いつかの君へ 嫌いなヤツがいる。オレん家にいる辛気臭ぇ野郎のことだ。
同情はしてるつもりだ。オレだって、おじさんとおばさん、シオン姉ちゃんがいなくなっちまったことはメチャクチャ悲しいし、それがオレの父ちゃん、母ちゃんだったらと思うとぞっとする。その状況にあるあいつの、レンのことは、かわいそうだしどうにかしてやりたいって、思ってるつもりだ。
けど、あいつはいつまでも暗い顔で、それは仕方ねぇんだけどさ、オレや父ちゃんや母ちゃんやウィルがあいつのためにしてやってることを、その顔のまんまで突っぱねる。こっちが手を差し伸べてやってんのに、はたき落として、そんで自分がこの世で一番不幸な存在だって顔してる。ふざけてんじゃねえぞ、オレはともかく、ウィルの悲しそうな顔が見えねぇのか。お前は確かに不幸に遭ったけど、いま、お前の行動が目の前の、生きてる人間を悲しい気持ちにさせてるって、お前は気付かねえのかよ。
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