また駄目だった……。そう項垂れてベッドに沈み込むリシテア。毎度のことといえば、そうなのだが、さすがに4回も失敗となれば落ち込む。
失敗、そういうと語弊があるか。彼女はセオリー通りの誰でもわかる定型文で頑張ったのだから、ほぼ非はない。
だが、世の中うまくいかないもの……誰もがわかるものを、わからない人もいる。
「『付き合って』で駄目なら、次は何にすればいいんでしょうか……」
ぐったりとした声が、天井に当たって吸い込まれた。
本日の告白も無しの礫になってしまったようで……いや、振られてはいない! 振られていないが、それ以前の問題だった!
「まあ、おかげで出かける流れになったから成功と言えなくもないですが……」
渾身の告白(4度目)は『付き合って!』で攻めたが、お約束の勘違いをされて何処かに行く話になってしまった。
それはそれでいいのだが、いい加減踏ん切りを付けたいような付けたくないような複雑な気持ちでいた。基本的に、リシテアは白黒付けたい考え方だ。
「ハッ、手紙で! ……いえ、駄目ですね。気付かれない可能性が高いですし、うっかりシルヴァンとかに見られたら最悪です!」
4回目となれば、もう大体の手は尽くした。……実際は、言葉足らずで恥ずかしくて「好き」とちゃんと言ってないせいが大きいのだが。
「これからも付き合っても良いですよ」とか「わたしが手伝っても良いですよ。……ずっと」とかの遠回りな告白なので、相手はその手に関しては絶望的なため、残念ながら届かない。
「あーん、もうっ! 今日は頑張ったのにーーー!!」
リシテアにしては相当頑張った『付き合って!』の直球告白だった。しかし、相手が相手なのでもう少し頑張りましょう! の評価になる。
「仕方ないです。もう次で最後にして、終わりにします!」
その台詞は2ヶ月前から、ずっと言い続けている。フラグは毎回立つ。
★★★
なんだかわからないが、付き合ってと言われた。別に断る理由がなく承諾したら「そ、そうじゃないんです!」と言われてしまった。
じゃあ、何なんだ? と、フェリクスは思わざる得なかった。
少し考えた後に、何処かに行きたいのか? と尋ねたら「そ、それも違います! ……でも、もうそれで良いです」と意図不明の返答をされてしまう。うん、ますますわからない!
「なんだ、あれは……」
思わず、声に出てしまう。自室のボヤきのため、聞く者がいないからこそ出ていた。
時々、妙に気合いを入れて面倒なことを言ってるなと思っていた。
今日の「付き合って!」に至っては───なんで、今更そんなことを聞いてくるんだ? という感想だった。
「女はわからん……」
分かろうにもリシテアはちょっと、だいぶ面倒くさいので、フェリクスが理解するには難易度が高い……。いきなり難題を突き付けられたものだが、彼は放棄する気はなく、理解しようと考えてはいる。理解不能なことが多過ぎるが。
何のことか……と。実を言うと、リシテアの告白は2回目で成功していた!
さすがに初回の「あんたのためなら……ま、また、お菓子を作ってきても良いですよ!」といった告白は全く伝わらなかったが、偶然見てしまった見られたくない人物にあれやこれや揶揄われながら、いらないアドバイスを受けさせられて、あれが好意の表れだと知った。
それを聞いても、別に嫌ではなかった──。それから色々考えて、自分から言うのも何だしな……と過ごして、2回目の遠回しな告白で意図に気付いて承諾した。
しかし、リシテアには何にも伝わっていない!! なんと、これが2か月前のこと! 未だに彼女は悶々と悩んでいる始末!
「……まあいいか」
いやいや、よくない! よくないのだが、フェリクス自身が何がよくないのかわかってないので、手の施しようがない!
それに、ちょいちょいリシテアが気合い入れて何か言っては喚いたり、落ち込んだり、照れたりする様は楽しんでいた。コロコロ変わる表情は面白…、魅力的だったから!
結局、本日も進展なしとなる。
進展しないが、既に目標が達成されてると知らぬまま、彼女は頭を抱えて次の作戦を練っていく。
「映画に行って雰囲気作りとか! ……恋愛物興味ないですね。わたしもそれほどですし。遊園地……カラオケ……んー、ないですね。無難に水族館でしょうか?」
おすすめで、且つ自分が行きたい場所を調べて、今日も励む。
真相を知るのはいつになるのやら……。