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    ムーンストーン

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    ムーンストーン

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    ダイがデルムリン島に辿りついた日と、まだハドラー魔王軍で幹部だった頃を回想するブラスじいちゃんです。捏造マシマシというか捏造しかありません。
    クリスマスには間に合わなかった(痛恨の一撃)

    #ダイの大冒険
    daiNoDaiboken
    #ダイ
    die
    #ハドラー
    haddler
    #ブラス
    brass
    #バルトス
    bartos

    救い主きませり〜ブラスオノレヨリ ツヨキモノニ シタガエ
    己より強き者に隸え
    モンスターの本能に刻まれた縛めだ。

    縄張り争いで少々怪我をした幼いキメラの手当てをしながらブラスは久々に嘗ての主、魔王ハドラーを思い出した。

    決して悪い主ではなかった……ブラスが仕えてきた主の中では。

    モンスターが己より強い者に隸うのはそれのみが生きる術だからだ。
    弱肉強食が唯一の法である魔界でも地上でも、弱者は強者の庇護が無ければ明日を迎えられる保証はない。
    そして往々にして強者は邪悪さ故にさらに強くなるものだ。

    魔族より弱者であるモンスターは主次第で邪悪にも善良にも、より強い方向へ矯められる生き物に過ぎない。

    ハドラーは自ら魔王を名乗るだけあって魔力も覇気も、己の野心を充たす為に手下を操る術も桁違いだった。

    憂さ晴らしに殴られ、目障りだ消えろとただ小突き回すだけの魔族の元からハドラーの傘下に入ったときの安堵の深さをブラスは忘れる事ができない。
     
    そしてモンスターの自意識は主の強さによって支えられさらに強固になる。
    ブラスと名を与えられ種族名でなく一疋として個性を持てば、本能からの反射でなく思考を巡らす余裕が生まれた。 

    鬼面道士という種族が持つ魔法という「鳴き声」が「呪文の行使」となり、主命を受諾しその成果を認められた時、喜びがブラスの身のうちから湧き上がるのを感じた。

    ハドラーの命で敵対する魔族や弱者であるニンゲンを襲い破壊するのは楽しい。
    ハドラーに隷うモンスターを其々の能力で揃え束ね磨くと、更に破壊できる範囲や効率があがる手応えを感じて誇らしかった。

    魔の森から次々に生み出されるモンスターをデルムリン島に集め魔王軍兵士として訓練せよとの下知を受けて旅立つブラスに、ガンガディアが貴様は嬉しそうだなと嘲笑しながら言った。

    「それを承認欲求というのだ」

    ショウニン欲求。聞き慣れぬ言葉だ。
    キギロではあるまいし嫉妬ゆえの物言いとは思えぬが、ブラスは曖昧な会釈で参謀役のデストロールをやり過ごした。

    欲求と言うからにはそれが満たされるのは結構なことではないか。
    島に駐在して訓練を施した己の手下が一糸乱れぬ行進をするのをブラスは満足げに眺め一人笑った。

    そして今から3年前魔王の邪悪なる意思からブラス達は突然解放された。
    常に血走り敵を見出さんとする目から険が消え鉤爪が体内にしまわれる。

    支配される事に慣れたモンスターらの動揺をなんとか収めたブラスは斥候を地底魔城へ飛ばし、ハドラーが勇者に討ち果たされ魔王軍の兵士もその勇者パーティーと後から乗り込んできた人間の軍隊に滅ぼされたと聞かされ呆然とした。

    魔王が殺されたのであらば勇者が新しい支配者になるはずだが、一向に新たな命が下らないのはなぜだろう。

    ブラスにはハドラーを倒した勇者はその直後にモンスターへの支配権を放棄した様に感じられた。

    ならば勇者に感謝を捧げ、他者を虐げるのを止めて生きても良いのだ。
    ブラスがデルムリン島に取り残されたモンスターらにそう伝えると皆は歓びの鳴き声をあげ三々五々散っていった。

    キメラの手当てを終え、さて日課の島の巡回をするかと腰を上げたブラスはその瞬間地面に這いつくばった。
    人の目には光としか感じられないエネルギーが北東から肌を焼き切らんばかりに照りつける。
    次いで不気味に揺らぐ大地の異常さに島に住まうモンスターも獣も鳴き声一つあげられなかった。
       
    しばらく呆然とした後ようやく四肢に力が戻ったブラスはエネルギーを感じた方角を見上げると木々の隙間から白い雲が天に突き刺さっていた。
    純粋な怒りが結晶したような雲は夕暮れまで消えずモンスターらを脅かした。

    巣穴に籠もり皆が息を潜めてむかえた夜デルムリン島を嵐が襲った。

    あの強大な怒りが呼び寄せたように荒れ狂う雷雨が島をなめ尽くした翌朝、からりと晴れ渡った浜辺に小舟が打ち寄せられているのをブラスは見つけた。

    昨日の嵐で難破したのかと覗いて見れば揺り籠の中に人間の赤子が眠っている。

    「可哀想に」 

    己より小さくか弱い存在はエサか無視する対象だったはずが同情するなど……死霊騎士の心持ちが分かる日がこようとは思っても見なかった。

    抱き上げると小さい割に重みを感じた。生命の重みだ。

    死霊騎士がその養い子にしていたようにブラスがそっと肩より上に差し上げると赤子がパチリと目を開いた。

    オノレヨリ ツヨキモノニ シタガエ

    総毛立つより先に身の内に染み込む声が聞こえて消えた。
     
    「おや なんじゃお前たち」

    いつの間にかブラスと赤子を島のモンスターが取り囲んでいた。 
    まさかエサと思っておるまいなと赤子を胸に抱き寄せると銘々が咥えてきた何かをブラスの、赤子の足元にそっと降ろす。
    それぞれが深々と頭を垂れて最も美しいと、大切だと、美味しいと思う物を捧げていく。
    まるで新しい主に恭順を表すように。

    モンスターは邪悪でも善良でもなく主の心を映す鏡なのだ。

    11年後地上を、地上に生きとし生けるもの全てを救う救世主がデルムリン島に辿り着いた瞬間だった。







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    Replies from the creator

    ムーンストーン

    DONEダイの大冒険 リア連載時から疑問だったバルトスの敵討ちについて書き連ねました。
    以下バルトスファンとヒュンケルファンには申し訳ない話しが続きますが個人の感想なのでお許し下さい。

    ハドラー(造物主)のから信頼より子への愛情を取って責任追及された事をメッセージに残す=ハドラーへ遺恨を残すことになりませんかとか魔物と人間とは騎士道精神は共通なのねとか。
    ダイ大世界は生みの親〈〈〈育ての親なのかも。
    20.審判(ヒュンケル/ランカークス村)〜勇者来来「勇者が来るぞ」
    「勇者に拐われるから魔城の外に出てはならんぞ」
    懐かしい仲間たちと父の声が地底魔城の地下深く、より安全な階層に設えられた子ども部屋に木霊する。
    この世に生をうけ二十年余りの人生で最も満ち足りていた日々。
    ヒュンケルがまだ子どもでいられた時代の思い出だ。


    「暗くなる前に帰んなさい!夜になると魔物がくるよ!」
    黄昏に急かされるようにランカークス村のポップの家へ急いでいた時、ふいに聞こえてきた母親らしい女の声と子供の甘え混じりの悲鳴を聞いてヒュンケルとダイは足を止めた。

    ヒュンケルが声の主はと先を覗うと見当に違わず若い母親と4〜5才の男の子が寄り添っていた。
    半ば開いた扉から暖かな光が漏れ夕食ができているのだろうシチューの旨そうな匂いが漂う。
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    ムーンストーン

    DONEダイの大冒険 ナバラによるアルキード滅亡の日の回想です。
    テランの人口が急減した理由の一つに理不尽すぎる神罰があったのではないかと思います。
    あの世界の殆どの人は結局アルキードが何故滅びなければならなかったのか知らないままだから神の力の理不尽さに信仰が揺らいだ人も多いと思います。
    夢から覚めた日〜ナバラ「あの日」のテランは雲一つない穏やかな陽気だった。

    暑くもなく寒くもなく、洗濯日和と言わんばかりの優しい風が吹きすぎる。
    そんなうららかな日だというのに何時にないむずがりかたをするメルルにナバラは朝から手を焼いていた。

    「いつもお利口さんなのに今日はご機嫌ななめだねぇ」
    女所帯のナバラ達を気にかけて何かと助けてくれる近所の若者、ドノバンがあやしてくれたが更に大声で泣いてメルルは家の中に駆け込んでしまった。 
    「全くだよ。せっかく忙しいお兄さんが遊んでくれたのに」
    悪いねぇと詫びるナバラに、たまにはそんなこともありますよと気の良い笑顔を向け、若者は花と香炉の入った籠を取り上げ竜の礼拝所へ朝の礼拝に向かった。

    「全く信心深い子だよ。テラン人の中でも朝晩欠かさず竜の神殿に詣でるなんてあの子位だ」
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