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    mizuho_hidaka

    @mizuho_hidaka

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    mizuho_hidaka

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    #ココイヌ百物語」に参加させて頂きました。
    使用お題ワード「夜の海」。
    9巻幹部軸に続く10代目黒龍時代の話。
    タイトル着想の解説はラストに。

    #ココイヌ
    cocoInu

    Tune dock seatune dock sea

    よう。急に呼び出しておいたってのに、遅れちまって悪かったな。
    詫びも兼ねてのコーヒーだ。
    ちょっと時間がかかるから、それ飲みながら話に付き合ってくれ。

    お前、黒龍に入って三ヶ月くらいだっけ。
    最近どんどん人数増えてるんだよな。悪いことじゃねぇんだけど、管理がちょっと大変になってきてるんだ。
    だからオレの親衛隊、少し人数増やそうと思ってな。
    見どころのある奴を抜き打ちでテストしてるんだ。
    親衛隊は腕っ節より何より、頭が回ってオレの指示に完璧に従う奴っていうのが絶対条件なんだが、それだけじゃ手が回らなくてな。
    オレはバイク持ってねぇからよくわかんねぇんだけど、お前、ライテクってーの? そこら辺の奴らより上手いって親衛隊の奴らに聞いたぜ。チューニングとかも。
    連絡は携帯で充分なんだが、ブツの受け渡しはどうしても人手が必要になるからな。腕が良くて信用できる手足が欲しいと思ってたところだったんだ。
    まあ勿論、テストさせてもらうけど。
    此処から埠頭まで制限時間内に到着してくれりゃあ合格だ。簡単だろ? ああ、悪いが今すぐじゃねぇんだよ。時間かかるっつったろ。向こうの準備が遅れてるみたいでな。オレの携帯に連絡が入るまでまだ動かないでくれ。
    ……手持ち無沙汰だな。緊張ほぐすついでに、面白い話を聞かせてやろうか。暇潰しにはなるだろうし。

    オレの知り合いから聞いた話だ。
    オカルト好きの先輩に肝試しするぞって命令されて、仕方なく深夜のドライブに付き合ったことがあるんだと。
    ……いや、海岸線じゃなくて山の話。やっぱよくある怪談だよな。まあまだ連絡来ねーし、続けるぞ。
    少し急なカーブで、多発ってほどじゃねぇけど事故の起こりやすい場所で、夜中にそこを通ると真っ白な影がぼんやり立ってるんだってさ。
    で、ソイツと先輩達、肝試しに参加した全員がバイク持ってたから、それぞれ自分のバイクに乗ってその心霊スポットまで真夜中に行ったらしい。
    ……真夏なのに珍しく涼しくて、良いドライブ日和だなんて当初の目的もほとんど忘れてカーブに差し掛かったとき、先頭を走ってた先輩が急停車した。
    深夜で対向車線に車がいなかったから、何とか全員事故らずに停まれたけど「急になんだよ!」って皆がキレ出す中、先頭を走ってた奴が青ざめた顔で言ったんだ。
    「白い人影が突然出てきたから避けようとして止まったのに、誰もいない」って。
    恐る恐る全員でカーブに向かって歩いて行っても、当然誰もいないし何もない。でも良く見たら、ガードレールが壊れてロープだけになってたんだ。
    直前に事故でもあったのか、壊れかけてたのを修理しようとしてるところだったのかわかんねぇけど、万が一曲がり切れなかったら確実にヤバいことになってた。
    流石に全員青くなって、でもビビってるとは思われたくなかったから「帰りはのんびり行こうぜ」「幽霊が『ここは危ねえ』って教えてくれたんじゃねぇの」「マジか。良い奴だな幽霊」みたいに言い合って、それぞれのバイクに戻って行ったんだ。
    一番年下だったオレの知り合いも、内心しばらくは安全運転しようと思いながら自分の単車にエンジンをかけた。
    その瞬間、耳元で声がした。
    「落ちれば良かったのに」
    ……肝試しに参加した奴は全員バイク持ちで、二ケツで参加した奴は誰もいなかった。後ろを振り返っても誰もいない。でも確かに耳元で、男とも女ともつかない声がはっきりと聞こえた。
    今度こそ血の気の引いたソイツは震える手で、それでも何とか先輩の後ろにぴったりついて帰った。でもソイツはバイクに乗るのもやめたし、結局族も抜けた。

    ……聞こえてるか? ちょっと長く話し過ぎちまったかな。
    怪談は結末まで喋らねぇと、落ち着かないタチでね。
    ガキの頃、遠足でよくイヌピーに聞かせたんだ。怖い話苦手なくせに、聞きたがりなんだよ。強がってたけど、遠足からの帰り道とか「久々に手繋ごうぜ」とか言って来るんだぜ。可愛いよな。
    あ、失敗した。冥土の土産にイヌピーの顔を思い浮かべて良いのはオレだけなのに。よりによってお前なんかにこんな話したの、マジでオレとしたことが失敗した。
    「黒龍には入りたいけど、火傷顔の奴の下にはつきたくない」だっけ。何も知らねぇくせに、よくそんなこと言えたモンだよな。オマエのこの言い草を報告してきた親衛隊の奴の方が、口にしただけで殺されるんじゃないかって真っ青通り越して白い顔してたくらいだぜ。
    おい、まだトぶんじゃねぇぞ。そう、バイクに乗れ。エンジンかけろ。真っ直ぐ行けば埠頭だ。
    ……照明がない? 大丈夫、大丈夫。真っ直ぐで一直線の道がそこにあるだけだ。ちょっと暗くて何も見えないだけ。波の音が聞こえるのは、此処が海岸線だからだ。真っ直ぐ波の音が聞こえる方に、アクセル入れて加速するだけだ。ブレーキは使わなくて良い。誰もいないし何の障害物もないからな。
    ほら、テスト開始だ。波の聞こえる方へ全速力で直進しろ。合格すれば幹部だ。オマエなら楽勝だろ。

    ……じゃあな。真っ直ぐ真っ直ぐ……暗い海に落ちて、出来れば二度と浮かび上がってこないでくれると手間が省ける。



    「あ、もしもしイヌピー? 待たせて悪い。取引終わったから、迎え頼む。……ごめんって。そっちの特攻隊の精鋭とウチの親衛隊と合流したら美味いメシ食わせてやっからさ。何が良い? オレ、寿司の気分なんだけど。あ、イヌピーも? 珍しく気が合ったな。海に来たら魚食いたくなるよなー。じゃ、待ってるぜ」




    読まなくても良いタイトル着想及び解説。

    森博嗣が好きなので、同じくお好きな方は一発でわかったかと思います。
    「歌の終わりは海 Song End Sea」。
    (多少強引ですが)カタカナで英語を読み、音を当てると尊厳死。
    なので(物凄く強引に)中毒死を当ててみました。
    単独事故でも考えたのですが、turn dockまでしか出ませんでした。

    普段は鍵で引きこもってますが、感想を頂けたり話しかけて頂けたら嬉しいです。
    ここまで読んで頂きありがとうございました!
    (英語関連は「詩的私的ジャック」の終盤も良いですよね……)
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