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    とわこ

    @towako71

    レツゴ(主にエリシュミ、シュミ右)とかレツゴストDKとか

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    とわこ

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    アーム総受け続き物その③

    ぼすっと自室のベッドにダイブすると同時に、堪えきれず溜息が出た。
    今日は散々だった。
    たまたまいつもと違うリップをしていただけなのに、それが原因でレゾンの興味を引いてしまい、素顔を見られキスもされ。
    クラージュにも軽く口説かれ、なのにカイは俺を口説くどころか敵チームの参謀、としか見ていない。俺が俺だと気づいていない。

    「こんな仮面で、何が隠れるって言うんだ…」
    外した仮面をじっと見る。
    こんなもの、しないで初めから素顔で参戦すれば良かった……のか?
    そうすれば、カイは……昔みたいに、俺に好戦的な目を向けて、勝負を仕掛けてきたのだろうか。
    そう考えて、いやいやと俺は誰が見ているわけでもないのに首を振る。
    レゾンの、あの熱に浮かされたような眼差し。
    あれに、四六時中晒されるのはちょっとごめんだ。
    クラージュだって、俺の素顔に興味を引かれていたし。
    チームメイトとはチームメイト以上の関係性を築く必要などない。

    そんなことをぐるぐると考えているうちに、いつの間にやら俺は眠りに落ちていた。


    次の朝。
    今日は、レースはないが、ミーティングと練習は当然ある。
    渋々と練習場へ赴くと、いつものように………いや…いつもより多い…?ファンの女どもが、練習場のあちこちで騒いでいた。
    「やぁ、おはようアーム。どうした?不機嫌そうな顔をして」
    ディアナがいつもの明るい調子で挨拶を寄越す。
    「別に、不機嫌なんかじゃないさ」
    フンと鼻を鳴らして答えると、「そうか」とディアナは追求はしてこなかった。
    「不機嫌じゃないなら、寝不足か?」
    変わって俺に声を掛けて来たのはクラージュだ。
    大袈裟にポーズをつけ、
    「睡眠はしっかりとってくれよ?お前の美しい顔に隈なんて似合わない!」
    と声高らかに曰う。
    きゃっ、と周りの女が声を上げ、そしてその中のひとりがおそるおそるクラージュに訊ねた。
    「クラージュさまは、アームさまのお顔を見たことが…?」
    「ああ、見たよ。それはそれは美しい、煌めく瞳を、確かにこの目で……」
    「きゃー!羨ましーい!」
    「アームさま、私たちにも素顔を見せてー!」
    騒がしさに眩暈を感じ、俺は片手で顔を覆った。
    こいつらのファンは、どうしてこうも……
    「はいはい皆、ミーティングを始めるから、少し外に出ていてくれる?」
    ぱんぱん、と手を叩いてシャリテが言う。
    助け舟を出してくれたのか、と思ったら。
    部外者を追い出した途端にシャリテは、
    「ひどいわ、アーム!私もあなたの素顔が見たい!」
    とこちらに鋒を向けてきた。
    「俺の素顔なんか、見てどうする……」
    「似合うメイクやお洋服を考えるわ」
    「くだらない。絶対に仮面は外さないからな」
    「なによ意地悪ね。クラージュには素顔を見せたんでしょう?」
    「あれは事故だ!」
    そう、事故なんだ。
    他のことに気を取られてしまっていたから、仮面を外していたことを忘れていたんだ。
    他の、こと…レゾンに、キスされたことに、気を取られていたから。
    ………くっそ、思い出したらまた腹が立ってきた…!
    「そう言えばレゾンはどこだ」
    文句、あるいは嫌味のひとつでも浴びせたくて周りを見渡す。
    レゾンの姿はない。
    「レゾン?……遅刻かな、まったく」
    ディアナはやれやれと肩をすくめ、
    「ちょっと様子を見てくる」
    とくるりとドアに向かう。すると当たり前のように
    「あん、待ってリーダー!私も行く」
    なんて言いつつシャリテが後を追い、……俺はクラージュとふたり、部屋に残されてしまった。
    「……ちっ。仕方ない、全員揃うまでマシンのメンテを…」
    「なぁ、アーム」
    俺が指示を出すのを遮って、クラージュが俺を呼んだ。
    「…なんだ」
    「レゾンと何があった?」
    じっとこちらを見つめるクラージュの眼はぎらついていた。
    「…………。なにも。お前が想像するようなことはなにも」
    「そうかよ」
    言うが早いか、クラージュはあっという間に間合いを詰め、
    ……次の瞬間には俺はクラージュの腕の中だった。
    「なっ、なにして…」
    「アーム。昨日見たお前の素顔が、瞼に焼き付いて離れないんだ。胸が苦しい。ほら、聞こえるだろう?俺の胸の、この高鳴り…」
    クラージュは、ぎゅうと腕に力を込めて俺の自由を奪っておきながら、そんなしおらしいことを言う。
    「もう一度、顔を見せてくれないか」
    熱い息を鼓膜に吹き込まれ、俺はまずいと思いつつも、この状況を打破する手を思いつくことが出来ず、いやいやと首を振った。
    「そんな可愛い抵抗、抵抗のうちに入らないぜ?」
    クラージュの声は熱に浮かされたようだ。
    「ほら、アーム……」
    「や、いや、だ……っ!」
    「強情なところも、嫌いじゃない」
    クラージュの顔はひどく近くにある。
    このままじゃ、こいつにまでキスをされてしまうのではないかと、俺は怯えた。
    「アーム!」
    俺を窮地から救ったのは、上擦ったレゾンの声だった。
    はっとして顔を上げると、いつの間に来たのか、とても焦った顔をしたレゾンがこちらにばたばたと駆けてきた。
    そしてそのまま、クラージュに掴みかかり、俺とクラージュを引き離す。
    「大丈夫か!?何もされていないか?」
    「あ…ああ、なにも…」
    「良かった……」
    情けなく眉を下げ、レゾンは俺をぎゅっと抱きしめた。
    ……俺の災難は、終わっていないようだな?
    抱きしめる腕が変わったところで、こいつも危険人物であることに変わりはない。
    「……レゾン。お前とアームは、どういう関係なんだ」
    不穏に低めた声で、クラージュが問いかけた。
    「お前に言う必要があるか?」
    レゾンもいかにも気分を害している様子で答える。
    「…三角関係、かしら?」
    シャリテが、少し離れたところで首を傾げた。
    気づかなかったがレゾンと一緒に戻ってきていたらしい。
    「三角関係!」
    当然居るディアナは大声で叫び、ショックを受けたと言わんばかりによろめいた。
    「ああ!アームの!魔性の美貌に!惑わされし哀れな男たちよ!こうなったら、アームを賭けて決闘を──」
    「待て。ディアナ。待て。俺の意思はどうなる」
    暴走しているディアナのお陰で、幾分冷静さを取り戻した俺は、レゾンを振り払いようやく身体の自由を手に入れる。
    「お前たち、つまらない冗談に俺を巻き込むな。何が三角関係だ、馬鹿馬鹿しい」
    言いつつも俺はレゾンからもクラージュからも距離を取り、ディアナとシャリテを盾にするように二人の背後に逃げた。
    「そうよねぇ……レゾンとクラージュが勝手に盛り上がってるだけよね」
    シャリテはくすりと笑い、そしてぽんと俺の肩に手を置いて、
    「魔性の美貌、私にも見せて?」
    と言うが早いか俺の仮面をあっという間に奪ってしまった。
    「あっ──」
    あまりに予想外の人物からの不意打ちに、俺は目を丸くして言葉を失い、顔を隠すのも一瞬遅れた。
    「きゃあ!本当に美人ね!」
    「シャリテ!ふざけるなっ、仮面を返せ!」
    「きゃー、怒ったぁー。こわーい♡」
    シャリテは笑いながら仮面を俺に返したが、時すでに遅し。
    先程まで一触即発だったレゾンとクラージュはこちらを凝視している。
    また、顔を、見られた。
    そして厄介なことに、あいつらはすっかり俺のこの顔の虜のようだ。
    「アーム、ああどうして仮面で顔を隠してしまうんだ?」
    「その瞳に俺を映してくれ、アーム!」
    ふたりに詰め寄られ、俺は恐怖を感じ、ディアナの背に隠れた。
    「……ふぅん。お前たち、アームの好みのタイプも知らず勢いだけで口説いたって駄目だろう?」
    ディアナはにやりと、俺を振り向いて笑った。
    「アームはな、誰よりも速い男が好きなんだよ。アームより、私より、──あのミハエルより速い男じゃないと、アームは落とせないぞ?」
    それを聞いて、レゾンとクラージュは、はっとした顔をした。
    そして、シュヴァリエ・ド・ローズを高々と掲げ──
    「待っててくれ、アーム!俺は、誰より速くなってみせる!」
    「妥当ミハエル!俺のアームは誰にも渡さないっ!」
    と口々に気合いを入れたかと思うと、
    「リーダー!早く練習走行を!」
    「いや、次のレースに向けて作戦を。レースは頭脳戦だ!」
    とふたりしてディアナに詰め寄った。
    「まぁ、気合い十分ね♡」
    シャリテが嬉しそうに笑う。
    ディアナめ、何も考えていないようでいて──やはりこのレ・ヴァンクールのリーダーなだけはある。
    俺はこの状況を利用させてもらうことにして、ふっと口元に精一杯笑みを浮かべ、言った。
    「次のレースで一位を獲ったら──そうだな、ここにキスくらいなら許してやる」
    手の甲をとんとんと指して言うと、レゾンとクラージュは色めきたち、それぞれに
    「敵チームのデータを…!」
    「次のコースで実践走行を、」
    とばたばたと駆け去って行った。
    「──単純。可愛い♡」
    ふふ、とシャリテが笑い、俺は笑い事ではないと溜息をつく。
    「士気が上がったな」
    ディアナは満足そうだ。
    「空回りしないといいがな」
    若干の不安要素がないではないが、とりあえず今日のところは助けられた形になり、俺はディアナに礼を言おうと向き合った。
    「恋の力は偉大なんだぞ?──ああ、ところで、」
    ディアナは、芝居がかった仕草で俺の手を取ると、そっと手に手を重ねて、
    「キスの権利は、勿論私にもあるんだろうな?」
    「はっ……?」
    「まぁっ………!」
    俺の間の抜けた声に、シャリテの不機嫌な声が重なった。
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