空閑汐♂デイリー【Memories】16 手を伸ばせば後少しで届きそうだった夢が、指先から零れていったあの日から一年が経った。傷跡こそ残ったが、後遺症と言えるような不具合もなく――医者からもう大丈夫だと言われた日に「鉄棒で大回転も出来ますか?」と訊いてみた空閑へ、医者は笑って頷くという太鼓判でもって放免されていた。
「空閑、明日の授業俺の代わりにやってもらって良いか?」
「一年の航空機概論でしたっけ? 良いですよ」
そうして空閑は、古巣でもある国際航空宇宙学院日本校の高等部へと戻り吉嗣のアシスタントとして日銭を得ているのだ。
空閑が軌道ステーションの医療センターから地球へと移る入院先に決めたのは、日本校に併設された医学部附属病院で。そこで空閑を迎えてくれたのが、吉嗣だった。
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