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    kochi

    主にフェリリシ

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    kochi

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    白鷺杯ネタ

    Shall we sweets?(後) 特別褒賞ができたリシテアは、俄然とやる気が向上した。課題の笑顔は白鷺杯でのお菓子を考えれば、クリアできそうな兆しを見せていた。……子どもっぽい理由と我ながら思うも『優勝するためです!』と、割り切って臨んでいく。
     踊りながら、尚且つ最後の見せ場の時だけ頭を切り替えるのは難しいので、練習の時や鏡の前でうまくできるように励んでいった。
     出場者のリシテアの士気が高まれば、学級全体の士気も湧き立つのは必然。勢い付くまま、ついに白鷺杯当日を迎える──。
     
    「よし、作戦の確認は済んだな。あとはなるようになる!」
     
     級長のかけ声に呼応して、歓声が上がる。戦闘でもこんなに盛り上がることは少なく、合戦に行く勢いだ。……しつこいが、白鷺杯は試験や訓練とは一切関係ない。
     盛り上がる中、疑念を持ったリシテアはついに口火を切った。
     
    「あの……なんで、みんな正装なんですか?」
    「何言ってんだ、俺達は一蓮托生だ!」
     
     ヒルダとマリアンヌによって制服の範囲内でドレスアップしたリシテアと同様に、金鹿学級の面々も正装に着替えていた。女性陣は化粧もしている。
     
    「違和感が強いのですが……」
    「へへへ〜! どうかな〜? たまには真面目な感じも良いかな〜って」
    「窮屈なんだけど、作戦みたいだからな……んー、落ち着かない!」
    「あっレオニーちゃん、顔は触らないでね。せっかくのお化粧が取れちゃうから」
     
     正装と化粧でレオニーは落ち着かず、ソワソワしていた。宥めるヒルダが、彼女の唇にリップを引いて調整していく。
     
    「なんで、みんなも着替えたんですか?」
    「なーに、これも策略の一つだ。練習と本番は違うからな、会場の雰囲気に呑まれない対応策ってやつさ。ほら、珍しくめかし込んだ俺達を見れば、笑えてくるだろ?」
    「ああ! ……たしかに」
    「クロード、笑いを取るために着替えさせたわけじゃないだろうな!」
    「まあまあ落ち着いてください、ローレンツ君!」
     
     マリアンヌやローレンツの正装はそうでもないが、普段から着崩しているクロードやヒルダやレオニー達は特に違和感が出ていた。ラファエルは、どうやって着たのか気になる程だ……。
     
    「……早く脱ぎたいぞ、オデは」
    「ふふっ! いいんじゃないですか? 見てると緊張が解れていきますよ」
    「本当はもっと派手にしたかったんだが、セテスさんに止められてな。妥協した結果、正装になったんだよ……。俺としては『従者の服』が良かったんだが」
    「それは止められますよ……」
     
     緊張の糸が緩んでしまうが、和気藹々とした雰囲気は和ませる。
     そんな調子で、白鷺杯の会場に向かう一同。既に多くの来場者が参列しており、厳かな雰囲気が漂う中に入ると一気に緊張が走るが、金鹿学級のみんなを見ると笑みが溢れてしまっていた。
     
    (想像以上に効果がありますね……!)
     
     クロードの作戦は功を奏していた。応援に来た他の学級の生徒も正装の金鹿学級達を見ると笑いと咳払いが漏れて、会場の雰囲気が和んでしまっていた。
     
    「みんな正装なのに笑ってしまうのも不思議ですね!」

     
     定刻通りに、今年度の白鷺杯が開催される。
     出場者は前に出て、音楽が流れたと同時に踊り出していく。いっときの舞踏会は花の嵐の如く舞い踊り、観衆の心に種を撒いて、芽吹かせていった。
     一斉に踊るため、そう時間はかからない。少しの審査時間を置いて、結果が出た。優勝は───黒鷲学級。
     
    「……えーー! なんでぇーー?! リシテアちゃん、とっても頑張ってて綺麗だったのに!」
    「結果は結果だ、ヒルダ君。誰もが素晴らしく、美しき踊りを披露していた。そもそも……競い合わせること自体が、無粋極まりない! それぞれの良さを潰し合わせる競技など言語道断だ!」
    「熱くなるなよ、ローレンツ。まっ、気持ちはわかるけどな……。惜しかったよなぁ」
     
     悔しがる金鹿学級の面々に、リシテアはかえって戸惑ってしまう。イグナーツやマリアンヌは労いながらも涙ぐみ、レオニーとラファエルは純粋に褒め称えた。当人より周りの方が多様な反応を示しており、どうしていいのか……リシテアは困った。
     
    「あの、わたしはやり切りましたから満足していますよ」
    「うぇーーん! そうだよ、リシテアちゃんとっても可愛かったよ!なのに……なのに、なんでぇーー!?」
    「そのくらいにしておけ。良かったぜ、リシテア。作戦通りで完璧だったさ! まあ……敗因を挙げるとあれだな、相手を本気にさせてしまったってことだな」
    「そうですね。でも、それは光栄なことですから」
     
     喚きそうになったヒルダ達に横入りして、クロードがいなしていく。応援してくれたみんなが悔しがったり、悲しんでくれるのは、嬉しくもこそばゆく感じた。
     
    「やれるだけやりましたし、悔いはありません。結果も満足してます」
    「……そうですね。リシテアさんが納得しているなら、ボク達が悲しむのも…っ、良くない、うぅっ…ですよ」
    「そう、ですね。……すみません、私が応援に来たばかりに……」
    「そんなことないですから! さあ、移動しましょう。今日はご馳走らしいですよ」
     
     食堂に促すとラファエルを筆頭に皆、向かっていった。
     応援してくれた仲間達に感謝しては、雑談するリシテアには翳りがないように思えた。……遠くから見る者には。
     
     
     気落ちした心を晴らすかのように食堂は賑わっていた。普段よりも品数が多く、この日しか食べられない物もあって特別感が出ていた。
     思い思いに腹を満たしていく者もいれば、この後に舞踏会が控えているので、ほどほどに満たす者もいたりと各々好きなペースで食していく。また、お誘いをする最後の機会……一縷の望みをかけて、意中の相手に声をかける場面も見受けられ、あちこちに思惑が張り巡らされていた。
     
    「マリアンヌちゃんは誰かと踊らないの?」
    「い、いえ……私が行ってもご迷惑でしょうから」
    「そんなことないから! じゃあ、あたしと踊る?」
    「えっ?! ……で、でも、ヒルダさんのご迷惑では……」
    「ならないって。迷惑なら誘わないから! リシテアちゃんもレオニーちゃんも一緒にどう?」
     
     ヒルダの誘いを二人は首を振って遠慮した。
     
    「柄じゃないし、興味ないよ。滅多にないご馳走を堪能してる方が良いからさ」
    「わたしも遠慮します。……もう一年分踊った気がします」
    「ははは! それなら、わたしもだな。一生分踊った気がするよ」
    「レオニーちゃんは、せっかく踊れるようになったのに。勿体無いな〜」
    「踊れるようにはなったけど、リシテアだから付き合ったんだし。舞踏会に出たいわけじゃないから……」
     
     リシテアの練習に付き合ったおかげで踊れるようになったレオニーだが、舞踏会は気乗りしないよう。賑やかな食事会の後は、各自で白鷺杯を満喫する運びになっていった。
     
     舞踏会開催の時間になると、食堂の人数は減る。宵の口を迎えて、食べ終える頃合いでもあったので、部屋に戻る者も多い。
     彼も例に漏れず、去り行こうとすると軽快な声をかけられた。
     
    「よお! お前さんに贈り物だ」
    「……何故」
     
     肩を叩かれて振り返った先には、飄々としたクロードがいた。部屋は隣りだが、彼に話しかけられることは少なく、あまり縁がないため警戒してしまうフェリクス……。
     
    「おいおい。まだ何もしていないのに、そんな警戒することないだろ?」
    「まだ……な。夜中は静かにしろ、と毎度思っているが。この間は異臭を放ってなかったか?」
    「は、ははは……ローレンツにも似たようなこと言われたな。まあまあ、細かい男は嫌われるって! 甘いものでも食べて、機嫌を直したらどうだ?」
     
     押し付けるように油紙に包まれた小さな物体をクロードから渡される。
     
    「何のつもりだ」
    「いらないから差し上げようと思いまして。俺からのささやかなクリスマ……ああ、こっちじゃ言わないんだったな。じゃあ、白鷺の献上品ってことで!」
    「……何を言っているか知らんが、菓子を渡されても迷惑だ」
     
     袋から見える形状と甘い匂いから、フェリクスが苦手とする菓子だわかった。嫌いなものを押し付けられて、歓迎するわけがない。
     
    「それは悪かったー。じゃあ、代わりに好きそうな人物に渡してくれ! 何しろ、白鷺杯限定の菓子だからなー。粗末にするのは勿体ない」
    「……どういうつもりだ」
    「適材適所って、格言があるだろ。学級全体で応援したからこそ、見せれない場合もある。そういうことだ」
     
     意図を察したフェリクスは、ため息を吐いた。クロードの言い分はわからなくもない……たくさん応援してくれた仲間だからこそ、見せれない時もある。
     
    「俺が適任と思えんが」
    「そう思うのは、お前さんだけだ。まっ、せっかくの白鷺杯だ。一人で閉じ籠るには寂しい日だろ?」
    「…………期待するな」
     
     舌打ちしながら答えると、すぐに外へと繰り出していった。粉砂糖が降った菓子を二つ携えて。
     
    「お膳立てくらいしてやらないとな~」
     
     頑張った者には相応の報酬が与えられるべきであり、これも級長の務めと言いたげな顔をしていた。役目を終えたクロードは、その場を後にする。
     [
    ]
     雪の降らないガルグ=マクだが、陽が沈めば冷気を漂わせる。冬の空は澄んでいるため、星々が寒々しくも瞬いて見えた。
     今宵は白鷺杯なので、遠くから奏でられる音色が静まった夜に色を添える。いつも真っ暗な大修道院もあちこち明かりが灯されており、煌めく星月夜と相まって幻想的な光景になっていた。
     
    「イグナーツなら絵にしそうですね……」
     
     訓練所から近い中庭のベンチから、リシテアは一夜の絵画を眺めていた。厚手のインナーを着ているが、冬の夜にじっと座っていれば嫌でも寒さを感じる。
     けれど、今の彼女は頭と体を冷やされたかった。……気を抜いたら、込み上げてくる感情に呑まれてしまいそうになるから。冬の息吹が、燻る劣情を鎮めてくれないかと期待していた。
     
    「……勝てません、でしたね」
     
     ぽつりと口に出すと、どすんと胸に重しが落ちた。
     悔いはない、全力を尽くした。みんなで一緒に頑張って、応援してくれて、自分のように悔しがってくれたのは本当に嬉しかった。最初は気乗りしなかったけど、白鷺杯に出て良かった。心の底からそう思ってる。
     だからこそ、期待に応えたかった! みんなで一緒に勝ち星を上げたかった!
     ……成し遂げれなかった無念が身体中に広がって、持ってきたお菓子を摘む。至福の時を与えてくれて、甘く慰めてくれるはずなのに味がわからなかった。
     
    「踊りは……競い合うものじゃ、ないです……から…っ!」
     
     涙色の呟きは、夜風に乗った音楽にかき消された。
     
     
     部屋に寄ってみたが、返事がなかった。灯りが付いていなかったから学校内を探し回ってみる。当てはないが、よく菓子を食べさせられる中庭の方へ向かうと……項垂れた背中を見つけた。月夜の下でも映える白い髪は、故国の雪原を思い出させた。
     何も冬の夜に外に出なくても……と、まず思った。コーデリア領は南側にあるから寒さに強くない、と聞いていたので殊更に。
     
    「何をしている」
     
     気の利いた、とは程遠い低音になってしまった。
     突然背後から声をかけられて、慌てて目尻に付いた涙を拭いて、リシテアは振り返る。
     
    「あっあの、泣いてたわけじゃ! ……って、フェリクスでしたか」
     
     白い息を吐いて、胸を撫で下ろしていく。
     彼なら良い……。悔しくて涙ぐんでたなんて、金鹿学級のみんなには知られたくない。
     
    「風邪を引く。落ち込むなら部屋でしろ」
    「お、落ち込んでなんて!? ……いえ、そうですね。……落ち込んでました。だって、勝てなかったですから」
    「成果が出なかったのなら当たり前だ。隠すことでもない」
    「あんた、もう少し言葉を選んだらどうですか! それに、成果が出なかったわけじゃありません……。練習より出来てましたし」
     
     優勝こそできなかったが、リシテアはよく健闘していた。照明や光加減を意識した立ち位置、大人っぽさを表した化粧、ふわりと香る香油、ピンとした背筋に優雅に見える脚遣いなど、たくさん考えて踊った。白鷺杯本番は今までで一番良く踊れたと自負している。
     ただ、結果は思い通りにはいかなかった……それだけ。
     
    「負けは負けです……。相手を本気にさせたのが、敗因でしょうね。さすがは元歌姫です。はあ……隠れて練習するべきでした」
    「お前はよくやった。まあ……残念だったな」
    「……ふふっ、ふふふっ! フェリクスから慰められるとは思ってませんでした。でも、次からはもっと優しく声をかけてくださいね」
    「…………」
     
     フェリクスが意味のないことを言わないし、気の利いたことができないのはもう知っている。彼なりの不器用な労いだと思えば、リシテアに笑みが浮かんでいった。
     そうとわからない者からすれば、無遠慮に笑われた気がして良い気はしない……。急に機嫌も向上して、ますます理解不能に陥る。
     
    「いいですか、わたしが悔しくて泣いてたなんて誰にも言わないでくださいね!」
    「言う気はない。……無意味だろうしな」
    「いいでしょう、あんたを信用してあげます! もちろん、お菓子を隠れて食べていたことも言ったら駄目ですよ!」
    「……あれで隠れてたのか」
     
     さっきまで落ち込んでたくせに一気に覇気が戻るリシテアは不可解だが、復活したのならまあいいか……と溜飲を下げる。面倒じゃない方がフェリクスは助かる。
     
    「お前のところの連中は気にしないと思うが」
    「わたしにも意地があります。わたしが悲しんでたら、余計に心配させちゃいますし……。あんただって、シルヴァンやディミトリ相手に弱音吐かないんじゃないですか?」
    「……知らん」
     
     濁した返事が答えになっていた。仏頂面でそっぽ向く仕草がおかしくて、リシテアは笑いながらまだ目に溜まってた涙を拭いた。
     負けたら誰だって悔しい──。たくさん応援してくれたのも、自分のことのように泣いてくれて、悔しがってた金鹿学級のみんなに感謝してる。だから、涙は見せたくなかった。悔しくても辛くても、笑っていたかった!
     一緒に白鷺杯を楽しみたいから、みんなの前で泣く自分は許せなかった。……一人になった時は少しだけ許して、楽しい学校の思い出にしたいと願ってた。
     
    「あんた、舞踏会はいいんですか?」
    「二度も聞くな」
    「そうですか、それなら良いです! わたしはもう遠慮します。……腕も脚もくたくたですから」
     
     それはたくさん練習を積んだ証であり誇りだ。そう思っても、うまく言えないフェリクスなので口に出せず黙ってしまう。
     一時の沈黙が訪れるが、リシテアは気にしなかった。泣いてるところを見ても、ぎこちなく笑って虚勢を張っても、見ない振りをしている彼の気遣いは十分伝わっていた。
     二人の間に流れる静寂は冬の空のように澄んでた。
     
    「……やる」
    「んっ、なんですか?」
     
     しばし沈黙を経て、フェリクスは目的を果たす。突然の贈り物にリシテアは驚き、ベンチに置かれた物を見やる。二つの油紙の包みは口が開いてるため中身が見えていた……一目で何か理解して、喜びと困惑が入り乱れる。
     
    「えっ、ええっ?! これは白鷺杯の…! あっ……でも、わたし勝てませんでしたから」
    「勘違いするな。要らない物を押し付けられて迷惑してる。お前に処分してほしい」
    「しょ、処分って!? お菓子に対して、何てこと言うんですか!」
    「要らん物は要らん。お前が要らないと言うなら捨てるだけだ」
    「そんなことは許しません! し、仕方ないですね……どうしてもって言うなら、わたしが貰います!」
     
     奪い取るかのように、リシテアはお菓子を取り上げる。せっかくの特別なお菓子なのに! と言いながら、手にした甘いものを見つめる顔は彼がよく知る笑みだった。……その横顔を見て安堵する。お菓子を目の前にして機嫌が良くなる彼女は、いつだって悪くない。
     
    「でも、二つも良いんですか? あんたの分だけじゃないですよね?」
    「さあな。気付いたら手にしてた」
    「そんなはずないと思いますが……。優勝のご褒美のつもりでしたが、食べ物を粗末にしてはいけませんよね。仕方ないですから受け取っても良いですよ!」
     
     取り上げておいて何を言っているんだ……と、呆れながら首肯する。
     面倒なことを言いつつ喜ぶリシテアにはら暗い影が見えなくなっていた。お菓子を食べる時は至福の時! と豪語するだけあって、かえってフェリクスは感心してしまう。
     
    「せっかくですから、あんたも一口食べたらどうです?」
    「甘いのは見ればわかる。要らん」
    「そうですか、わかりました。……と、言いたいところですが!」
     
     ニヤつきながらリシテアは白鷺杯限定の焼菓子を一口大にちぎって、隣にいるフェリクスの口に触れさせる。甘いものを唇に押し付けられて、フェリクスは露骨に不快を表す。
     
    「……食わぬと言ってる」
    「たまには付き合ってください。わたしは至福の時を満喫したいんです。ですが、今日は一人で食べる気分じゃないので、あんたと一緒でも良いですよ!」
     
     また面倒なこと言い出してる……と、ため息を吐くも今日は付き合ってやるかと考え直す。
     大人しく押し付けられたお菓子を口にするが、フェリクスの予想通りの甘さで急いで飲み込んでいく。
     
    「……甘い」
    「そうですか? わたしはもう少し甘い方が良いんですが」
    「よく食えるな」
    「そうですね、あんたには合わないかもしれません」
     
     幸せそうに甘いお菓子を頬張っていくリシテアは相変わらず理解不能だ。
     だが、今日は夜で、白鷺杯だからか……白い髪を靡かせて、月明かりの下で笑っているリシテアを見てると妙な気持ちが湧いた。……なんとなく、落ち着かなくなってフェリクスは顔を背けた。
     
    「今度は甘くないお菓子をあげましょう。踊りの練習でずっと作ってませんでしたから、そろそろ恋しくなったんじゃないですか?」
    「……都合が良い建て前だな」
    「あら、本音ですよ? 白鷺杯までお菓子を控えてたので、やっと食べれますから!」
     
     彼女の言う至福の時は未だ不可解だ。しかし、今夜……少しわかった気がした。
     甘いのが苦手なのは変わらない、今も胸の中に蜂蜜を落とされた気分だ。それなのに不快に感じなく、一緒なら嫌じゃなくなっていた──。自身の変化に驚きながらも、フェリクスは素直に受け入れてた。何かがピタッと嵌った感覚を覚えて。
     
    「たまには甘いお菓子を食べてみてはどうですか? 新しい知見を得るもしれませんよ」
    「……何を得られるんだ」
    「ふふん! わたしの作るお菓子は美味しいってことです!」
    「それは新しくもないだろ」
    「ムッ?! ……だったら、ちゃんと言ってください。もう、あんたのそういうところがずるいんです!」
     
     よく言われる要領を得ない言い掛かりを付けられて、フェリクスは嘆息する。同時に、先程まで抱いた不思議な甘さは溶けていった。
     何だったのか……と、惚けている間に拗ねたリシテアによって、再度お菓子を口に入れられそうになり意識を取り戻す。
     
    「あんたは、もう少し素直になるべきですよ!」
    「お前が言うのか……」
    「お菓子が食べたいって、素直に言ったらどうですか?」
    「そこまでじゃない」
     
     甘いものが嫌いなのは、たぶんこの先も変わらない。変わるとしたら……まだ朧げで、かたちのない砂糖菓子に似た何か。そんな予感が、生まれていた。
     
     舞踏会が開かれて、女神の塔の伝説もあるが関係ない。二人には甘いお菓子の方がお似合いのようで。
    [
    ]
    入れたかったクロードとヒルダの会話

    「聞いたよ、クロード君! どうして先に作戦教えてくれなかったの? そういうことなら、お化粧も変えなくちゃいけないんだよ。もう新しいの買っちゃったじゃない! ……困ったな〜、せっかく限定の香油手に入れたのに」
    「あのな……ヒルダが大事な作戦会議をサボって、買い物に行ったからなんだが?」
    「ああ、そうそう。明かりって、たしか暖色系だよね。じゃあ、こっちのリップの方が良いかな? 迷ったのよね~、クロード君はどっちが良いと思う?」


    フェリクスとヒルダ

    「ねえねえ、フェリクス君ってどんな香りが好き? シトラスとか爽やかな方が良い? ちょっと甘さが香る柑橘系もおすすめなんだけど、ミントの方が好きそうかな。後に残らないベリーも意外と良いよ! そうそう、冬限定のカカオ風味の香油もけっこう良かったんだよ。どう? 何か気になるのある?」
    「……無臭」

    ヒルダは動かしやすくて可愛くて、とても好きです!


    以下は駄文です。読まなくてOKです。

    金鹿は最初に選んだ学級なので思い入れがあるので、みんなで何かする話を書けて良かったです! 口調はかなり怪しいので、薄目で読んでくれたら幸いです。
    本編の白鷺杯は簡単に優勝できますが、話として考えるとドロテア嬢相手に勝つのは難しいと思いました。知恵と戦略を駆使して対抗するのが、金鹿らしいかなと。話はとっ散らかってる気がするのですが、他学級ならではの話になったかな〜と自画自賛しておきます。ゲームではもっと早くスカウトしますが、ギリギリまで他学級でいるのも良いですね!
    12月なので、ちょっとはいい感じに進むかな! とか思いましたが、この後戦争なんですよね……。

    ここまでお読み頂きありがとうございました!
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