【ココイヌWebオンリー展示】小説「誕生日は嫌いだ」誕生日は嫌いだ
ぼやけた街灯の足元に座り込み、携帯で時間を確認した。
――二十三時五十二分。
着信とメールの履歴が溜まっているが、確認せずに携帯を閉じた。
「チッ」
日付を跨ぐまで喧嘩をしていたかったのに。雑魚相手だったから中途半端な時間に終わってしまった。今から他の相手を探すのも面倒だ。左手が痛くて見てみると、手の甲の皮がベロリと剥けていた。感覚がない。右手も突き指したらしく、人差し指がズキズキと痛む。
曇った夜空をぼーっと眺め、斜め前の自販機に視線を移す。缶コーヒーの付近に蛾が一匹たかっていた。飲み物を買うにも金を持ってないので、俺はただ蛾を目で追っていた。
ポケットに突っ込んだ携帯が振動する。相手は分かっているが、俺は出ない。
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