ビューティフルレシート あ、と跳ねたような声が隣から上がって、フェイスはそちらに視線を向けた。ディノが持っている白い紙切れは大人の両手には小さくて、そのちんまりとした様子がちょっと可愛い。大の男がそんなものを一生懸命に見て。とても三十前には思えなかった。
「何か珍しい印字でもあった? そのレシート」
歩きながら見る、といった器用なことは出来ないらしく、立ち止まったディノに合わせてフェイスも足を揃えた。
ブルーノースの歩道は綺麗に舗装されている。ちょうど靴の爪先の部分にタイルの目地があって、なんとなくはみ出さないように足を退かせた。陸上選手みたいな気分だ。スタートラインに見立てて走り出すほどフェイスはわんぱくではないが。なんなら子供っぽさをどこかへ置いてきたような小悪魔的な男である。小首を傾げて隣人の顔を覗き込むのが非常に様になっていた。
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