西くん南さんとネクタイ「サウラー!すまないが、ちょっとネクタイを結んでくれないか」
ウエスターの言葉に、サウラーは軽く溜め息を吐いた。
「まったく……そろそろ自分で結べるようになりなよ」
「いや、一人でもできないことはないんだが……お前にやってもらった方が綺麗にできるんだ」
「当然でしょ?ボクがキミに劣るものなんてある訳ないんだから。……ほら、貸して」
面倒くさそうな顔をしながらも、サウラーは手早くネクタイを結んでいく。
「おお……さすがだな」
「用がないなら黙っててくれる?」
「……す、すまん」
ちょうどその時、一人の部下がそこを通りかかった。
「おはようございます、お二人とも。
珍しいですね、会議の前にお二人が一緒にいらっしゃるなんて」
「おや、そうかい?」
「ええ。あまりそういうイメージがなかったもので……それにしても、ネクタイを結んであげるなんて何だか新婚さんみたいですね!」
部下が冗談っぽく言った直後、サウラーは結んでいたネクタイを上まで勢いよく締め上げた。突然首を締められたウエスターは「ぐえっ」と潰されたカエルのような声を上げる。
「サウラー!いきなり首を締めるとは何事だ!?死ぬかと思ったぞ!?」
「おや、それは残念」
「どういう意味だ!?ネクタイは人の首を締めるものじゃありません!」
「それは……締めるべき首が目の前にあって、それを実行できる環境も整っていたから、つい」
「そういうことを真顔で言うな……冗談か本気か分からなくて怖いじゃないか」
「あっ、いや……その……す、すみませんでした。冗談のつもりだったんですけど」
慌てて弁解する部下に向かって、サウラーはにっこりと笑った。
「何、気にすることはないよ。元はと言えば、こいつがボクにネクタイを結ぶよう頼んできたのが全ての原因だからね。大丈夫、キミは何も悪くない」
「い、いや……すみませんでした、本当に……」
その日から、サウラーに向かって冗談を言う者はいなくなったとか……。