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    支部より移行しました王蛸ロド、見世物小屋にいる蛸ドなのでご注意ください。あからさまな表現は無いので多分年齢制限なくて大丈夫かな。何かあればお知らせ下さい。

    ベイビーブルーに見初められ調教師のシーニャ・シリスキーと言えば、誰もが知る有名人である。あぁ、あの見世物小屋の。そう言われると聞こえは余り良くないが、その実態はサーカス団に近い。そこでは演者の誰もが艶やかに踊り、歌い、躍動し、観客を魅了する。ロナルドもそんな見世物小屋に熱心に通う客のひとりであった。
    この世には人ならざるものが多数存在する。彼らは普段であれば人とは一線を画して生活をしているが、中には一定数、人の手に落ちるものが存在する。
    鱗を傷付けてしまった人魚であったり、片翼をもがれ飛べなくなった翼人であったり、罠に掛かり足が動かなくなった獣人であったり。そういった、元の生態系に戻ることが困難になった人ならざるものを保護し、芸を覚えさせ、観客に披露させるのがシーニャだった。
    彼らは自分の巣や縄張りから出てしまうと、そのコミュニティには二度と戻ることが出来ない。そもそも人よりも野生動物に近いため、彼らの領域から少しでもはみ出てしまったものは、仲間というカテゴリから除外されてしまう。そうなってしまった人ならざるものは、もう、人の手を借りなければ生きていくことが出来ない。差し伸べられる異種族の手を取り助けを乞う。たったひとりで野生に放り出される恐怖の方が、見世物になるおぞましさにも勝るということらしい。
    彷徨う他ない人ならざるものは、シーニャの元で傷を癒し、芸を披露し、貰い手を見つける。それは巡業サーカスで歌って踊る、元は孤児である子供たちの行く末とそう大して変わらないのだという。
    「子供の頃にね、一度見ちゃったのよ。群れから外されたラミアのお姉さんが、滅茶苦茶に食い漁られてるの」
    シーニャはその外見の奇抜さとは裏腹に、理性的であり人道的だ。己の手で磨き上げた人ならざるものに愛情を注ぎ、貰い手にはその資格があるのかをしっかりと見定める。美しく磨き上げた命が粗末な扱いを受けぬよう、契約書を交わすことも忘れない。
    一番人気の人魚のヒナイチは、先日貰い手が決まったらしい。近隣で随一の富豪が、溺愛してやまない姪への贈り物として貰い受けることとなったとのことである。
    ロナルドもその富豪と同じように心惹かれた人ならざるものがいた。日を空けずに見世物小屋に通い、シーニャへの面会を求めては貰い手になりたいと懇願し続けている。しかし、何度訪れてもシーニャは首を縦に振ってはくれない。
    「なぁ何で俺には譲ってくれないんだよ」
    「うふふ、何でだと思う?」
    「わかんねぇから聞いてるんだろ」
    「ロナルド、あんた、ドラルクちゃんのこと愛玩用として引き取りたいんでしょ。そんなの譲れるわけないじゃない。契約書にも書いてあるっていうのに」
    「ア゜────ッ」
    手にしていた紅茶が盛大に零れ、ロナルドは更に大きな叫び声を上げた。愛玩用。そのつもりではあったものの、改めて言葉に出されてしまうと動揺が隠せない。シーニャはやれやれと肩を竦めると、零れた紅茶を拭きながらロナルドを睨み付ける。
    「これだから独身の特に若い男には譲りたくないのよね。なに勘違いしてんだか知らないけど」
    「かっ、勘違いってなんだよ!」
    「あのね、ドラルクちゃんを見る目がもうだいぶおかしいのよ、あんた」
    うぐ、とロナルドは言い淀む。おかしい、と言われてそんなことは無いとは言えなかった。
    ロナルドが懸想するその人ならざるものは、巨大な蛸である。八本の太い足にはびっちりと吸盤が並び、特注だという大きな水槽の中でそれらは意志を持つように艶めかしく蠢いた。その太い足の持ち主は、げっそりとした細い身体を皮膜のベールで包み込んだ細面の男だった。腹から下、蛸としての特徴が大きく露呈する部分はたっぷりと肉を蓄えているのに対し、腹から上、人としての部分はそれこそ骨と皮しか見受けられない。
    その蛸と人魚とは、当初同じ水槽で観客の前に現れた。ひれに美しい装飾を施し、踊るように水槽を泳ぐヒナイチの姿に誰もが目を奪われた。きらきらと水飛沫を上げて水面から顔を出し、観客に手を振っては再び水に潜る。愛らしい少女のような相貌も相まって、あちらこちらから値踏みするような呟きが聞こえるほどだった。
    しかしながらロナルドが目を奪われていたのは、水槽の隅で大きなシャコ貝と戯れる蛸の方だった。くるくると円を描くように泳ぐヒナイチを見ては観客と同じように手を叩き、気まぐれのように水面から顔を出す。何かをする訳でもなくただそこにいるだけのその蛸に、ロナルドはたまらなく興味をひかれた。
    一度だけ、蛸が墨を吐いた。
    それも気まぐれのひとつだったのだろう。同じ墨でも蛸と烏賊ではその用途が違う。己の分身として墨を吐く烏賊とは異なり、蛸の墨は煙幕となる。霞が棚引くように水中に墨が広がる中、その蛸はやはり何をするでもなく、ただ水中を揺蕩うていた。ゆらゆらと揺らめく墨が少しずつ海水に溶けていく。それを蛸はぼんやりと眺めているだけだった。
    その後、人魚と蛸とは別水槽になった。これもまた特注だという大きなワイングラスを模した水槽に、蛸だけが移された。ひとりきりになった大きな水槽でヒナイチが華麗に泳げば、蛸は観客からの拍手を催促するように誰よりも早く手を打ち鳴らした。口がよく回るらしく、如何にヒナイチが美しく泳ぐ人魚であるかを述べては更なる拍手を催促する。調子に乗ってくると、水槽から長い足を伸ばして観客からのおひねりを求めるまでになった。ワイングラスをひっくり返してしまわぬよう、肉厚な吸盤をびったりとグラスの内側に張り付かせ、ぬめる足を客に差し出す。ロナルドも一度だけおひねりを渡したことがあった。動くたびに色味の変わる足。それをくるりと返し、吸盤を上にする。白く丸い吸盤が、細かく震えながら収縮をしていた。
    「頂戴?」
    紙幣を握り締めているロナルドに気がついていたのだろう。心付けを求めるためのその言葉に、ロナルドの心臓が大きく跳ねた。お伺いを立てるでもなく媚びるでもなく、持っているものを早く渡すようにと求めるだけのその言葉が、声が、たまらなくロナルドの胸を締め付けた。
    ゆっくり開いた手のひらの紙幣を回収すると、するすると足が離れていく。有難う、とにんまりと笑みを浮かべた蛸の目は、次の瞬間にはロナルドから離れ別の客へと向けられてしまう。しかしロナルドの視線は、その蛸から視線をそらすことが出来ないでいた。
    「シーニャ、あの蛸譲ってくれよ」
    「あらやだロナルドじゃない。悪いけど、はいどうぞ♡って訳にはいかないのよ。まぁまずはお話聞かせて貰おうかしら」
    その後即座にシーニャに直談判をしたが、色良い返事が貰えないままのらりくらりと交わされ続けて今に至る。
    「ていうか今まで言わなかったんだけど、そろそろ言っちゃっていい?いいわよね?」
    「なんだよ」
    「ドラルクちゃんね、譲渡対象外なの。だからどれだけお金積まれても譲るのは無理」
    「……はぁ!?なん、ッ、なんだそれ……!!」
    ごめんなさいね?と小首を傾げるシーニャに詰め寄れば、あの蛸だけは保護したわけではないらしい。鱗が剥がれ痛がるヒナイチに寄り添うようにしていたということで、ふたりまとめて保護したものの、蛸の方は傷ひとつ無い健康体だった。そこで海に返そうとしたところ、嫌だとごねられたのだという。
    「なぁんかお堅い海の一族のお坊ちゃんみたいなのよね。海の底は娯楽が少なくてつまらない、暇潰しさせてくれって言い出しちゃって」
    「暇潰しって……、あ、だからあいつ、芸らしい芸のひとつもしないのか……!?」
    「ご名答、大金星ね。置物だと思ってくれ、ですって。その割にあんたみたいな危ない客引っ掛けちゃうんだから困ったもんよね……そう、困るのよ……」
    ぶつぶつと何か独り言を呟いたシーニャは、この後まだ時間があるかとロナルドに尋ねてきた。特に予定もなかったためそれを伝えると、よし、とシーニャが立ち上がる。
    「それじゃ行きましょうか」
    「どこにだよ」
    「その困ったちゃんのところによ」
    舞台裏は特別よ?とシーニャがぱちりとウインクする。既に見世物小屋は閉められており、客もロナルドしか残されていない。応接室を出たロナルドが招き入れられたのは、水棲の人ならざるものたちが生活する居住区域だった。磯の香りが漂う薄暗い部屋に大きな水槽がずらりと並ぶ。ずるりととぐろを巻く海蛇やヒナイチと同じような人魚、長い足を折り畳んだタカアシガニたちの水槽の一番奥、一際大きな硝子の向こうに、蛸は漂っていた。ゆらゆらと揺らめきながらふとこちらの存在に気付いたらしく、硝子に顔を近付けてくる。同じ水槽にはヒナイチもいて、見知らぬ顔に不思議そうな表情を浮かべていた。
    「やぁシーニャ。どうしたんだいこんな時間に」
    「ごめんなさいね、ふたりとも。ご機嫌はいかが?」
    「悪くはないが、ヒナイチくんはお疲れのようだから話なら手短にね」
    スン、と蛸の目が鋭くロナルドを射抜いた。大方、既に貰い手の決まった人魚に懸想する面倒な客だと思われたのだろう。ロナルドはその冷ややかな視線に息を飲む。舞台の上では決して見ることの出来なかった表情だ。
    「ああ違うのよ、ヒナイチちゃんじゃなくて、あなたに用があるの」
    「私に?」
    蛸が話すたび、こぷこぷと泡が漏れる。自分を指差し、不思議そうに目を丸くした蛸に、シーニャは外に出てきて欲しいと頼み込む。ふぅん、と顎に手を当て訝しつつも、蛸はその頼みを聞いてくれた。
    ふわりと海面に浮上した蛸は、水槽の縁から身を乗り出すと硝子に吸盤を張り付かせながら器用に床に向かって降りてきた。粘着質な音と共に地上に降り立った蛸は、やはり訝しげにロナルドを睨めつける。わざわざ居住区域にまで乗り込んできた部外者は、さぞ怪しく見えているに違いない。ジワジワと床が濡れ、染みがロナルドの足元にまで広がっていく。
    「ドラルクちゃん、あなた、ヒナイチちゃんが貰われて行ったらその後はどうするの?」
    ドラルクとヒナイチとは全く別の種族で、そんなふたりが共に保護されたのはたまたまに過ぎない。シーニャによれば、ひとり苦しむヒナイチを見つけたドラルクが寄り添い外敵から守るようにしていたのだという。そしてそんなヒナイチが、シーニャも認める貰い手に引き取られていくとすれば。
    「うぅん、そこなんだよね。ヒナイチくんが貰われていけば、もうここに居る必要は無いし。つまらなくなるけど、そろそろ海に戻ろうか……」
    「いやだ!!」
    思わず大声で叫んでしまった。目の前の蛸も、水槽の中の人魚も、隣にいたシーニャですらも目を丸くしている。慌てて口を噤んだが時すでに遅く、シーニャは大きな溜め息をついた。
    「うるさくてごめんなさい。ロナルドって言うんだけど、見ての通り、彼、あなたにご執心なのよ」
    「なッ、バ、ッ……!!」
    「欲しい欲しいってやかましくて。良ければ手酷くフッてくれると助かるんだけど」
    ちらちらとロナルドとシーニャを見比べていた蛸は、何事かを察したらしくははぁといやらしく口の端を吊り上げた。相手するのが面倒になったのかいとシーニャに尋ねその通りよと返されると、さも楽しそうに高らかに声を上げて笑った。屈託無く笑う蛸の表情にときめくとともに、シーニャの言い分があまりに酷くロナルドは憤慨した。言うに事欠いて面倒だからとは。
    「は、はぁ!?何だよ、何だよそれ!!大体お前が事情をちゃんと説明しないから……!」
    「あのね、あたしだってあんたが王子様じゃなきゃさっさと事情話して諦めて貰ってたわよ。でも王子の頼み事をあっさり切り捨てるなんて周りに知られてご覧なさい、うちの評判ガタ落ちよ!!」
    「えぇ?君、王子様なの」
    意外だとばかりに蛸の目が見開かれた。やっとそこで蛸と目が合う。じぃ、と不躾に頭から爪先までを舐めるように見つめられ、羞恥心に襲われる。
    「……いや確かに、言われてみれば王子様然としているねぇ」
    ずる、とぬめる足先がロナルドに向けて動く。見定めるような視線はそのままに、ふぅん、と蛸は目を細めてみせた。
    「こんな男前の王子様が、蛸にご執心だなんて。よっぽどの変わり者じゃないか」
    「そうなのよ。騎士団の隊長格なのに暇があればうちに通って、ずぅっとあなたにかぶりつきなのよ?」
    「はは、それは面白い。ねぇ、君」
    ひたり、とロナルドの頬に触れるものがあった。海の香りを強く漂わせるそれは、きゅ、と頬の肉を吸っては離し、吸っては離しを繰り返す。
    ロナルド君って言うんだね
    じっとりと濡れた声に名を呼ばれ、背筋がぞわぞわと戦慄いた。膜から滴り落ちる滴がその薄い唇を濡らし、細い首を濡らしている。
    「……え、ちょっとやだ、ドラルクちゃん、あなたまさか」
    ふふ、と蛸が笑う。嘘でしょうとシーニャは頭を抱え、水槽の中では両手で口を覆った人魚が驚いている。一体どういうことだと戸惑うロナルドの唇を、水気のある細い指がゆるゆるとなぞった。更に強い海の匂いに、頭がくらくらする。蛸の薄い唇が、誘うように開かれ舌が覗く。寒々しい肌の色とは異なる鮮烈な赤がそこにあった。
    「君は、いい暇つぶしをさせてくれるかい?」
    蛸は絡みつくような声でそう囁いた。




    「本当に困った王子様だね」
    猫足のバスタブに海水を張り、ロナルドはその中へと蛸を移動させる。とぷん、とバスタブに身を沈めた蛸は、その長い足を数本浴槽の縁から放り出した。悪くはないねと目を細めては、細い足先で丸みのある縁を撫ぜる。
    本人がそう決めてしまったのなら止めることは出来ないから、とシーニャは悩みに悩んだ末、ドラルクを手放すことを決めた。雑に扱うんじゃないわよ、とロナルドに叩きつけられた契約書には、走り書きでドラルクの生態における注意事項が記されていた。
    ひとつ、毎日新鮮な海水を用意し、交換すること
    ひとつ、その身体を長時間外気に晒さないこと
    ひとつ、愛玩用として接しないこと
    「ねえ、これ、守れるの?」
    共に契約書を覗き込んでいた蛸が、そっとロナルドの耳に囁いた。特にみっつめ。たっぷりと吐息を絡めた声が鼓膜を震わせるものだから、ロナルドは思わずその契約書を破ってしまい、しこたまシーニャに説教される羽目になった。元凶である蛸は実に愉しげに笑っており、再びシーニャが契約書を用意すると、そこには本契約書を汚損・破損した場合には速やかに対象を保護するものとする、という一文が追記されていた。
    「だって君、そのつもりだったんでしょう」
    「……そ、う、だった、けど」
    「今はもう、そうじゃないの?」
    「それは」
    違うよねぇ、とドラルクはバスタブから身を乗り出した。ざばりと海水が溢れ、床のタイルと裾を捲りあげたロナルドの足を濡らす。
    「水棲生物の引き取りは、水槽も込みになってるはずでしょ。実際ヒナイチくんは水槽ごと引き取られていったのに。どうして君は、こんな手狭なバスタブに私を押し込んだの?」
    ぴたぴたと頬に吸盤が吸い付く。濡れた目でじっと見つめられ、ロナルドはごくりと喉を鳴らした。
    「広い水槽じゃ、捕まえられないから?」
    更に身を乗り出す蛸が目前に迫る。ぷんと漂う潮の香りが強くなり、堪らずロナルドは波打つ外套膜の内側に手を突っ込んだ。ぬろぬろとまとわりつくようなその皮膜を持ち上げ、ベールの下の蛸の顔を顕にさせる。
    「……わかってんだろ」
    「アッハッハ、いや、まさか図星とはね。本当に困ったものだ」
    「困ってねぇくせに……ッ」
    「んふふ、あぁ拗ねないで拗ねないで。そんな可愛い顔されちゃ、何もかも全部許してあげたくなっちゃう」
    蛸は膜を持ち上げていたロナルドの手に顔を寄せると、ずるりと伸ばした舌でその手首を舐め上げた。皮膚の薄い、血管に近いそこをぬるつく舌が這い、濡れた皮膚にそっと歯を立てられる。蛸の目がちらりとロナルドの表情を見遣り、それが思った通りのものだったのだろう、くつくつと喉を鳴らしてドラルクが笑う。
    「愛玩用として接しちゃ駄目なんだよね?」
    でもそれは、と呟くドラルクの濡れた手のひらが、ロナルドの手に重ねられた。割り切れるように細い指先がロナルドの指の間に緩やかに滑り、きゅ、と握り込まれる。ひくりとロナルドの肩が震えたので、満足そうに蛸の唇が弧を描いた。
    「君が私に、っていうことだよねぇ」
    指を絡めさせたまま蛸はその手を頬から離すと、ゆるゆると下ろしていく。辿り着いた先は腹の下、太い足が分かれ始める股の部分だった。
    「異国にはね、蛸と海女とが絡み合う艶本があるそうだよ。大きな蛸が女体に絡み付いて、ねっとり可愛がっている絵があるんだって。だからね」
    柔らかく濡れた厚みのある皮膜の中へと手を引かれ、おい、とロナルドは声を上げた。上げたものの、その手を振り払うつもりはないらしい。睨むように縋るように真っ直ぐ目を見据えられ、その欲に濡れた瞳の獰猛さにドラルクの笑みが深くなる。
    「私が君を可愛がる分には、まぁ、契約違反にはならないんじゃないかな」
    あの日あの時目の当たりにした赤い舌が、べろりと目の前で伸ばされる。艶々に熟れたそれが、浴室の床でのたつく足が、しとどに濡れた指先が、落ちる吐息が見据える目が、ぎっちりとロナルドを捕らえて離さない。頭の片隅で一度だけ、ロナルドはシーニャに謝罪した。しかしそれはほんの一瞬のことで、次の瞬間には、ロナルドの意識の全ては蛸の手中に落とされてしまったのだった。
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