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    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
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    神田と弓場ちゃん冬の一幕

    #かんゆば
    driedBeancurd
    ##かんゆば

    てのひらに愛を 本部からの帰路、隣に歩く神田がスクールバッグを持ち換えた拍子に弓場は気づいた。
    「どうした」とかけた声に神田は「え?」と振り返る。
    「手袋だよ、どうした」
     言われて、ああ、と呟くように答えた神田が浮かべた十八歳の少年相応のはにかんだ笑みに弓場は慈しむように目を細めた。
     弓場が知る冬の神田の手を覆っていたレザーの手袋は小学生の時に亡き父へと贈った誕生日プレゼントだったが、タンスの肥やしにしていても仕方がないでしょ、品物はちゃんと使ってあげなきゃという母親の言葉のもと、サイズが合うようになったこともあって大事に使われていたものだった。
    「すみません、弓場さん。帯島に貸しちゃって」
    「帯島に?」
    「ええ。あいつ、朝会った時に手袋を学校に忘れたって言って手、こすってたんですよ。寒そうに真っ赤な指で」
     こんな風に、と神田も拝むみたいにして合わせた手のひらを上下させてみせる。
    「だから、本部のロッカーに予備があるからって貸してやったんです。あいつ、家まで自転車じゃないですか。さすがにしんどいかなって。ま、関節ひとつくらい余って笑ってましたけど」
     なるほどな、と弓場はその帯島の様子を思い浮かべて、柔らかな気配を口元に漂わせた。
    「それにしても予備たァ、雑な方便使いやがる。帯島みてェーな素直なやつでもなきゃ騙されねェ―ぞ?」
     弓場はぐいと乱暴に神田の片腕を引くと、口を使って自らの手を覆う手袋の片方を外して、寒気に赤みを帯びた男の手にそれをはめてやった。
    「弓場さん」
    「褒美だ。くれてやる」
    「えー、片方だけですか」
     甘ったれるように引き寄せられて近づいた弓場の耳元に、そっと神田は囁く。
    「こっちはこれで我慢しやがれ」
     手袋を与えられなかった、裸の神田の手に弓場は指を絡めるように握るとそのまま自分のコートのポケットへと招くようにして突っ込んだ。
    「……あったかいです」
    「俺はちっとばっか冷てェなァ」
     そう言いながら笑う弓場はそれでも手放すことなく握る手に力をこめ、神田もまた応えるようにその温かくて優しく強い手のひらにすがるように握り返した。
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    (https://twitter.com/palco87/status/1331039561263181824)
    合鍵を貰っておいて良かった、と居酒屋から何とかか彼の部屋まで連れて帰ってきた弓場をベッドに横たえて、水やタオル、万が一嘔吐した時のことを考えてバケツと新聞紙をその傍らに用意する。
    「すまねェ」
     一度も聞いたことのない弱々しい弓場の声に、神田は眉をひそめながらもベッドの近くに引き寄せた椅子に腰かける。
    「大丈夫ですか?」
    「こんなことなら手ェすべったフリでもしてグラスを倒すほうが利巧だったかもしんねェな」
    「?」
     意味が分からずきょとんとした顔の神田に、店に迷惑かけるしなァと、弓場は言い足し、
    「俺の隣に座ってた女が化粧直しに立った隙に、反対側に座ってた奴が一服盛った気配があってな」
    「は!?」
     話には聞いたことはあるがそれは犯罪では???と神田はまなこが落ちそうなくらいに目を剥いた。
    「胸倉掴んで鼻骨のひとつもへし折ってやっても良かったんだが、幹事の知り合いの諏訪さんたちの顔ォ潰すわけにも行かねェーからな。間違ったフリして俺が呑んじまえばいいやと思って、一気に空けちまったんだが、睡眠導入剤ってやつだっけ? 結構効くもんだな。未成年だってェーのは言ってあったから酒呑むわけにはいかね 966

    palco_WT

    MAIKING今宵星がきみに降りるから

    高三弓場ちゃ、神田や蔵内、王子たちが二年のまだ旧弓場隊の頃のクリスマス前後。
    弓場が大学進学が内定したあたりで王子は独立する予定。六頴館だからもう決まってるのかな……
    六頴館高校から本部へと、部下の神田と蔵内を共に向かう道の途中、弓場がふと足を止めたのは青果店の前だった。
    「神田、蔵内、おまえら、リンゴ好きか?」
    「……? 好きですよ」
    「ええ。王子がたまに淹れてくれるアップルティーを楽しみにするくらいには」
    「そうか。なら、キャラメリゼして……」
     何事か小さくつぶやいた弓場は少し考えてから、一見梨にも見えそうな薄い黄色の皮の林檎を幾つか買い求めた。
    「煮るんなら紅玉みてェな酸いリンゴのほうが味が際立つんだが、甘みが強いならキャラメルソースにも負けねェだろ」
     星の金貨、と書かれた林檎を掌に納めて、弓場は透明なレンズの奥の天鵞絨《ベルベット》のようなしっとりした夜の色でありながら品の良い光沢を備えた瞳を細めた。
    「星の金貨……? っていうと昔のドラマの?」
    「関係ねェよ。見た目が金貨みたいな淡い色だからそう名付けたって話だ。品種名はあおり15だったかな」
    「弓場さん、農学部にでも行くんですか」
    「ねえだろ、三大《サンダイ》には」
     何言ってんだと弓場は笑いかけた蔵内にひとつ手渡し、もうひとつには軽くキスをしてから、神田へと放り投げた。お手玉をするよ 720

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    「なんや、王子、どないしたん?」
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    「それなら、ええ」
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     生駒はいつもと変わらない表情で弓場の問いに答えた。
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