ある夏の日『帰りにソフトクリームを買ったんだ』
『ええやん、何味?』
『バニラと抹茶』
『ほーん』
『悪いがドアを開けてくれると助かる』
ホールハンズに届いたメッセージを見て顔を上げる。ベッドから降りて数歩、寮の自室で涼んでいたこはくは慌てて閉め切っていたドアへ駆け寄ると勢い良く開け放った。
鼻の頭にまで汗をかいて、向日葵の笑顔を浮かべた青年が両手にソフトクリームを持って立っている。すう、と彼が大きく息を吸ったので身構えた。
「た、ただいまあ」
「なんや、いつもみたくデカい声で来るかと思ったんに」
「さすがに、この暑さの中を全力疾走したらなあ、俺だって……あっ駄目だ溶ける。こっちこはくさんの」
「お、おん。おおきに」
ずいっと差し出されたバニラと抹茶のソフトクリームは、もう表面がとろりと溶け始めていた。急いでてっぺんにかぶりつくと、口の中をじゅわりと甘味が満たし、バニラの濃厚な香りと抹茶のこうばしさが混ざり合って鼻腔を抜けていく。
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