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    ナンデ

    @nanigawa43

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    何でも許せる人向け 雑食壁打ち

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    ナンデ

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    龍スタン︎︎ ♀
    結婚式のお義兄ちゃんと義妹の小話

    #龍スタン︎︎︎︎♀
    #龍スタ︎︎♀

    君は可愛い弟の恋人 貝殻に詰められた、紅を筆先にとる。あごを優しく掴み、筆先を唇の線に沿わす。体温で溶けた紅が彼女の唇の形に彩られていく。
    「……ふぅ」
    「終わった?」
    「全然っ!む、ずかしいよ、化粧って。普段こんなこと、しないんだしさあっ」
     息を止めて筆を操っているものだから、SAIの顔にはびっしり汗の玉が浮かんでいる。この日のために新調したジャケットを椅子にかけ、ピシリとのりのかかったシャツは腕捲りをしたせいで既に若干のシワがよっていた。
    「はあ〜……緊張する。はい、もう一回、目閉じて!」
    「ん」
     返事をしつつ、スタンリーはそのまま、目を開けていた。SAIの指が再びあごにかかり、数学とプログラミングの為になら踊るように繰られる指先が震えながら、義妹になろうとする女の唇に色をのせるためにぎこちなく動くのを、見ていた。
    「……目、閉じて」
    「んー」
    「あっ、喋んないでっ!ぶれるっ!」
     SAIの目が吊り上がる。スタンリーは笑うのを堪えながら、必死になっている義兄の顔を眺め続ける。
    「今からでもっ……遅くないからっ……プロに頼めないの……」
    「いーや、無理だね。俺が義兄さんにやってもらいたいから」
    「喋んないでっ!本当に……我儘な弟だけじゃなくて、いじわる義妹まで出来るなんて先が思いやられるよっ!」
     部屋の外では新郎が、愛しの妻と大事な兄が出てくるのを今か今かと待っている。スタンリーは目を閉じる。龍水の出番は今ではない。彼にはこの後、義兄が苦心して乗せた色を唇で奪う役目が待っている。
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    ナンデ

    DOODLE鰈→彼→カレー

    千司Webオンリー「賢者と旗手を結ぶ糸」展示小説です。
    二日目の彼 千空は研究所へ、司は外交へ。数年会わない日々が続いて、やがて二人の関係性が過去になっていく。笑顔を作って世界を周り、過ごす日々がつまらなかったかと言うとむしろ真逆で、科学王国時代からしても仲が深まったゲンと肩を寄せ合って思い出話をするのも、五年の月日の間に丸く大人しくなったゼノが幼馴染との再会をきっかけにまた口数が増えたのも、普段は煙草をくわえて静観しているのに四人の中で一番喧嘩っ早いスタンリーに慣れていくのも、世界を石に変え、全てを奪い、けれど確かに司の妹を助けた機械生物と明日の天気のことを話すのも、司は楽しかった。何もかも分からない中で命を懸けていた冒険の日々よりは穏やかで、旧時代に生きていたころよりは治安が悪く、でもあの頃よりずっと愛に溢れ、優しい世界のひとつひとつに触れていく毎日が楽しかった。けれど晴れた日に移動のために乗った車の中で十年でも二十年でもこうしていられると思った時……思ってしまった時に、司はふと「ああ、千空に会いたいな」と気が付いてしまったのだった。千空に会いたいな、十年、二十年、彼と会わない生活を続けて過去の人になってしまうのが、何よりも嫌だな。真っ白なテーブルクロスに落ちた、ワインの染みみたいにその気持ちは残って、徐々に広がっていく。
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