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    yirugf

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    乙女椿の続きになります。以前スレで流した読切世界に行った反ドの加筆修正。

    反転おじょるた 13狭間の空色13狭間の空色 反転おじょるた
    移りゆく答え響いたゆっくりとはじまり

    「そんな酷いロナルド君がいるの?」
    アイロンがけにもってこいの夜だった。シャツから客室のシーツまで片っ端からアイロンをかけて満足していたところ、がこっと音を立てて私の棺桶が内側から開いた。びっくり死するところだ。アイロンを持ったまま固まり、親族の気配に振り返る。血族独特の気配というのがあるのだ。親戚の誰とも違うけれどお父様くらい強くてジョンより近しく感じる。
    「どこの派生?私は読切のドラルクだけど」
    そんなの当てはまるのは反転の私しかいない。私以上に引きこもりの彼は傷だらけのネグリジェ姿でぼうっと座っていた。
    痣と噛み跡がえげつない。顔色も悪いし目の焦点が合っていない。
    「ちょっとどうしたの!」
    慌てて話を聞き出し冒頭の台詞に至る。
    そりゃあからさまに過激な事後だけど毎晩血を啜られてるなんて思わない。反転世界のロナルド君って吸血鬼だっけ?と思わず聞いたくらいだ。
    反転の私にチェリーボーイを飲ませるとうつらうつらしだした。今はとにかく休んでとアイロンがぱりっとかかった客間のベッドに寝かせた。彼と私のジョンが添い寝している。彼はこれでいいとして、問題は彼のロナルド君だ。
    ここに来て休めると思ってる彼の考えは甘い。絶対追ってくる。相手は畏怖い私の血を日常的に摂取する退治人だ。御真祖さまを呼ぼうかと思ったけど逃げてきた私も彼のロナルド君に消えてほしいわけではないだろう。今にもくるぞと恐れながら自分の棺桶を見る日が来るなんて。棺桶にそんな機能があるなんて、というか。
    「他の私にも繋がってるのかな?」
    怪獣映画に巻き込んでも無事そうなただ一人の私があの状態だから戦力に加えるなら規格外のロナルド君がいい。思い切って棺桶に腕を突っ込むとヒラヒラしたものに触れた。断じて棺桶の中じゃない。耳先を砂にしながらえいやっと布を掴む。
    「ぐえ!」
    引っ張ると頭が出た。私がクラバットを引っ張るから首が締まって苦しんでいる。
    「逆ロくんだ!」
    これは当たりだぞ。力一杯棺桶から引っ張り出す。どんどん吸血鬼らしい顔色になる彼はすっかりこっちに出てくると「俺が何したっていうんだよ!」としくしく泣いてしまった。
    逆転世界のロナルド君にホットミルクを飲ませて事情を説明する。相手が人間のロナルド君と聞いて余裕ブームを出したからそっと反転の私を覗かせた。布団の分だけ透視するよう言えば真っ赤と真っ青で顔色が忙しくなった。彼の前でそっとドアを閉める。棺桶の前に戻ると逆ロくんは頭を抱えた。
    「あんなんやばいじゃん!あんなやばい俺がいんの?!」
    何を言ってるかわからないけど何が言いたいかはわかる。
    「君も大概だって聞いてるけど。今は棺桶の蓋を閉めて、万一出てきちゃったら撃退してくれたらいいよ」
    「見た目全然違うのに押しの強さはドラ公だな」
    逆ロくんが大人しく出てきた棺桶に蓋をしようと持ち上げる。棺桶からにょきっと足が突き出た。滑らかに手入れされたブーツの足をフライパンでぶっ叩く。
    「閉めて!」
    もう一回打とうとして蹴り飛ばされた。白手袋が縁を掴む。逆ロくんが手を引っぺがして内側に押し込み、腕を掴まれて引き摺り込まれようとしている。彼の足が浮くと私は逆ロくんの背中を押して棺桶に突っ込んだ。意表をつけたのかあっさり何処かに落ちていく。私は素早く蓋をすると私のロナルド君に電話をかけた。力の逆ロ君でだめなら知恵とテクニックで対抗するしかない。逆ロくんありがとう!また会えたらケーキを焼くよ。


    空をどこまでも落ちて行く。確かにおじさまのいる世界に繋がったのに、手をかけた棺桶の底を抜けて夕から朝へ変わっていく空に真っ逆さま。一緒に落ちていた吸血鬼のロナルドは捨て台詞を残して消えてしまった。
    『ロナルドがドラルク傷つけてんじゃねえ』
    「できるものですか」
    少し寒くなってきた。おじさまと過ごしたシーツはどこへ消えたのだろう。夜の残滓が色濃く付着したアレはおじさまに赦された証だ。おじさまの体に昨夜の跡が残っているなら愛されている証。
    あの吸血鬼はわたくしがおじさまを傷つけたというけれど、どんな鋭利な刃も銀弾も負傷箇所を塵にして瞬時に再生する吸血鬼に生身の人間がどうやって傷を残せると言うのだ。無数の蝙蝠になり夜を覆い、霧となり街を流れ、狼になって千里万里を超えて行く。いずれも能力の一片を見ただけだが御伽噺の領域。不可能なのだ。退治人として彼の吸血鬼に退治方法はないと判断している。
    彼が、おじさまが、吸血鬼ドラルクがしどけなく乱れ鳴き腹を犯され全身を噛まれ血を啜られて遂情するのは全てわたくしを愛しているから。吸血鬼の魂ともいえる血がわたくしを望んでいるから肌に鬱血痕が残り歯で肉が抉れ血を啜るまで再生能力は傷を許し跡を消さない。
    性交中のどんな蛮行も彼が受け入れ身に刻むことが嬉しくて少し過激なこともした自覚はある。
    いくら傷は癒えても体力は有限だ。次に会えたら今までを詫びてセックスは一日三回までで自重すると許しを乞おう。きっとおじさまは三日に一度と仰るから間をとって二日に一度回数制限なしに持ち込む狙いだ。おじさまを抱きしめて眠れるならそれだけでいい。多分。我慢できるはず。
    「おじさまのお顔の傷はどなたがつけたのでしょうね」
    落ち続ける体よりもずっと早く深く心が落ちる。あの傷と眼球ひとつ奪った誰かを覚えていないと愛しいひとは言うけれど、こんな風に時空を越えれば突き止めることもできるかもしれない。

    「馬に蹴られるのがオチだろ」
    呼び出しに駆けつけてくれた読切のロナルド君は、反転の私を見ることもなく言い切った。お茶とクッキーを催促されて用意すると膝に座れと促される。
    「どういうこと?」
    「手間賃。いやか?」
    「そっちじゃなくて」
    膝に座りクッキーをロナルド君の口に押し込む。
    「勿体ねえ!ゆっくり味わって食わせろ!」
    「後でまた焼いてあげるよ」
    「そういうことじゃねぇんだよ。俺はお前の手作りのクッキー一枚一枚が大事なんだ。あいつも恋人がつけた後がいちいち大事で再生せずにとってんだろ」
    大事だと言う割に結構なスピードでクッキーを平らげて行く。
    「死んでないから治らないんじゃなくて?」
    「強い吸血鬼は死ななくても再生する。お前だって手や耳だけ砂になることあるだろ」
    あるけど私は怪我をする前に死ぬからよくわからない。ロナルド君は私を膝に乗せたまま頭を撫で始めた。
    「まぁ毎晩啜られてんなら疲れはするだろう。適当に寝たら帰るだろ。後でのぞいたらいなくなってるに夕飯の片付けを賭けてやる」
    「賭けなくていいよ。一緒にやろ」
    私のジョンが客室から引き上げてきた。手に棒付きの眼球を持っていて驚いたけど「お礼のキャンディ」と教えてくれる。
    ジョンを抱き上げてロナルドくんの膝に戻る。ロナルド君は壁に立てかけたフライパンをおもしろそうに眺めていた。

    汚れたシーツが被さって起きた。異臭と言っていい色濃い情事の香りに頭がくらくらする。
    「お嬢様か」
    彼に抱かれることが嫌なのではないのだ。ただただ本当に疲れて、離れて休みたかった。性の匂いのしない睡眠が欲しいのにこんなものに追ってこられたら情け無くも体が求めてしまう。シーツを丸めて抱えると私のジョンが頬を撫でてくれる。彼のジョンは水差しを示してくれた。
    「ありがとう。世話をかけたね」
    小さな影収納からジョンたちに義眼キャンディを渡した。驚く姿が愛らしい。読切の私には今度お高いボトルを贈ろう。
    「さようなら」
    客室のドアを開けるとどこかの空で、横をお嬢様が落下していた。落ちているのは彼女なのにさっと腰を引かれ横抱きにされてしまう。
    「いい空ですわね」
    「そうだね。今から帰るわけだが、一つお願いがあってね」
    ジョンが頑張ってと言ってくれる。だが違うのだ。愛しいジョンが予想している話ではなく、私は帰ったら気絶するまで抱いて欲しいと汚れたシーツに当てられて恥ずかしくもお嬢様にお願いした。
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