Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    Satsuki

    短い話を書きます。
    @Satsuki_MDG

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💚 💜 💒 😘
    POIPOI 163

    Satsuki

    ☆quiet follow

    〇「あんまり見てると金取るぜ?」のセリフ、私も大好きです!!と言いたかっただけの文章。多少メタい。レトユリレト。

    #レトユリレト
    letoYuri-leto.

    きみを見つめる対価なら「あんまり見てんなよ、先生。あんた相手でもそろそろ金取るぜ」
     ユーリスの挑発的な言葉に、ベレトはピクッと体を揺らして驚きを表現した。表情が全く変わらないので、一部の生徒達から気味が悪いと遠巻きにされていることを気にしているのだろう。釣り針に魚がかかっても、同じように表情を変えずちょっとだけピクッと体を揺らした後に何食わぬ顔で釣り上げていることをユーリスは知っている。そして、釣り上げた後はすこし満足そうに見える顔をしていることも。
    「金か……」
     困ったように呟いて、ベレトはごそごそとポケットを探り始めた。いや半分冗談だったんだが……ユーリスは腕を組み、ひとまずベレトがどうする気なのか観察することにした。毎節の課題を手伝う代わりに授業を受けさせてもらっている身とはいえ、舐められるわけにはいかない。取れるものは取っておいてもいいし、受け取らずに何が交換条件を飲ませてもいい。例えば、次回の個別指導でのメニューをこちらから指定するとか、アビスに住む子供達に灰狼学級を開放して、簡単な計算や読み書きの授業をさせる、とか。
    (そもそもこいつ、いくらくらい持ってんだ? 元傭兵だし、払う気があるなら意外と貯め込んでんのかな)
     ユーリスはじっとベレトの様子を見つめる。当のベレトはというと、懐を探って落とし物の茶葉の小袋を取り出してみたり、ポケットに手を入れて何かのタネを見つけたりしてから、やっとベルトに下げている小さなポーチに手を入れた。
    「……すまない、今節はあとこれだけしかない」
     おずおずとユーリスの前に差し出された手に乗っていたのは、たったの130Gだった。
    「は? ……今節は、って、まだ初旬だぜ?」
    「前回の課題出撃で武器がたくさん壊れたのを直して補充もしたし、騎士団から人員も……」
    (そういう、学級に必要なもんって、担任が買うもんなのか……)
     そんな残りカスみたいなはした金をもらっても、自分の価値が下がるだけだ。ユーリスは生真面目なのか天然なのかわからないが、ユーリスから微妙に目線をずらして、彼を見ないようにしている担任教師に金を仕舞わせる。もしかしたらジェラルト殿の管理が厳しいのだろうか……
    「あー、金払えってのは冗談だから見ていいけどよ……」
    「ああ、でもさっき、きみにと思ってこれを買ったんだった」
    「えっ?」
     すっと差し出されたのは、新品の盤上遊戯だった。これを俺に? ユーリスが躊躇っていると、ベレトはぐいとすこし強引にも思える仕草でそれを押し付けてくる。プレゼント、というにはあまりに急だし、こんな娯楽品、残り130Gしか持っていない人間の買うようなものではない。
     つまりベレトは、ユーリスの気を引きたいがためにこれを購入したのだろう。ユーリスはその下心を鼻で笑った。
    「はっ……なるほどなあ、これを俺にね……何考えてんだかなあ? あんたも、結局さあ、……」
    「それで、アビスの子供達と遊んでやってくれ。きみが忙しければ、子供達にあげてしまえばいい……」
    「……へ?」
    「……やはり、金の方が入り用か?」
     ユーリスの反応にベレトは心なしか眉を下げ、持ち物の中に換金できるものが残っていたか考え始めた。
    「すまない、きみがいつもアビスのために奔走しているのを見て、自分も何か手を貸せたらと思ったんだが、……」
     今日だけで何度も頭を抱えさせれば気が済むのだろうか、この教師は。ユーリスはとことん彼のペースを乱してくるベレトに、片手で盤上遊戯を持ったまま溜息を吐く。
    「いいや、嬉しいよ先生。ありがとな。……でも一応俺がもらったもんだし、最初に一度くらい対戦してえな……あんたと」
    「……! では、この後お茶でもどうだ?」
    「そうこなくっちゃ! 負けねえぞ」
    「だけど、俺はルールをひとつしか知らないんだ……片方が山賊になる、……」
    「ははっ、あんたらしいな」
     貴族連中が楽しむお綺麗なルールではなく、庶民や傭兵向けのちょっと下劣で野蛮な方を知っているところが気に入った。ユーリスはベレトと並んで歩き出しながら、その青い瞳が自分を見ていることに安堵する。表情のほとんど動かないベレトだが、その目はどこまでも優しくユーリスを見つめている。その安堵と優しさが別の感情をはらむようになるには、まだ時間がかかるようだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖💖💘☺💞☺☺☺☺💞💞💞💞💞💞💞💞💞💞👏👏👏👏👏👏👏💗💗💗💗💗💗💗
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    Satsuki

    DOODLE〇「あんまり見てると金取るぜ?」のセリフ、私も大好きです!!と言いたかっただけの文章。多少メタい。レトユリレト。
    きみを見つめる対価なら「あんまり見てんなよ、先生。あんた相手でもそろそろ金取るぜ」
     ユーリスの挑発的な言葉に、ベレトはピクッと体を揺らして驚きを表現した。表情が全く変わらないので、一部の生徒達から気味が悪いと遠巻きにされていることを気にしているのだろう。釣り針に魚がかかっても、同じように表情を変えずちょっとだけピクッと体を揺らした後に何食わぬ顔で釣り上げていることをユーリスは知っている。そして、釣り上げた後はすこし満足そうに見える顔をしていることも。
    「金か……」
     困ったように呟いて、ベレトはごそごそとポケットを探り始めた。いや半分冗談だったんだが……ユーリスは腕を組み、ひとまずベレトがどうする気なのか観察することにした。毎節の課題を手伝う代わりに授業を受けさせてもらっている身とはいえ、舐められるわけにはいかない。取れるものは取っておいてもいいし、受け取らずに何が交換条件を飲ませてもいい。例えば、次回の個別指導でのメニューをこちらから指定するとか、アビスに住む子供達に灰狼学級を開放して、簡単な計算や読み書きの授業をさせる、とか。
    1780

    recommended works

    Satsuki

    BLANK全然明記していなかったのですが当方が書いている捕虜フェリは全てざじさん(@zazi_333)の素敵な捕虜フェリのファンフィクです。
    また書きたいところだけ書きました。シルヴァンにおいたをする悪い捕虜フェリです。全裸だけどえっちではないです。多分この後えっちなお仕置きをされる。されてほしい。
    ぼんやりと、冬の朝日が雪の上を照らし出すように意識を取り戻したのは幸運だった。フェリクスはその身を包んでいる温もりが、毛布ではなく湯によるものだと知覚したあとも、寝息を装い瞼を閉じたままでいる。ちゃぷ、と水面を揺らして、背後にいる誰かがフェリクスの肩に湯をかけている。その誰かの裸の胸板がフェリクスのぐったりと力の抜けた背を受け止めて、首を肩に凭れ掛からせている。小さく聞こえる機嫌のよさそうな鼻歌。フェリクスはまだぼんやりとする頭で薄っすらと目を開き、蝋燭の炎にちらちらと揺れる湯船を見た。
     そこから先は、ほぼ脊髄反射で体が動いたと言って良かった。
     まず最初に、背後の人間以外、周囲に人の気配が感じられなかったことがフェリクスをそうさせたと言える。それに、狭い浴槽の中に大の男が二人詰め込まれていたことで、足が不自由なフェリクスでも相手の足の間で体を支えることができた。なにより相手が油断しきっていたことが勝因だったが、彼も数時間にわたっての性交に疲労していたのだろう。だからフェリクスは、瞬時に身を翻して彼の濡れた赤い髪を掴み、渾身の力を込めて浴槽の縁に頭を叩きつけてやることができた。
    1988