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    こは斑ワンドロワンライ、いつも開催ありがとうございます!
    お題「桜」お借りしました

    #こは斑
    yellowSpot
    #こは斑ワンドロワンライ

    かおる桜で、素敵なティータイムを らしくないなあ、と思った。
     とあるカフェの、春の新作発表のCMをたまたま寮の共有ルームで見たとき、斑はそう思った。桜をモチーフにした甘いドリンクは確かに彼によく似合ったけれども、当の本人が桜に対して良い思いを持っていないことを斑は知っている。だからそのCMを見たとき、持てる武器は何でも使って勝負をするのだなと感心した一方で、言いようのない胸のざわつきを覚えた。
     かおる桜で、素敵なティータイムを。君と一緒に。
     それを見てから数日後、今度は街の中でこれまた偶然こはくを見つけた。
     声をかけようとして、慌てて口を閉じた。こはくの隣には藍良がいた。別に遠慮なく絡みに行ってもいいのだけれど、他の人間がいるのならあまり締まりのない顔をするわけにはいかない。
     気配を殺して、少し離れた場所から後を追った。漏れ聞こえた会話から、藍良とはESビルまで同行するらしい。ではそのあとで声をかけようと決めて、数メートル後ろをついて歩いた。
    「本当にすっごくラブかった! やっぱり分かってるなァ、コズプロは! こはくっちの魅力ってのをさァ」
    「大袈裟やなぁ……けど、気に入ってくれたんなら嬉しいわ。慣れんことした甲斐があるっちゅうもんや」
     どうやら先日斑も視聴したCMについて話しているらしかった。藍良は興奮した様子で、あの角度から見た後ろ髪がどうの、光に当たって見えた瞳の色がどうのと本人に嬉しそうに感想を述べている。
     生温い、色づいた春の風が頬を撫でる。道端に植えられたパンジーが色鮮やかに目に映った。
     なんとなく、本当になんとなくであるが、面白くない。
     こはくの魅力を一生懸命に語る素直な姿を見ていると、どうひっくり返ってもそんなふうにはなれない自分が子供っぽく思えて厭になる。
     こはくさんの頭の形が可愛いのは知っているし、彼の瞳がどの角度で一番きれいにきらめくかも知っている。知っていて言わないだけだ。……たぶん。などと心の中でごにょごにょつぶやいていると、目的地にはあっという間に到着してしまった。
     ビルの入り口で手を振りあいながら、金髪が軽やかに振り向いた。
    「でもこはくっち、途中までオファー受けるか悩んでたよねェ?」
     はたと気がついた。少し近づき過ぎたかもしれない。随分鮮明にその声は耳に届いた。
    「うーん……わしなぁ、あんま桜に良い思い出、ないねん。せやから確かに最初はちょっこし乗り気やなかったけど……思い出したんよ。すぐそばに」
     風が強く吹いた。顔を上げる。ほんのりと甘く香る、春の風だ。
    「ずいぶん桜の好きな男がおるっちゅうことをなぁ」
     薄闇の中でもぼんやりと輝くような桃色の髪は、今は陽の光を存分に浴びてうららかに咲き誇っている。穏やかな風が彼の髪をからかって、そのたびに艶やかな桜がはらはらと舞った。
     CMの最後を締めくくる、こはくの言葉を思い出す。かおる桜で、素敵なティータイムを──君と一緒に。
    「そっかァ。ふふ、誰かに見てもらいたいって気持ちはすごく力になるよねェ。……それじゃ、俺はここで。こはくっち、ふふ、お迎えがきてるよ!」
     その言葉にこはくが首を傾げ、振り向く前に。斑は大きな声で彼の名前を呼びながら、満面の笑みを浮かべて駆け出していたのだった。
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