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    chiwawagasukida

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    ☀️くんに恋するモブが🐍に牽制されまくるジャミカリ短編小説です!

    #うたオア3
    #ジャミカリ
    jami-kari

    「おっ、宿題してるのか?よしよし、偉いな!」
     夕餉の前に談話室で宿題をしていると、突然上から降ってきた快活なその声。
     顔を上げると何とそこにいたのは僕の憧れ、カリム・アルアジームその人だった。そして煌めく宝石のような赤い瞳が、僕に優しく微笑みかける。
     すると彼はいきなり「今は何の勉強してるんだ?見てやるよ!」と言いながら、僕の隣に座って宿題を覗き込んだ。
     り、寮長がこんな近くに⁉︎うわ、近くで見てもめちゃくちゃ肌が綺麗だ……ってせっかく寮長が勉強を教えてくれようとしてるんだぞ‼︎集中しろ、僕‼︎と首を横に振る。
     するとココナッツの香りがふわりと鼻腔をくすぐった。そしてムスクの匂いも混ざってて、ってあれ?この匂いを嗅いだ記憶がある。それもついさっき……ああ!思い出した。副寮長と同じ香水だ!さっき厨房に向かう副寮長とすれ違った時の記憶が蘇る。
     副寮長も香水つけてるんだ!なんか出来る大人の男の人って感じの香りだな〜、やっぱりどこか有名なブランドのものなのかな?ってその時思ったんだ。
     でもなんで同じ香水を?まさか牽制のため?考えすぎか……
     最近の寮長と副寮長はギクシャクしていたウインターホリデーの後とは違い、言葉にするのは難しいけれど空気が柔らかくなった気がする。
     そしては時に二人は見つめ合った瞬間、熱の籠る視線を交わし合うんだ。……寮長のことを目で追っていたら嫌でも気づいてしまった。もしかして二人は、と。僕の心臓がちくりと痛む。
     入学してすぐ、気づいた時にはもうグループが出来上がっていて孤立してしまっていた僕に寮長は話しかけてくれた。
     その優しい笑顔、声、愛らしい仕草に僕の心が奪われてしまうのも必然的なことだった。
     そんな寮長はついに副寮長とお付き合いを……と僕は宿題の存在など忘れ悲しみに打ちひしがれ俯く。するとその時だった。
    「おーい、大丈夫か?調子が悪いなら休んだ方が良いぜ?」
     ハッ、と気づいた時には寮長は宿題ではなく僕の顔を覗き込んでいた。
     そして目の前の小さな眉毛とぷるりとした薄い唇が心配げに垂れ下がる。やば、まつ毛なが……って、違う違う!
    「すみません、えっと……難しくて考え込んでしまいました!」
    「そっか!分かるぜ、そういうことあるよな〜……あっ、この問題リドルに教えてもらったやつだ!勉強の基本が抜けてるからって復習で問題を出されたんだよな〜。まずはこの式をここに当て嵌める……だったはず」
     寮長が指でなぞる先を見ようと僕はした。だけど不意に寮長の首筋に目が入ってしまう。だって大切に守られて傷一つない肌にぽつり、と赤く染まる場所があったんだ。
     よく目を凝らさないと分からないけど、光に当たるとうっすらと透ける真っ赤なターバンの下にそれはあった。
     すると僕が何も反応しないから寮長がこちらに顔を向けた。
    「どうした?やっぱり体調が悪いのか?」
     寮長が不安げな表情を浮かべ首を傾げると、身につけた装飾品たちも一緒にちゃり、と鳴く。
    「い、いえ!違うんです。ちょっと気になっただけで」
    「ん?何がだ?」
     僕の目をまっすぐ見つめるそのガーネットに心音が早まるのを感じながら、僕は自分の首筋に指を指す。
    「あの……寮長のここ、虫に刺されてますよ?」
    「えっ」
     ただの虫刺され、そのはずなのに寮長は妙に悲痛な声を上げ表情を曇らせげた。
    「あ、跡には残らないと思いますよ!薬持ってきましょうか⁈」
     上擦る声で僕は空気を変えようとする。僕は何か失言をしてしまったのか⁉︎
     すると寮長は横にふるふると首を振って、痕がある場所をそっと指先で押さえた。
    「虫に上書きされたのが嫌だったんだ。……ここ、ジャミルがいっぱいキスしてくれたからさ。なんで付かないんだ、ってキレながらだったけど」
     え、副寮長が……なんと?僕の頭にはクエスチョンマークで埋め尽くされそうになる。
     いやいやつまり、首筋にいっぱいキス、付かない、これらのヒントから導き出せる答え。それはキスマーク……『牽制じゃないか‼︎』
     ううっ、寮長……副寮長とやっぱりそういう関係だったんですね、と心の中で僕は号泣する。
     でも目の前の寮長を悲しげな顔にさせてしまった責任を僕は取らなければならない。
    「すみません‼︎寮長、違いました!初めて見たので分からなかったんですが、それは虫除けの魔法ですね!いや〜さすが副寮長だな〜‼︎あはは」
    「虫除けの魔法……?そっか!ジャミルは虫が苦手だもんな〜。でも何でオレに掛けるんだ?」
     うぐッ、なんて誤魔化したらいいんだ⁉︎
     すると救世主……もとい断罪者の低い声が背後から聞こえてきたのだった。
    「おいカリム、夕餉の準備が出来たが……何やら盛り上がっているようだな」
     背筋がゾゾっとし、その声の方を向くとそこにいたのは片手に料理を乗せたトレーを持った断罪者……いや副寮長だ。
     隣にいた寮長はジャミル〜っ‼︎とさっと立ち上がり、僕のことなど忘れ副寮長のもとへ駆け寄る。
     すると副寮長は寮長が抱きついてくるのを察してか、トレーを持つ手を体から遠ざけた。
     そして寮長を優しく抱き留め、僕に見せつけるようにその小さな尻から背筋を扇状的に撫で上げる。
     すると寮長の身体はびくんッ、と震えた。
    「どどど、どうしたんだジャミル?こんな撫で方」
    「別に嫌いじゃないだろ」
    「嫌いじゃないけど今すんなって!」
     寮長はそう怒ると、副寮長に小さく何かを囁いた。
    「ふーん、変な気分になるって?」
    「んッ……⁉︎なんでおっきな声で言うんだよ〜‼︎」
     そして寮長は副寮長の鍛え上げられた胸筋をポカポカと殴る。
     ……ん?へん、な気分って、僕は何を見せられてるんだ⁉︎
     僕は思わず手で口を覆うと、副寮長はこちらを見て口角を上げたのだった。
    「カリム、さっき話していた虫除けの魔法とやらについて教えてやろう。だから今日の夕餉は寮長室でいただこうじゃないか」
    「え、あ、わかった……?わりぃ!何にも宿題手伝えなくて」
     副寮長に流されるまま頷いた寮長はこちらに振り向き、申し訳なさげな顔を浮かべた。
     ええ、なんとなくこんな流れになるだろうと思ってましたよ!
    「大丈夫です!自力で頑張ってみます‼︎」
    「すまないな、邪魔をして。どうやらカリムにしっかりと、いろいろ教え込まなければならないようだ。……ではな」
     副寮長はトレーの上に沢山の料理を乗せているのに、バランスを崩さぬまま戸惑う寮長の肩を抱く。
     そして美しい横顔は微笑を浮かべ談話室から去っていった。
     ……いや、牽制が凄すぎるッ‼︎
     僕はうな垂れ落ち込んでると、突然何者かの手が肩に置かれた。
    「おう、お疲れ様。俺もまだ宿題やってないからご飯食べたら一緒にやろうぜ」
     いつから見ていたのだろうか。やって来たのは寮長ファンクラブに共に入団している同級生。彼も僕と同じように寮長に憧れの気持ちを抱く仲間であった。
     かくして無事に宿題を終え、その後僕らは慰め合いながら二人が結ばれた祝杯をあげた。
     そして寮長と副寮長は一度も部屋から出てくることはなく、二人は次の日の授業を休んだのであった。
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