午前七時の独占欲【ウエサウ】瞼越しに感じた光が、やけに眩しくて。思ったより眠ってしまったか!?と慌てて起き上がってみれば、時計の針は予想より進んでいなかった。
幸い、今日は休日だ。それを口実にして、昨晩は恋人の時間を頂戴したのだった。
視線を転じれば、彼はまだ眠りの中にいた。雪のように白い肌は、今にもシーツと溶け合ってしまいそうだ。時に自分を弄び、時に可愛らしい音を紡ぐ唇も、今はお留守番中。長い睫毛は昨夜よりよく見えるが、その奥にある瞳がこちらを見てくれないのはやはり寂しい気がした。
早く起きないだろうか、と思いつつも、眠っている恋人を起こすのは忍びないので寝顔を見つめながらその時を待つ。数分ほど経過した頃、焦がれていた二つの薄緑が姿を現した。
「ん……もう朝……?」
「ああ。おはよう、サウラー」
サウラーは目を擦ると、小さく欠伸をしながらゆっくりと身体を起こした。こういう無防備な姿は、いつ見ても可愛らしい。ただあまりその感情を表に出しすぎると怒られるので、口元が緩みすぎないように気を付ける。
「……ウエスター、ちょっとこっちに顔を近付けてくれる?」
突然の言葉に、ウエスターは首を傾げながらも言われた通りにする。サウラーはウエスターの首筋に顔を近付けたかと思うと、次の瞬間そこを強く吸い上げた。
「……っ!?」
驚いて声を失うウエスターをよそに、サウラーは唇を離すと「はい、もういいよ」と告げる。
「えっと……サウラー?何故いきなりこんなことを……?」
怪訝そうな顔で尋ねるウエスター。サウラーは妖艶に笑って口を開いた。
「おまじない。キミに悪い虫が付きませんようにって」
「何、そんなおまじないがあるのか!?」
「ああ。どうやらかなり効果があるらしいよ」
「そうなのか!それはすごいな!」
無邪気な反応を見せるウエスターに、サウラーは肩を竦めてみせる。絶対分かってないでしょ、とでも言いたげな顔だ。
「……絶対、ボク以外のものになんてならないでよね」
「ん?今何か言ったか?」
「いいや、何でも?……じゃあ、おやすみ」
そう言うや否や、サウラーは再び眠りについてしまった。ウエスターの頭上の疑問符が増える。
「えっ、また寝るのか?じゃあ一体何のために起きたんだ……?」
寝惚けてただけか……?と呟くウエスターの目には、サウラーの口元に浮かんだ笑みは見えていなかった。