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    ume8814

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    ume8814

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    酔った仁の介抱をする竜三というお題箱に頂いた話。普通に下品。現代AU仁竜です。

    #仁竜
    jinryu

    就寝時間は二時間後「まことのぶしにぃ……」
    「はいはい、サラリーマンのお前に鎧はいらないよな」

    宴もたけなわ。たけなわどころかもうお開きの時間だ。真の武士に鎧は要らぬと宣言した仁は、ついさっき最初に服を脱いでから4度目にもなる宣言を済ませた。

    「もういい加減に寝ろ」
    「まだだ」
    「まだも何も無いんだよ」

    宣言の度に服を脱いでいく仁に鎧の代わりにこんなのはどうだとスウェットを渡し、パーカーを渡し、一旦素直に腕を通したと思えば脱ぐのを繰り返している。最後に渡した着る毛布も今まさに脱ごうとしていた。

    「風邪ひくだろ」
    「俺はそこまでなんじゃくではない」

    仁が初めに脱いだ時から少しずつ机の上を片し始めた俺は、仁が脱ぐ度に服を渡しながらどうにかこうにか片付け終えようとしていた。
    片付いたら仁を連れて寝室にひっこもうと思っていたが、もうこうなってしまったら歯磨きさせるのは無理だろう。でも1日くらい歯を磨かなかったからって死ぬ訳では無い。きっと大丈夫だ。仁を寝室まで連れていく前に、冷蔵庫から水を1本取りだす。仁の酒は1度脱いだ後から少しずつ水とすり替えていたから大丈夫だと思うが、どうせ明日の朝に必要になるだろう。もう食器も片付けたし水も持った。あとは寝るだけ。もう寝るだけなんだが、この酔っぱらいをベッドに入れるまでがうっかり正気を保ったままの俺の最後の大仕事だった。

    「ほら、寝室行くぞ」

    まだ着る毛布を脱ごうとしている仁を見やるが動こうとしない。俺の呼び掛けを聞いてはいるのか、脱ぎかけの毛布から手を離し、なんとも締まらない格好で仁王立ちしている。その癖、あまりにも堂々とした仁の様子がおかしくて小さく笑ってしまう。
    それが気に食わなかったのか眉間にシワを寄せた仁だったが、突然こちらに向かって両腕を突き出してきた。

    「なんの真似だ?」
    「ん」

    腕を伸ばしたまま、こちらを据わった目で仁が見ている。酔ってパキッた目を向けてくる仁は瞬きが少なくて怖い。そんな仁は変わらず伸ばしたままの腕を微かに振るった。

    「ん」
    「俺に運べというのか」

    こうと決めたら頑固な仁のことだ。もうテコでも動かないだろう。中途半端に脱げた着る毛布はズレ落ちて肩が剥き出しになっている。なんとも間の抜けた格好のくせに圧だけは様になっていた。昔取った杵柄ってやつか。しかしだらしないのは変わりないから、少しだけでも見てくれを良くしてやろうと着る毛布のデカいボタンを嵌め直していく。

    「武士がこんなんで良いのか」
    「俺はサラリーマンだからな」

    お前……調子がいいな。本当に酔ってるのか。調子の良さにも感心するが、俺がボタンを留めてやってる間も腕を降ろす様子がないことにも感心する。無駄な抵抗は良した方が良いとは思うが、いくら俺の方がデカいとはいえ仁を抱き上げるのは容易ではない。これで良いかと片腕を取り肩に回させて移動しようとしたら、仁に襟首をぎゅうと掴まれる。

    「こうだろう」

    そういうかと思うと、酔っ払いとは思えない身のこなしでくるりと身体を回した仁に正面に回り込まれて頭を抱き囲まれる。そうしてリビングで抱き合う酔っ払いの男2人という情景が出来上がった。信じられないほどむさ苦しい絵面だ。何が楽しいのか、ふふっと耳元で笑う仁の吐く息が酒臭い。

    「このまま運べと言うのか」

    抵抗としてそのままズルズルと前に進もうとするが、首に腕を回したままの仁が体重をかけて踏ん張っているせいで首にかかる負担が尋常ではない。

    「水なら持つ」
    「お前なんて抱き上げられるかよ」
    「ああ……、老いとは恐ろしいものだな」

    誰がおっさんだ。お前もおっさんのくせに。決して、仁に煽られたから抱き上げてやる訳では無い。ただこいつはもうこうなったら言い聞かせるのは無理なんだ。そうだろう。今までだってそうだったじゃないか。

    「おら、水持て」

    ペットボトルを頭の横に差し出しと、すぐにひったくられる。流石だりゅうぞう、なんて言ってふにゃふにゃ笑う仁は呑気に頬にキスしてくる。俺はこれからお前を抱き上げるために気合いを入れようとしてるんだ。やめてくれ。

    「お前、俺が抱き上げたらすぐに腰に足回せよな」
    「相分かった」

    ご機嫌な仁は、腕に一層力を込めているが、少し待ってくれ。腹を括っていざ仁を抱き上げるかと思ったが、着る毛布がすこぶる邪魔なんだ。丈の長い着る毛布は暖かいがこれでは足が開かないし掴みにくい。仕方なし、少し屈んで毛布の裾をたくし上げてやる。

    「助平な奴だな」
    「ベッドまでに落とされたいか」

    何が楽しくて酔っ払いの太腿をわざわざ晒しあげているのか。楽しそうにケタケタと笑ってるお前は良いよな。こちとら酔いなんてとうの昔に覚めちまってるって言うのに。こんな酔っ払い、さっさとベッドに押し込んで寝よう。そうしよう。

    「仁、行くぞ」
    「ああ」

    捲りあげた毛布と一緒にグッと仁のケツを支える。すかさず仁の脚が腰に回ったが、しかし重い。なんでこんなに重いんだ。

    「お前さ」
    「それ以上言うと暴れるぞ」
    「老いって怖いな」

    面白くなって揶揄うとペットボトルで肩甲骨の辺りを抉られる。地味に痛いからやめてくれ。何はともあれ、後は仁をベッドに突っ込んで寝るだけだ。腕や腰が限界を迎える前にベッドにたどり着かなきゃならない。
    戯れも程々に、ノシ……と歩みを進めた。俺が歩く度に揺れるのが楽しいのか、ペットボトルによる攻撃も止んで、また肩の辺りで仁が笑っている。
    リビングから寝室までは別に離れている訳では無い。短い廊下を抜ければ直ぐだ。リビングの電気を消し、キッチンの電気を消す。キッチンの電気を消すのに手間取っているとゴソゴソと仁が身動ぎするから何かと思ったら、後頭部の辺りからペットボトルのキャップを捻っている音がした。お前は本当に器用な奴だな。

    「零すなよ」
    「大丈夫だ」

    水を飲んでる仁が大人しくなっている間に廊下を進む。あっという間に目当てのドアにたどり着いた俺は、寝室のドアは仁に開けてもらった。キッチンの電気までは何とか消せたが、腕の辺りでたぐまっている着る毛布は思ったよりも踏ん張りを効かなくさせていた。行儀が悪いが仁に開けてもらった扉は脚で閉めて、ベッドまでの残り少ない距離を縮めていく。もう目的地はすぐそこだ。短い距離だったが、着る毛布のフカフカで少しツルツルとしている生地は段々とズリ上がって来ている。仁の脱衣癖には困ったもんだが、下着まで脱ぐことがないのは良いことだ。着る毛布がズリ上がったせいで、いつの間にか下着1枚で隔てられた仁の股間が俺の腹の辺りに押し当てられている。いかに好いた相手だろうとそういう時でもないのに直で股間が触れるのは嫌だろ。そう、仁の股間が腹の辺りにゴリッと…、…………………?ゴリッ…………?

    「仁!お前!!」
    「バレたか」

    びっくりして仁のケツから手を離す。何がバレたかだ、散々酒を飲んだくせに、お前、お前はよ、

    「お前の方がよっぽど助平だろ!!」

    手を離したって言うのにあいも変わらず兆した逸物が押し付けられているのが我慢ならず、自由になった腕で仁を引き剥がそうとするが、俺の腰をガッツリ掴んだ脚は離れていかない。なんでそんなに筋肉があるんだ。それに、もしかしなくても既に酔っていないな。

    「明日休みだろう」
    「嫌だからな、俺はもう寝るって決めたんだ。それにもう俺のは使い物にならない」

    これは嘘だ。きっと多分使える。そんな気がするけど絶対途中でイけなくなる。これは確信できる。酔っ払いの介抱をした後に、その酔っ払いの手でヒンヒン泣かされたくなんてなかった。

    「使い物にならなくてもイけるようになったでは無いか」

    そんなの俺が一番分かってる。耳元で全然嬉しくない事実を囁いた仁は、唐突に腰から脚を離してベッドと俺の間に脚を降ろした。
    もうそこからは一瞬だった。首にかけられたままの腕を支点に、あっという間に天地がひっくり返り仁と一緒にベッドに転がされる。突然ひっくり返った天地に驚く間もなく、ペットボトルを放り投げた仁が覆いかぶさってきた。仁の顔が俺の視界に影を落とす。段々と近づいてくる仁の顔が、すっかり酒精とは別の熱に浮かされているのが分かって憎たらしい。嫌だ、絶対に、絶対に俺は寝てやる。寝てやるからな………
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    ume8814

    DOODLEグリクリグリ
    読書 サイドテーブルを挟み緩く向かい合うように置かれた1人がけのソファで、クリーデンスとグリンデルバルドはそれぞれ本を読んでいた。日が落ちてから随分経ち分厚いカーテンの下ろされた部屋では照明も本を読むのに最低限の明かるさに絞られていた。その部屋には2人のページを捲る音だけが静かに響いている。


     クリーデンスが本を読むようになったのはつい最近、グリンデルバルドについてきてからのことだった。最低限の読み書きは義母に教えられていたが、本を読む時間の余裕も、精神的な余裕も、少し前のクリーデンスには与えられていなかった。
     義母の元でクリーデンスが読んだ文字と言えば自分が配る救世軍のチラシ、路地に貼られた広告や落書き、次々と立つ店の看板くらいのもので、文章と呼べるようなものとは縁がなかった。お陰でクリーデンスにはまだ子供向けの童話ですら読むのはなかなかに骨が折れる。時には辞書にあたり、進んだかと思えばまた後に戻ることも少なくないせいでページはなかなか減らない。しかしクリーデンスはそれを煩わしいとは思わなかった。今までの生活とも今の生活とも異なる世界、新しい知識に触れる事はなかなかに心が惹かれる。クリーデンスにとっては未だにはっきりとしない感覚だがこれが楽しいということなのかもしれないと、ぼんやりとだが思えた。それに今日のように隣で本を読むグリンデルバルドのページを捲るスピードは、自分のものとは異なり一定で、その微かに聞こえてくる紙のすれる音が刻むリズムがクリーデンスには酷く好ましかった。
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