domなまろくんとSwitchな水心子君の話「ねえ、どうして僕から離れようとするの?」
「別に僕はっ…」
掴まれてる腕が痛い。どうしてこうなったんだっけ。水心子と清麿が出会ったのはマッチングアプリがきっかけだった。そのマッチングアプリな特殊なもので男女以外の性、いわゆる第三の性を持つものが番を探すために作られたものだった。
第三の性、それはダイナミクス性と呼ばれていてdom、Sub、Switch、Normalの4つに分類されている。水心子のダイナミクス性は幸か不幸かSwitchでいわゆるどっちつかずだった。Switchは本人次第によってはdomにもSubにもなれるらしい。水心子がマッチングアプリに登録したのは自分と同じ性を持つ人間の話を聞きたかったからだ。そしてあわよくば友人になれたらとそう水心子は考えていた。ただSwitchは希少らしく中にはダイナミクス性を忌避してる者もいるわけで。そんな時だった。domの清麿と出会ったのは。
「本当に僕でいいの?同じSwitchを探してたんだよね?」
「あぁ、だがなかなか見つからなくてな、Switchは希少らしくて、後は自らの性を疎んじて隠しているというものも中にはいるらしくてな。」
「まあ、確かにそれに関しては否定しないよ。それで水心子は僕とどうなりたいの?番になりたいの?」
「つ、番?それは同性同士でも可能なことなのか。」
「うん。domからSubにcolor、ええと首輪を送ってSubがそれを了承すればパートナー成立だよ」
「いわゆる結婚指輪みたいなものか。」
「まあそんなところだね。それで君の望みは?」
にこにこしながら問いかけてくる清麿に水心子は答えた。それは清麿の思いもよらないもので。おそらくあとにも先にも水心子のように答えてくれる人間はいないだろう。それは彼が持つ性からくるものなのか彼自身の性格なのかは分からないけれど差し出された手を拒む理由は清麿にはなかった。
「友達になって欲しい」
それが水心子が清麿にして欲しいことだった。番になって欲しいと言われたことはあっても友人になって欲しいと言われたのは初めてで。だからこそ彼に惹かれたのかもしれない。逢瀬を重ねていくにつれ清麿の中のdom性は知らず成長を続けていった。
「水心子はすごいね。」
「あぁ、それは僕がやるから」
「大好きだよ、水心子」
domの性質は人によってそれぞれだ。甘やかしたいというのもあれば支配したいというのもある。清麿の性質は前者でその性質は悪意を感じさせるものではなかった。水心子に付けられた自分以外のdomの匂いに気づくまでは。
「ねえ、水心子、その匂い誰?」
「清麿?」
いつもと同じように聞いたはずなのに水心子は何故か怯えていて。それが清麿のdomの性質である支配したいという欲求が目覚めたのは。怖がられていると思った瞬間清麿は慌てて我に返った。友人を支配したいなんて間違っている。それなのに清麿の中の欲望はとどまるどころかむしろ広がる一方で。それでもなお清麿は水心子と会うことを辞めなかった。表面上は変わらず。ただそれが良くなかった。気がつけば清麿は水心子を監禁していた。
「清麿、これはどういうことだ?」
「ごめんね、水心子。僕は友達じゃ我慢できないみたいなんだ。だからねえ、『見せて?』」
そうコマンドを言うと水心子の心とは裏腹に身体は清麿のコマンドを実行する。全裸になって怯える水心子に清麿はそっと体のラインをなぞると彼の秘められた場所が見えるように再び命令する。そうして顕になった水心子の秘部を見て清麿は確信を得る。
「ここ、パクパクしてるね。僕、水心子はまだなのかなあって思ってたんだけど」
清麿の問いかけに水心子は答えない。無理やり言わせるのはしたくはなかったが清麿はこの時既にdomの支配したいという欲求に飲まれていた。秘部をなぞりながら清麿は水心子に命令する。
『教えて?君を汚した相手は誰?』
「あ…あ、大学の非常勤講師」
「名前は?」
「南海太郎朝尊」
なるほど。講師なら逆らうことは出来ない。相手がdomなら尚更だ。Switchとはいえdomから命令されれば本人の意志とは関係なくSubに意識が切り替わってしまう。真面目な水心子の事だ。逆らうことなどできなかったのだろう。水心子は優しいから。そう清麿は結論づけて水心子に次の命令をする。その命令は。
「僕に教えて欲しいな、君と彼がどんなことをしたのか。どんなふうに彼は君を汚したのか?教えて、水心子。僕は君のことならなんでも知っておきたいんだ。たとえそれがこういうことであってもね?」