全て流して、彼方まで【西南】数分前までの晴天が嘘のように、土砂降りの雨が降ってきた。そういえば、あいつは傘を持って行っただろうか。慌てて洗濯物を取り込んだ後で、ウエスターはふとそんなことを考えた。
まああいつはしっかりしているし大丈夫か、と思い直してから数十分ほど。扉が開いた音に気付いて出迎えてみれば、そこにはずぶ濡れのサウラーが立っていた。
「驚いたよ。以前本で読んだことはあったけど、雨というのは突然降ってくることもあるんだね」
そんなことを言って、苦笑してみせる。
「傘、持って行ってなかったのか」
「うん。まさか、雨が降るだなんて思いもしなかったから」
備えあれば何とやら、とはよく言ったものだね。そう言って笑うサウラーの身体は、少し震えていた。
2016