「なあ、俺はいつまでここにいりゃ良いんだ?」
「さあ、いつだろうね。私にもわからん」
そう言って溜め息を吐けば彼がやや申し訳なさそうに首を竦めた。
あわや未曾有の大惨事となるかと思われた強大な吸血鬼達の大進行は、あちらもこちらも誰一人として血を流すこともなく終わった。いや、終わったというよりは始まりもしなかったのだ。
やってきた吸血鬼たちは各々かなりの力を持つ者たちであったが、やたらとフレンドリーであった。誰一人としてこちらに敵意はなく、人にも物にも害を為そうとは一切しなかったのである。
気配を察知してからこっち、生きるか死ぬかの闘いを覚悟して緊張感に苛まれていた我々としてはありがたいと思うよりもふざけるなという気持ちである。いや、勿論のこと闘いたくはないのだけれど。しかし最初に彼らの気配を察知したのは私であり、必然的に尤も長時間頭を悩ませていたのも私であるので全くもって釈然としない。私の心労をなんだと思っているのだ。
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