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    karehari

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    karehari

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    前作キスディノ(一問一答~)のすき間のフェイスとジュニアの話です
    ※前作中盤の「キースの算段」の話
    ※変なことは書いてないつもりですが、人によっては蛇足かも
    ※CPはキスディノのみ
    ※フェイス19歳

    夜の守り人九つ歳上のメンターが慌ただしく駆けていくのを、リビングでまったりと過ごしていたフェイスはちょっと驚いた様子で見送った。行き先はどうやらバスルームで、顔色は妙に赤い。いつもは持って入らないスマートフォンが防水バッグに詰められ連れていかれているのがフェイスのマゼンタの目に映る。
    推測出来る理由はいくつかある。うち、この場合は急ぐ必要はないだろう、あれならフェイスを見つけて声を掛ける余裕はあるだろう、と頭の中で考えて省いていくと一つが残る。

    「やっとかぁ」

    間延びした声で、隅に箔柄の入った黒い小箱から気に入りのショコラをつまんだ名探偵フェイスがもごもごと呟いた。
    俗な言葉で言ってしまえば、同室に住まうメンター二人、キースとディノはデキている。公言はされていないものの、最近の空気感が明らかにこれまでと違うのだ。距離感はもともと狂っているのであれだが、どうにもこう、ふんわりとした幸せそうな雰囲気が二人を包んでいるようにフェイスには見えていた。分別のある彼らは業務に支障をきたさず、自分やジュニアの前で恋人の振る舞いをすることもない。大人なのだな、と感心するほど。
    フェイスは基本的には人の恋路に首を突っ込まない。自分がされると何様だと嫌な気分になるので、よほど相談されるだとか助言を求められないかぎり能動的には動かないようにしている。けれどもこのたびのメンター二人に対しては、些か心配する面もあった。フェイスとジュニア。年少のルームメイトがいることで、先の触れあいに進めないのではないかと。

    「……お節介だとは思うんだけどね。こういうの」

    もし。もしも今夜そういうことになるのなら、察してしまったお利口でかつて経験豊富だった自分は、世話になっている二人のためにいろいろとお膳立てをしてやろう。フェイスはそう決意した。
    そこで、小さな物音。もう一つショコラをつまもうとした美しい指が宙で止まる。

    「キース」
    「……おう」

    メンター部屋から出てきたキースの部屋着がいつもよりなんとなくぐしゃぐしゃで、既に前哨戦が始まっていたかとぴんと来たフェイスであった。短い返事のなかにもどこか焦りだとか気まずさだとか、そういったものが滲んでいる。なんともまあ不器用な人だ。

    「……フェイス。あのな」
    「キース。ディノのおやつセット勝手にもらっていってもいい?」
    「は?おや……あ、ああ多分みんなで食べる用だからいいんじゃねえか」

    通販の送料無料システムを利用するために、ディノはよく菓子類で合計金額を調整している。はじめは一つ二つ足す程度で済んでいたからディノが自分で食べていたが、たまたま帳尻合わせの菓子が多くなった際にジュニアとフェイスにも振る舞った。それが二人に喜ばれ、とくにジュニアがとても嬉しそうだったため、いつしかディノは金額云々抜きに注文して戸棚にストックすることを習慣にしたのだ。なんだかありふれた一般家庭みたいでいいな、とフェイスは密かに思っていた。

    「あと冷蔵庫からコーラ持っていくから。まあ二人はこの時間お酒だよね。ウォーターサーバーもあるし」
    「あ、あのなフェイス……実は」
    「大丈夫だよ」

    みなまで言わずとも、と手のひらで言葉の先を遮る。

    「おチビちゃん誘ってゲームしようかなって。音質いいヘッドフォンあるよって言ったら付けてくれそうだし。要りそうなものは全部部屋にもらっていくから、歯磨きしにリビングに出てくる時間までには……ね?」

    含みのあるウィンクに、女の子なら黄色い声を上げたあと倒れ伏しているかもしれない。しかしこのたびの相手はキースで、フェイスに今から借りを作る男だった。大きな手で顔を覆い深く長い溜め息を吐いてから、九つも年下のルーキーに謝る、それはそれは真面目な男。

    「…………わりぃ」
    「アハ。悪くはないよ。負い目感じないで?嫌々協力するんじゃないんだからさ」
    「未成年で、ダチの弟だぞ……お前追い出して、やった~おかげで部屋で出来るぜありがとな、って手離しに大喜びできねえだろ……」
    「それはそれで奔放すぎて面白いね」

    キースの目に映るフェイスは本当に嫌そうでも面倒そうでもなく、だからこそ聞き分けのいい年少者に頼る年長者の構図に自省してしまうのだろう。しかしそうして恥じ入ったとてもう戻れぬ盤面なのが今宵である。
    早くいろいろと準備して戻らないとディノがお風呂出ちゃうよ、と背をぐいぐいと押して急かすフェイスにキースは首だけ向き直った。

    「……今度なんか奢る」

    大人の用いがちな台詞なのに表情はちょっと情けなくて、フェイスは小さく笑ってしまう。本当に自発的にやっていることなので、別に気を遣わなくていいのにと返そうとするも、せっかくなので貰えるものは貰っておくのも有りかと考え直した。今でこそ円滑な関係ではないとはいえ、長年末の子として生きてきたフェイスは甘えるのが得意だ。

    「高くつくよ?なぁんて」
    「メジャーヒーローの給料なめんなよ~使わなきゃ貯まる一方だ。好きなもん頼め」
    「いいねぇ、言ってみたい台詞。まあでも今度ね。ほんとにディノ戻ってきちゃうよ」
    「おう……恩に着る」

    今度こそ部屋へ帰っていくキースの背中に心の中で小さく、上手くいきますようにと願いの矢を放つ。失敗したって二人の仲はこれっぽっちだって変わりやしないだろう。悪化なんてもっとあり得ない。けれども、だって、成功を収めた方が格好いいに決まっている。
    祈り終えたフェイスが自身もリビングから退散しようと菓子のしまわれた戸棚を開こうとして、大切な伝え忘れに気づいてキースを呼んだ。ちょうどドアが閉まりきる前の細い隙間から深緑の両目が何事かと覗く。

    「声、あんまりおっきく出さないように。ね」

    もう一度のウィンク。伏した片目を縁取る長い睫毛。しぃ、と立てたしなやかな人差し指。おそろしく甘く整ったかんばせ。その口から放たれる経験者の助言。天から与えられ、フェイスにしか持つことを許されないような魅力をこんな場で、ふんだんに、彼は無駄遣いした。
    キースの反応を最後までは見ずに、開けた戸棚からスナック菓子や焼菓子を取り出したフェイスは、ただただ面白がって、むずむずとして口角を上げている。扉の閉まる音がどことなく小さかったのもまた。



    「おチビちゃんゲームしよ~」

    戻って最初の一言がこれであるから、ベッドに腰かけ相棒のメンテナンスに耽っていたジュニアがおわっととんちきな声を上げる。

    「な、なんだよ急に……」
    「無性にやりたくなったんだけど、一人じゃクリア出来ないとこで止まってるんだよね。おチビちゃん手伝ってくんないかな~って」
    「ああ今やってるイベントのやつか。おれも出来てねえけど、もう寝ようと」
    「そっか。おチビちゃんが頼りだったのに」

    頼り。そう言われてジュニアが反応する。フェイスは内心にやりと笑っていた。計算通りである。口に出せばスラング混じりの怒声が飛んできそうではあるのだが、頼られると期待に応えるタイプのジュニアはフェイスにとって非常に扱いやすかった。もう一声、もしくは二声できっと流れは決まる。

    「イベント、明日の夜までだから……どうしよっかな……」
    「う」
    「報酬のなんとかソード、スキル強いみたいだから欲しかったんだけどな」
    「……ブレイブソード」
    「そうそう」
    「…………」

    腕を組んでんぎぎ、と喉奥から汚い声で唸るジュニアは相当葛藤しているようだった。あまり押しすぎると疑念を持たれ、気が変わられても厄介なので、あとは待つだけだ。フェイスがゆっくりとしたまばたきを繰り返す。それが十に届く手前で、ジュニアが仕方ねえなと折れた。勝利を収めたフェイスは素直に喜び微笑む。一時間だけだと念を押され了解と頷く裏側で、さてこれを二時間程度には引き伸ばさねばと悪知恵を巡らせている同期の心中を、ジュニアは知るよしもなかった。



    「アァ~~!やっと倒せた!EXボスきつすぎ!報酬よこす気ねえだろクソ!」
    「すっごいギリギリだったね……あと一撃食らってたらダメだったかも……」

    フェイスの部屋で行われていたクエストがようやく終わりを迎えた。部屋の境から持ってきた黄色の椅子に座るジュニアは、両手足を投げ出して解放感を味わっている。ローテーブルに広げた安価なアソートチョコレートをつまむフェイスの表情にも、疲労が滲んでいた。
    はじめはいろいろと算段しながらプレイしていたフェイスであったが、手を抜くだのわざと失敗するだので時間をかけるなどといった小細工をせずとも、異常な難易度で迎え撃たれてかなりの悪戦苦闘を強いられた。熱中しやすいジュニアと、実は負けず嫌いのフェイスは幾度となく敗北を喫し、その都度絶えぬ闘志を燃やして挑み、ついに強敵に打ち勝ったのだ。なんという感動スペクタクル。オフタイムまでバーチャルヒーロー活動とは志が高い。

    「はぁ……なんか疲れちゃったね」
    「ふぁ……おれも。もう寝ようぜ」

    菓子の残りを纏め、空の袋はゴミ箱へ。マグカップ二つを器用に片手で持ち、もう片方の腕でコーラのボトルを抱えて、ジュニアが就寝の準備を始めた。なんとはなしにぼうっとその一連を眺めていたフェイスだったが、今夜の自分の任務が何であるかを思い出して一気に血の気が引いた。

    「っ、おチビちゃんちょっと!」
    「どわっ!?」

    ドアへ向かうジュニアの肩をぐっと引いて歩みを阻むと、心底びっくりしたと言わんばかりの短い叫びが飛び出てくる。

    「あっあ、あぶ、危ねえだろ!コップ落としたらどうすんだ!」
    「それはごめん、ごめんなんだけど……」
    「ん?なんだよ……とっとと片付けて歯磨いて寝るぞ?」
    「あ~……ちょっとだけ、待ってほしいかも……」

    ジュニアをリビングから遠ざけるための手段に過ぎなかったゲームに思いの外体力を使ってしまい、フェイスにしては珍しく、上手い切り返しを考える頭の余裕が残っていない。本来であればジュニアより先に自分が部屋を出て、環境の確認をするつもりだった。用を足しにいく。コップを先に片付けにいく。いくらでも手段は用意していたはずなのに、このままではジュニアが先に出ていってしまう。どうしたものかと焦る頭で組み立て直すうちに、ジュニアが何かに気づいたような表情で、フェイスの悩みを絶った。

    「あぁ……もしかして空気読めってことか」
    「…………えっ」
    「……二人の」

    驚いた。そのあとやってくる妙な寂しさ。

    「……おチビちゃん、大人になったんだね……」

    小さい子供のような扱いをしたとて、自分がジュニアくらいの歳の頃、フェイスは既にそのあたりの知識を持っていた。だからジュニアが何かを察するのもおかしくはないのだ。ないのだが、多少、いやかなり意外で、動揺を隠せないフェイスであったが、それならば話は早かった。彼がなんにも知らない子供でないのなら、ようはリビングで自分たちが物音を立てることだけを避ければいい。きっとそれなりに佳境であろうメンターの睦事の邪魔さえしなければそれで。

    「そうなんだよね。二人、今ちょっとね」
    「いちゃついてるってことだろ」
    「うん。きっと今いいとこだから……」
    「どうせ、甘~い言葉とか伝えあってんだろうな」
    「ああ、まあねぇ」
    「あとはその……は、ハグしたりとか、さ」
    「……ん?」

    ジュニアの顔がどんどん赤くなっていくのをフェイスは見届けている。おかしなことは言っていない。きっと愛し合う二人は好きだと、愛してると告げあって、抱擁だってたくさんしただろう。ただなんとなくフェイスには、ジュニアと自分の認識に差があるような感覚を持った。

    「……あとは何してるんだと思う?」
    「ハッ!?あと!?あとはお前、そんなの決まってんだろ……!」
    「だよねぇ」
    「きっ、キキッキ、キスとか、するだろ……!」
    「だよねぇ」
    「そ、そんで一緒に寝るだろ!……おいなんだその顔!」
    「おチビちゃんには俺、そのままでいてほしいな」
    「ハァ!?」

    真っ赤な顔のまま食ってかかろうとするジュニアの横をするりと通り抜けて、フェイスが先に部屋を出る。まるで流れるような動きでジュニアの手から荷物をすべて奪い、しぃ、と先ほどキースに向けたみたいに指を一つ立てて。
    無人のリビングに音はない。終わったのか最中なのか知る術を持たぬフェイスは手早くシンクと冷蔵庫を行き来して、それでも無音であることを確認してから一度部屋へ戻る。真面目に沈黙を守り、変わらぬ体勢のまま待っていたジュニアが面白かった。フェイスのサムズアップのように一本立てられた親指がドアをくいと指す。

    「お待たせ。手早く行こう」



    そそくさいそいそと出て戻ってその間二分ほど。歯磨きなんか歯茎を削る勢いで高速だったし、雑にゆすいだ口内はいつもよりミントの香りが強く残っている。ドアの閉まる音にフェイスはほっと息を吐いた。隣のジュニアなんか呼吸まで止めていたようで、タワーの外周を走ったときみたいにぜえはあと荒々しくて笑ってしまう。

    「苦労するねぇ、俺たち」
    「ほんとにな!」

    これまで周囲を乱さない節度ある付き合いをしていたように見えるメンター二人が、意気揚々と部屋での行為に及んだとは考えづらい。自分に頼みにきたキースの様子を思い返してもきっとそうだ。この夜、そういう流れになってしまったのだろう。
    フェイスはある頃を境にして、以降人間関係に本気になったことがなかった。付かず離れず、来る者拒まず去る者追わず。けれど今はもう分かってしまう。日頃どれほど秩序を優先し、人を巻き込まぬよう心がけていたって、ほんの少しの挙動言動でそれが崩れるくらいの波に飲まれる。視線を交えたがる瞳が、触れたがる手が、重なりたがる唇が、脳のコントロール下から解き放たれる。そういうものなのだ。愛ってやつは。
    でもこちらがあたふたするのも事実なので、とりあえずキースにくらいは本日のルーキー二人の苦労を後日伝えておこうとフェイスは思った。もちろん、重くしないようさくっと。

    「でもまあ……いちゃつくな、とか言えねえよな」
    「うん」
    「二人が……なんつうか、幸せそうにしてんのはさ、悪い気しねえし」
    「……うん。俺もそう思うよ」

    フェイスもジュニアも、ディノが殉職扱いだった時分の荒れたキースを、少しだけ知っている。ルーキーの晴れ舞台をそっちのけで蹴り、一人で勝手な行動をして長く不在だったこともあった。自室も自宅も酒瓶まみれで人間が日々を営む空間とは到底思えない有り様であったし、後者に至っては敵の下っ端を捕らえて──口に出すのは憚られるような手法の数々で問い詰めた形跡が残っていたらしい。
    酒で辛い現実から逃げ、煙草で肺と脳、視界を苦く曇らせる。それでも苦悩し涙する姿も、金で掴んだ蜘蛛糸より細い情報にすがり水面下で独り動く暗い眼光もルーキーには見せず、ただ堕落しきって頼りない駄目なヒーローを装っていた。そんなキースが、今は笑うのだ。目を細めて、戻ってきた、奪い返した大切な人を見て幸せそうに。

    ディノは明るい人だ。光の方へ、誰かの手を引いて歩ける人。フェイスは最初、それを押し付けがましく感じて反発したものだ。けれどディノはまっすぐに自分を見てくれた。もらった言葉はずっとフェイスの心のあたたかな場所に置かれている。そんなディノだけれど、特殊な経歴からか脆い部分もあって、笑顔を繕う夜が確かに存在した。寂しげな彼を見つけたキースがほろ酔いのふりをして寄り添うと、その表情が和らいで、幸せそうにはにかむのだ。

    「見守っていきたいよね」

    長年完成しなかったパズルのピースが見つかって、綺麗にぱちりとはまるような、あの二人はそういうものに見えた。
    ジュニアもまたこくこくと頷いて、それからはたと止まる。思案顔をしたのち、ぱっとフェイスの方を見た。

    「……なんかおれ達、立場逆転してんの面白くねえ?」
    「…………ふふ」

    フェイスにとって九つ、ジュニアにとっては十以上も上の男共の、初々しくも一途な恋愛模様を応援し、ときにサポートする。まるでこちらがメンターのようだ。ジュニアの言葉にじわじわこみ上げるものがあったフェイスがついに吹き出した。

    「アッハ!確かに!」
    「な?仕方のねえ奴ら!」
    「ほんと仕方ないよね。ま、オトナな俺たちがあたたか~く見守ってあげなきゃね」
    「しゃあねえなぁ」
    「……ありがとね、おチビちゃん。いろいろと」

    本当の理由も告げず夜更かしに巻き込んで、彼が常に心がけていた健康的なルーティンを崩した。根っこの原因はキースとディノにあっても、支援を買って出たのも、この手段を選んだのもフェイスだ。
    ジュニアは神秘的なオッドアイを丸くしてフェイスを見上げ、そうしてにかりと、楽しそうに笑った。

    「お前、いい顔するようになったよな」

    え、と今度はフェイスが目を丸くするも、ジュニアはあくび一つのみを残してすたすたと自らのスペースへ帰っていった。もうおねむらしく、ほんの数秒ほどスマートフォンに触ったあとはベッドへ潜り込んでしまう。また向こう側を向いて眠るのだな、とジュニアの癖を見届けてから、フェイスも自分の寝床へと戻る。
    どんな顔をしていたのだろうか。フェイスはそっと自分の頬を撫でてみた。

    キースとディノ、それからジュニア。フェイスがこれまで歩んできた人生の長さに比べれば、彼らと一緒に過ごした時間などたかが知れている。けれど、長さではないのだ。
    豊かな金銭も麗しい見目も差し出さず、心の対価に心を尽くす。そういった関係が慣れなくて、むず痒くて、しかし決して嫌ではないとフェイスは思うのだ。ビームスの血筋の特徴なのか何なのか、身内には妙に甘くなる傾向も相まって。

    「おチビちゃん、おやすみ」

    なんだか言いたくなって独り言のように告げると、もう半ば眠りかけのむにゃむにゃとした声色でお~と返ってきて、微笑ましい気持ちになる。

    フェイスは現在のスタンスで生きるようになってから、他人の幸せなんて本気で祈ったことはなかった。それが今じゃ、長い暗闇が明けて、ようやく結ばれた二人が愛し合える日々が永く続くことを願っている。

    「……俺って実は優しい男なのかも」

    そう在れる自分が、フェイスは誇らしかった。
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