無題「サウラー。今から買い物に行くんだが、何か買ってきてほしいものはあるか?」
「そうだね……ゴムを買ってきてもらえると嬉しいかな」
「ごっ……!?」
サウラーの発言に、ウエスターは驚いて言葉を詰まらせた。
(これは……そういうアピールなのか……!?)
どう答えたものかとウエスターが考えていると、サウラーが再び口を開く。
「さっき髪を結ぼうとしたら、切れちゃって」
「……あ、ああ。なるほど」
「だから、すぐに切れないような太めのヘアゴムを買ってきてくれるかな」
「分かった、探してみよう」
(……なんだ、オレの勘違いだったのか)
口に出さなくて良かった、危うく一週間くらいは無視されるところだったとウエスターは心の中で胸を撫で下ろした。サウラーは一度機嫌を損ねると長いので、不用意なことは言わないのが吉なのだ。……とはいえ、怒った顔のサウラーも可愛いと思ってしまうのがウエスターなのだが。
「ああ、それと……」
サウラーはウエスターに顔を近付けると、悪戯っぽく笑って囁く。
「……『あっち』のゴムは、薄めで良いよ」
「……っ!?」
顔を真っ赤にして固まるウエスターをよそに、サウラーは「じゃあ、よろしくね」とひらひら手を振って去って行った。
(どうしてバレたんだ……)
機嫌を悪くしたようではなかったので良かったものの、自分がそういうことを考えていたことが当の本人に知られてしまうとは……何だかいたたまれない気分だ。
「……取り敢えず、買い物行くか」
半ば無理矢理気持ちを切り替えると、ウエスターは出かける準備を始めたのだった。