2019.12.10
周りがおかしくなった。
僕はおかしくない。おかしいのは皆だ。
だって僕は、男の子だもの。
女の子なんかじゃない。
ハリエットって呼ばないで!
僕はハリーだ!
ハリー・ポッターだ!!
気付いたら、時間が巻き戻っていた。
ダーズリー家の狭い物置部屋に押し込められた状態で目覚めた僕は、ひっそりと涙を流しながらも歓喜した。
大切な人達を大勢亡くして、沢山の犠牲を払って手に入れた筈の平和は、無かったことにされた。それ自体はとても悲しいことだ。
しかし喜ぶに決まっているだろう。死んでしまった人を助けられる、最大のチャンスがやってきたのだから。今でも後悔しているのだ。誰も彼もが、世界の安息の為に戦い、散っていった。一部では、単に邪魔だからという理由で無残に殺された人もいる。
僕は、そんな人達を救えるかもしれない。
…だけど、世界は僕に優しくない。
ハリエット。
ハリエット。
ハリエット。
ハリエットって誰なの。
僕?僕じゃない。
僕はハリーだ。
嫌だよ叔母さん、スカートなんか履きたくない。
新品でも女の子のなんか着たくないよ。
服はダドリーのでいいよ、いつもそうだったでしょう?
なんで変な顔するの。
僕は男の子だよ?
ハリエットって、誰?
ハリーって呼んでよ。
お前って呼んでもいいから、僕を呼んでよ。
ハリエットって、呼ばないで。
え?病院?
僕どこも悪くないよ。
怪我してないよ。
病気なんかじゃないよ。
叔父さん?
叔母さん?
ダドリー?
どうして?
どうして?
出して!出して出して出して!
ここから出して!
僕はやらなきゃいけないことがあるんだ!
こんな所にいる暇はないんだ!
あなたは誰?
なんで僕を閉じ込めるの?
白衣を着た人達に真っ白な場所へと連れて来られた。
ここはどこ?普通の病院じゃない気がする。
どこもかしこも白くて、目も頭も痛くなりそうだ。
また診察するって白衣の人が言った。
お話ししようって言ってきた。話すことなんか何もないのに。
叔父さんと叔母さんはどこ行ったの?
僕を置いて帰ったの?
ハリエットって呼ばないでよ!
みんなみんな僕を女の子扱いなんかして!
おかしいよ!僕は変じゃないよ!
だって僕は男だ!ハリエットなんかじゃないッ!!
暴れても小さな体はすぐに押さえつけられて、注射を打たれた。凄く眠たくなる。
「起きたらまたお話ししようね」って頭を撫でられた。そんなことより帰してほしいのに。
訳が分からなくて、1ヶ月くらい経ってから僕はだんまりを決めた。
だって僕をここから出す気がないように見えるんだもん。訴えても無理なことがあるって、僕は過去に学んでいる。
ジッと耐えれば出られるのかな。あの時みたいに、ホグワーツから手紙が来るまで、待つしかないのかな。
ああ、つまんない。こんなことなら魔法の練習をしたいのに、監視カメラがあって何もできやしない。壊したら人がすっ飛んでくるって、ちょっと前に経験した。
「僕、女の子じゃないのに。ハリエットじゃないのに」
なんで皆そう呼ぶんだろう。
胸だってないし、トイレだって立ってしているんだよ。
顔はジェームズにそっくりだって言われてきたのに、どこが女の子なの。鏡を見せたって、全部嘘じゃないか。あんなの僕じゃない。
髪は黒くても、目は緑でも、リリー母さんみたいな女の子は僕じゃない。
「ハリーって、呼んでよ」
「いくらでも呼んでやるさ、ハリー・ポッター」
「っ……!」
体育座りで俯いていた顔をバッと上げる。
この声は聞いたことがある。忘れもしない、彼の声だ。
ああ、なんで、なんで…。
「リドル…」
あの日、冷たい地下で対面した容姿と、一寸も違わない佇まいで彼はいた。
ヴォルデモートの分霊箱、日記のトム・リドル。なんせ彼はご丁寧にソレを手に持っているのだ、間違いない。
夢?夢なら何故よりによって彼なのか。
いや、いっそ夢でもいい。僕が僕であることを確かめさせてほしい。
「ホントにリドル…?僕が……僕を、知っているリドルなの?」
すると彼はその問いを嘲笑うかのようにクッと口角を持ち上げ、遠慮なく僕に近付いてくる。そして、そっと僕の目の前で片膝をついた。
「君と僕は、秘密の部屋で殺し合った仲だろう?生き残った男の子の、ハリー・ポッター」
名を呼ばれた瞬間、全身の血が震え、ブワリと涙が溢れ出る。
嬉しいと、体が興奮している。相手は宿敵なのに、彼に呼ばれて僕は喜んでいた。
「リドル、リドル、リドルっ」
思わず勢いよく抱きついてしまった僕を、リドルは予想してましたとでも言うように自然と受け止めた。
「泣くほど嬉しいかい?僕に殺されるとは思わないと?」
「うるさい…。やっぱり、リドルは僕が憎いの?今から拷問にでも掛けるつもり?」
「まさか。今夜は迎えに来ただけさ。君がマグルの家にいないもんだから、少し調べてみたんだよ」
「ねえ連れてって…お願い」
こんな所にいたくない。
ここでは何もできない。
ここには何もない。
「……いいさ、何処へでも行こう」
設定ネタ
「日記リドル成り代わり」
ハリポタ知識があるだけの男
だけど性格は元からリドル寄りで、共感を覚えている
人殺しとかはするつもりもないが、やれと言われれば躊躇なくやれるタイプ。目的のためなら手段は選ばず、まさにスリザリン思考
原作では、日記はハリーと会話する機会がとても少ないので、それではもったいないと会いに行く
すると様子がどうにもおかしくて、「『彼女』は『彼』の二週目なのだ」と察する
「君はハリーだ。生き残った男の子のハリー・ポッター。あの薄暗い地下で、僕と君は殺し合った仲だろう?忘れもしないさ」と、あたかも自分が日記リドルの二週目であるかのように囁き、ハリーの心を守った
「二週目ハリー」
体は女の子で、名前もハリエット
身も心もボロボロの状態で一度死んでいる。
時間が戻ったと絶望していれば、追い討ちをかけるように「お前は女だの、名前はハリーでなくハリエットだの」と自分を否定されておかしくなる
「自分は男だ。名前はハリーだ」と主張するので、周りは性同一性障害だと考えている。だが時代的に認識があまりないので、単に気味が悪いと虐められる
リドルに存在を肯定されて、宿敵だとわかっていても依存する。だけど今のリドルに敵意は見られないので、まあいいかと楽観視
死ぬなら死ぬで、苦しくないよう殺してほしい
ホグワーツに行ってもかなり引っ込み思案。スリザリンに入る
コンパートメントで出会ったロンやハーマイオニーも自分を覚えておらず女の子扱いするし、かつての友人がそうなのが耐えきれず別の場所に行こうとする
マルフォイもウザいけど、態度が軟化している様子だから放置
リドルに髪を伸ばすよう言われたから長髪
謎の魔法であっという間にストレートにされて、いつも櫛で梳かれる。
最初は反抗したが「僕は君が女だからこうしているのではない。ハリーだからしているんだ。君だから、やりたいんだよ。僕の楽しみを奪わないでくれるかい?まあ、どうしても嫌ならやめるけど」と自分を受け入れてくれる言葉を言われたので大人しくなった
一方リドルは、自分が生き残る為ならなんでもする気がある
淡白そうに見えて生に執着しており、ハリーを手に入れれば死なないとすら思っている
原作通りに動くつもりはない。ジワジワと流れを壊して、日記という分霊箱を誰かに知らせずにヴォルデモートのみを滅する計画
己に主人公が味方するなら必ず上手くいくはずだと打算済み
ハリーを大事にしているのは死なれたら困るから
優しくはするがどこか冷たい。でもハリーはそれで満足しているようだし別にいいだろうって状態