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    Satsuki

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    Satsuki

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    無双のレトユリ。ジェラルト&ベレトの支援会話を擦った結果。220821(220809)

    「ふうん、なかなか様になっちゃあいるが……着心地はどうだ?」
     ユーリスの言葉に、ベレトは自分の格好をしげしげと見下ろした。この士官学校の礼服は、ユーリスが数年前に使用していたものだという。父であるジェラルトがかつて騎士団長を務めていた、セイロス騎士団。その本拠地であるガルグ=マク大修道院に併設されている士官学校に、自分が入学する道もあったのかもしれない。以前そんな話を聞かせた時に、じゃあ気分だけでも味わってみるか、なんて笑っていたユーリスが、わざわざ自分の服を持って来てくれたのだ。
    「少し、きついな……それに、動きがとりにくい」
    「ま、礼服は戦闘向けじゃねえしな」
     言いながら、ユーリスは両手を伸ばしてベレトの首元を緩めてやる。肩や背中も、ちょっと、いや結構な具合で窮屈そうだ。ユーリスが十代の頃に着ていたものなのだ、仕方がないだろう。かくいう本人も当時の級長服を身に付けてみているのだが、やはりこの戦争のせいで筋肉がつき、体格が変わったらしく、寸法が合わなくなっている。
    「その服は動きやすいのか?」
    「礼服よりかはな。これは級長専用の服でな、白いマントが目印さ。級長ってのは、学級で一番偉い奴のことで、戦闘でも指揮をしたり、生徒たちを守ったりする役目があるんだ」
    「なるほど、きみは適任だな」
    「……ふっ、まあ、灰狼学級じゃそうかもな」
     制服を身に付けたユーリスは、結わえた髪を横に長し、白いブーツを履いた足を組んで寝台に座る。成熟した大人の体で士官学校の制服を身に付けている姿は、ちぐはぐな魅力が倒錯的だった。もちろんベレトにそんなことは分からないが、普段と違う格好である、というところがきちんと魅力的に見えてはいるはずだ。
    「よし、それじゃあ……」
    「うん? 気が済んだのか?」
    「ちょっとジェラルトに見せて来る」
    「待て、それはやめとけ。その恰好で外には出るな」
    「いけないのか。何故だ?」
    「……学生が基地の中を歩いてたら、驚くやつがいるだろ? 次の宴の時にでも、余興でもう一度着せてやるから、その時にとっとけよ」
    「そうか……」
     声の調子も表情もろくに変わりはしないが、ベレトは少々残念そうに肩を落とした。そんな格好で外を歩いたら、青獅子学級の奴らに面白がられて囲まれるかもしれない。彼らと楽しそうに話すベレトを想像して、ユーリスは少しだけ唇を曲げた。
    「ほら、脱がしてやるからこっちに来いよ」
    「色々とありがとう、ユーリス」
    「いいってことよ……いや、ひとつ貸しにしとくかな。……もしも俺とあんたが一緒に入学してたら、学級はどこだったろうな。騎士団長の息子なら、同じ青獅子学級だったかも」
    「そうしたら、きみが級長か?」
    「ははっ、俺は青獅子学級じゃ普通の生徒だったよ……けど、灰狼学級じゃ級長だ、級長の言うことは絶対だからな。あんた、俺の言うこと聞かなきゃならなかったぜ」
    「ふふ……例えば、どんな風に?」
    「そうだなあ……」
     ユーリスは、懐かしくもあり、痛みでもある士官学校のことを思い出し、目を眇める。もしも士官学校でベレトと出会っていたら、互いにどんな道を歩むことになっていただろう。彼なら、今のように自分の手助けをしてくれただろうか。なんて、ありもしなかった未来のことを、考えながら。
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    Satsuki

    DOODLE猫フェリクスは可愛いというだけの話。捕虜設定はざじさん(@zazi_333)の素敵な捕虜フェリ創作からお借りしております。そろそろお借りしすぎなので自重します。
    フェリクスは猫だった。耳から尻尾にかけては月夜の森の中のような柔らかい黒色で、喉やふわふわの腹側は雪のように真っ白い猫だった。いつだっていかにも猫らしくぴんと尻尾を立てて、キッと周りを睨みつけて歩いた。天気の良い日は池のほとりで魚を眺めたり、木箱の上で日に当たったりして過ごす。気が向くと青獅子の学級でディミトリと授業を聞き、訓練場で生徒たちが剣や槍を振るったり、弓を引いたりする様を眺めていた。
     孤高で、気難しい猫なのに、生徒たちはフェリクスのことを可愛がる。アッシュはフェリクスのために魚の骨と肉とを分けてやり、メルセデスは柔らかな膝をフェリクスに貸したがった。アネットは温室でこっそり歌を聞かせてやり、ドゥドゥーはフェリクスが歌を聞いたまま、柔らかく盛った土の上で眠っているのをそっとしておいてやる。イングリットは食堂の机の下で、そっと自分の肉をフェリクスに分けてやった。ディミトリが真似をして肉を分けてやろうとすると、フェリクスはつんとして絶対に手を付けない。彼はディミトリが自分の食事を無感情に飲み下すのを、いつも気に入らな気に見つめていた。
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