火花 なんで男二人で祭りに行かなきゃならないんだと思いつつ、鳥居の前で単なるチームメイトの男を待つ。
甚平を着て、髪を括り、団扇で扇ぎながらクソ暑い夜の外に出たまでは良かったものの、人の熱気で更に体感温度が上がった場所に来てからは帰りたい気持ちの方が大きくなってしまった。
そもそもあのアホが『みんなでお祭り行きたい』などと言い出さなきゃこんなところには来ていない。妹はすでに姉と昼間に行ってきたらしく「葵にーにも楽しんできてね」とオレを笑顔で送り出してきたのですぐ帰宅するのも格好がつかなかった。
妹はオレが元ヤン時代に誰ともつるんでいなかったことを知っているのでチームメイトとの約束をドタキャンして帰ってきたなんて言ったら悲しませてしまう。
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