが嬉しくないはずが無かった。きっとこれは世間一般の考えるkneelではないだろう。しかしそれでも良かった。
    「どうしたんだ」
     サブスペースに入ったのだろう、竜三の目にも箍が外れているように見えるだろう俺に不思議そうに尋ねてくる。その竜三の目はとろとろと輪郭を失っていて、常にない表情で笑う竜三にどうしようもなく満たされていた。促すまでもなく上半身を俺の脚に預けている竜三との間にある僅かな距離すらもどかしく、ソファと竜三の間の狭いスペースに身体を滑らせた。
    「お前のDomになれて良かったと思ったんだ」
     窮屈になったのだろう、後ろにズレようとした竜三を強引に抱き込んで告げる。表情こそ見えないが顔の近くでフスッと笑っている音がした。
    「なぁ、竜三教えてくれ。お前はどうなんだ」
     自分が聞く声ですら酷くだらしないと思う程だ、聞かされている方はたまったものでは無いかもしれない。いよいよ声を上げて笑い始めた竜三に緩く肩を押される。竜三に押しやられるまま素直に腕の力を抜くと、相も変わらず普段とは全く違う笑顔を浮かべた竜三と目が合う。
    「おれも。おれもそうおもってる」
     自分で促したくせに竜三の口から告げられる言葉は想像以上に良く響いた。何も言えずにいると、いくらサブスペースに入っていると言えども恥ずかしいのだろう、竜三は直ぐに俺の肩口に顔を埋めてしまった。
    「おまえはいわないとわからないからな」
    「耳が痛いな」
     今度は俺が笑う番だった。いや、笑い事では無いのだ。こと竜三に関しては、確かに言って貰わなければ気付けないことが多い。やっとこの腕の中に納めた竜三がすり抜けてしまうことがないようにと願えばこそ、いつか酒や第2性の力に頼らなくとも俺が竜三が知らぬ間に我慢していることに気付けるようにならなければ。
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    ume8814

    DOODLEグリクリグリ
    読書 サイドテーブルを挟み緩く向かい合うように置かれた1人がけのソファで、クリーデンスとグリンデルバルドはそれぞれ本を読んでいた。日が落ちてから随分経ち分厚いカーテンの下ろされた部屋では照明も本を読むのに最低限の明かるさに絞られていた。その部屋には2人のページを捲る音だけが静かに響いている。


     クリーデンスが本を読むようになったのはつい最近、グリンデルバルドについてきてからのことだった。最低限の読み書きは義母に教えられていたが、本を読む時間の余裕も、精神的な余裕も、少し前のクリーデンスには与えられていなかった。
     義母の元でクリーデンスが読んだ文字と言えば自分が配る救世軍のチラシ、路地に貼られた広告や落書き、次々と立つ店の看板くらいのもので、文章と呼べるようなものとは縁がなかった。お陰でクリーデンスにはまだ子供向けの童話ですら読むのはなかなかに骨が折れる。時には辞書にあたり、進んだかと思えばまた後に戻ることも少なくないせいでページはなかなか減らない。しかしクリーデンスはそれを煩わしいとは思わなかった。今までの生活とも今の生活とも異なる世界、新しい知識に触れる事はなかなかに心が惹かれる。クリーデンスにとっては未だにはっきりとしない感覚だがこれが楽しいということなのかもしれないと、ぼんやりとだが思えた。それに今日のように隣で本を読むグリンデルバルドのページを捲るスピードは、自分のものとは異なり一定で、その微かに聞こえてくる紙のすれる音が刻むリズムがクリーデンスには酷く好ましかった。
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