ある「元」光の戦士の6.01その7「うま……」
フィーネはマーモットステーキにかぶりつき、ミントラッシーをのどに流し込む。つけあわせのキノコのソテーも平らげて、ふーっ、とひと息ついて食べ終える。
「こんなにたくさん食べたのはひさびさだよ」
「相変わらずいい食べっぷりだね。でも、昔の君は倍は食べていたように思うけれど」
カーラインカフェのミューヌが食後のお茶を出してくれる。程よい温かさとすっきりした香りが心地よい。
「これってイシュガルドティー?良いの、こんな高級なものを」
ミューヌも自分の分のお茶をテーブルの上に置き、向かいの席に腰掛ける。
「そこまで高級なものではないよ。イシュガルドからは来客も多いし、手に入れる機会が多いんだ」
ふーん、とうなずきつつ再びお茶をすする。
「グリダニア産のお茶って、見たことないんだけど。ないのかな」
「あるにはあるよ。でも流通している茶葉はザナラーンかクルザスのものばかりだね。こっちの方が味は良いし、このカフェではどちらかしか出していないな」
「そうなんだ」
グリダニアは森のある国なのだから、植物性の食べ物は多いのかと思っていた。
「星を救った話を聞いているよ。また随分と活躍したみたいだね。君が初めてここに来たときのことが懐かしいよ」
「私は思い出したくないな」
「水びたしだったものね」
「その話はやめよう。私の心が傷つく」
「意外と繊細なところも変わらないね」
「やめてください……」
初めてグリダニアに来た日、冒険者ギルドに登録しようとカーラインカフェを目指していたら足を滑らせ川に落ちた。
「そうそう、すごく申し訳無さそうにしていた割には寝相が悪くて貸した着替えに角が刺さって穴を開けて」
「え?ミューヌさん私のこと嫌いかな?そろそろ泣くよ?」
「枕と床と壁と柱の修繕費」
「すみません次来た時に必ず払います今日は許してください」
様々な意味でミューヌには頭が上がらない。ちなみにだが寝相が悪くて穴を開けた修繕費である。
くっくと押し殺したように笑うと、ミューヌもお茶を口に含む。
「直近は君の新しい噂が途絶えていたのだけど。一体どこにいたんだい?」
フィーネは重い口を開く。ひらたくいうと、クリスタリウムに引きこもっている、と。
「……そうか。そういう時期も、必要だよね」
ミューヌの察しの良さは、ありがたくも申し訳なく感じる。
「それで、グリダニアには食料を求めて来たんだね。今日は泊まっていかないのかい?」
「うん、このまま黒衣森まで行って、食材を採って帰ろうと思っているよ。意外とお店で売ってなかったんだもの」
主食になりそうな鶏肉や鶏卵は手に入ったが、野菜となると自分で採りに行くしかなさそうだ。あとはイシュガルド産のミネラルウォーターが手に入ったのも嬉しい。
「残念だな……時間ができたら、またゆっくりしていってくれよ」
「うん、ありがとう」
~おまけ~
・グリダニアの料理屋で買える料理
マーモットステーキ IL5 9ギル
素材がリムサ・ロミンサの調理師ギルドで買うかザナラーンで採集可能。
グリダニア周辺だけでは調達できないのでおそらく輸入品。
キノコのソテー IL7 10ギル
黒衣森で採集できるキノコ(シャンテレール)をバターで焼くことで製作可能。遂にフィーネさんの自炊が始まる。
ミントラッシー IL10 11ギル
黒衣森で採集できるガラゴミントと山羊乳で製作可能。
山羊乳はクリスタリウムでも購入可能だ。
・ミューヌさんが出してくれたお茶
イシュガルドティー
クルザス茶葉、ヤクの乳、メープルシュガーで作ったお茶。
ちなみに黒衣森では茶葉は存在しない。意外とお茶が自前で調達できない国グリダニア。
他の茶葉はザナラーン茶葉がある。