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    rai

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    獪善♀ 現パロ
    地上波に獪岳が再登場した記念

    #獪善♀

    🍑⚡️♀ 我妻善子と桑島獪岳は所謂セフレ、という奴だと思う。

     お互い孤児で施設にいたところを養父である桑島慈悟郎にひきとられ、兄妹として育った。しかし兄妹だと思っているのは自分だけで、獪岳は善子の事を疎ましく思っているようだった。
     善子より2歳年上の彼を「兄貴」と呼んでも「獪岳」と呼んでも苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。
    善子の事を「ブス」「カス」といって滅多に名前では呼ばないし、まともな会話も養父の前でしかできない。それすらも、「あぁ」とか「違う」とかそういうそっけない返事をかろうじてするくらいだ。

     何度冷たくあしらっても後ろを引っ付いて回る善子に獪岳はあからさまにため息をつくこともしばしばだった。

     善子が大学2年生にあがってしばらくして養父が他界した。あまりに突然の事で泣くことしかできない善子に何も言わずずっと獪岳が寄り添ってくれていたのは意外だった。
     これからどうなるんだろう。優しかった養父はいなくなって、きっと獪岳とも離れ離れになる。
    だって、もう獪岳が善子と一緒に居る理由はないのだ。獪岳は既に内定をもらっていて、一人で生きて行くこともできるだろう。でも善子はとても自身のバイト代だけであと二年学生を続けるのは無理だろう。

     あっというまに養父の四十九日が終わって納骨を済ませた。葬儀から何からその手配は全て獪岳が行ってくれて、善子はいまだに養父がいなくなった実感はわかない。でもあの日からずっと、心にぽっかり穴が空いたみたいで、なにも考えたくなくて、食事も喉を通らない。


    「ねぇ……獪岳。これからどうするの?」
    「……」
    「もう、ひとりはやだよぉ。ずっと一緒にいてよ」
    そう言って堰を切ったように泣き出す善子に獪岳は突然キスをした。
    「……なんで?」
    「うるせぇ」
     混乱してますます泣きじゃくる善子を獪岳は無理やり抱いた。

    ***

     それから、二人の関係は大きく変わった。獪岳の言葉数が少ないのは以前と変わらないが、セックスをする仲になった。
     恋人になったのかと言われたら答えはNOだし、好きなのかと問われればよくわからないと答えるしかない。好きだと言われたわけでもないし、獪岳の気持ちも全くわからない。たまたま手近にいた善子を性欲処理に都合よくつかっているのかも。

     ずっと、家族として好かれたいと思っていた。それなのに突然肉体関係が加わって混乱している。

     それでも獪岳は以前より不器用ながら優しさを見せてくれるようになったし、家事のほとんどを善子に丸投げしている代わりにお金の管理も任せてくるようになった。一流企業に就職した獪岳は給料のほとんどをそのまま善子に渡してくる。家事に関しては養父が生きている頃からその殆どを善子が買って出ていたし全く苦ではない。
     結局、養父の残してくれたこの家と、幾許かのお金、それから獪岳のおかげで善子は無事に卒業することができた。


     そして獪岳も変わらず同じ家で暮らしている。


     善子も就職してしばらくたった頃。なんだか体の異変を感じた。まさかと思って薬局で妊娠検査薬を買ってみたら結果は陽性だった。こういうのは正確ではないというしなにかの間違いかもしれない。しかし確かな結果を確認するのが怖くて、病院には行けないでいた。妊娠したと伝えたら捨てられるかも。だって、いままで絶対避妊はしてたし、セフレの子供とか獪岳だって困るよね?どんどん思考はネガティブになっていき暗く沈んだ顔をすることが増えた。

     どうしようと迷っているうちに、つわりが重くなって、耐えられなくなって産婦人科に行った。結果は案の定妊娠だった。
     自宅に帰って電気もつけないでぼーっとしていたらいつの間にか獪岳が帰ってきた。

    「あ……おかえりなさい。ごめん、まだごはんの準備できてないや」
    「別にいい。それより」おまえ、もしかして妊娠したのか?

     獪岳の口から告げられた言葉にびっくりする。まさか気づかれてるなんて……!
    「え……なんで?」
    「そりゃあ毎日あんだけ青い顔してたらいやでも気づく」
    「ごめん……でも堕したくない。迷惑かけない!一人で産むから……その、認知だけして欲しい」
    「はぁ?」
     ビクッ。声を荒げた獪岳に肩を震わせる。

    「なんで堕すんだよ。認知も必要ない。籍いれるぞ」
    「えっ……産んでいいの?」
     獪岳から放たれた言葉に呆気にとられる。

    「おまえ、家族が欲しかったんだろ」
    「そうだけど…でもだって、獪岳私のこと好きじゃないでしょ?」
    「……一度しか言わないからよく聞け」
    好きだ
     普段の獪岳からは想像もできないような小さい声で告げられた言葉に善子はぼろぼろと涙を溢れさせる。
    「嘘……」
    「嘘じゃない。俺が好きでもない女と何年も一緒に居ると思うか?」
    「家事もするし性欲処理にもなるし、都合がいいから私をそばに置いてたんじゃないの?それに、一回も好きだなんて言われたことない」
    「だから今言っただろ」
    「そうだけどぉ」
    「ふっ……不細工な泣き顔」
    「誰のせいだと思ってんのぉ」
     今まで見たことないくらい優しい顔で涙を拭われ、ますます涙が止まらなかった。
    結局その日は一晩泣きはらして、次の日は瞼がパンパンに腫れてた。


    ***


    「炭治郎!どう思う?!わたしこのまま獪岳と結婚していいのかな。なんだか全然実感がわかないや」
    「善子もお兄さんの事好きで、お兄さんも善子の事好きなんだろ?迷う必要ないじゃないか」
    「でもだって、いままで頑なに好きだって言われたことないんだよ?!都合がいいからそばに置いてるだけ、とかさ」
    「恥ずかしかったんじゃないか?」
    高校からの親友である炭治郎とお茶をした時に事の顛末を全て話した。妊娠した事に対しておめでとう、と和やかに笑い祝福してくれた炭治郎の笑顔は高校の時からちっとも変わってない。

    「きっと不安に思う事なんてないよ。お兄さんの事信じてみなよ」
    なにか困ったことがあったらまたすぐに連絡してくれ。そう言われて炭治郎と別れたその夜。

     先に自室で眠っていた善子のもとに獪岳が入ってきた。覚醒しない頭で気配だけ感じているとどうやら善子の指を触って何かをしている。そうしてすぐに出て行った獪岳だったが、善子はすっかり目が覚めてしまった
    「今のって……指輪のサイズ、だよね……?」
     今までの獪岳からは凡そ信じられないような行動に善子は嬉しくなった。信じてみてもいいのかもしれない。


    暫くたってから獪岳がジュエリーショップの紙袋をつっけんどんに渡してきた。
    中をみるとそこには予想通り、リングケースがある。

    それを善子は突き返した。

     まさか返されるとは思わず呆気にとられた獪岳に、善子はニマニマしながら左手を差し出した。
    「だめ!大事なものなんだから、獪岳が嵌めて!なにか言う事あるでしょう?」
    そう言えば、はぁーと大きなため息をついてから片膝をついた。
    獪岳がリングケースを開けてその中身を善子に見せる。
    「……俺と結婚してくれ」
    「はい!喜んで!」
     ダイヤのあしらわれた指輪が善子の左手薬指に嵌められる。それを眺めて善子はうひひっと幸せそうに笑った。





    かつて養父と3人で暮らした家に再び子供の元気な声が響き渡る。それに善子はどうしようもないくらい大きな幸せを感じた。
    仕事を終えて帰ってきた獪岳を出迎えた善子の腕には子供が抱かれ、幸せな家族、そのものだ。

    「獪岳、おかえりなさい!」
    「ただいま」
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