古馴染みがくっついた土方さんと斎藤さんがいい仲になったと聞いて、私はめちゃくちゃ驚いたのだが。
「あやつ、ここに来た時から土方を見る目が危なかったわ。気づかんのは沖田だけじゃ。のう勝蔵」
「あいつヤバいわ、絶対バーサーカーの素質あるぜ」
ノッブだけならともかく、森くんからも言われる斎藤さん…。
ともあれ、人の感情の機微に疎い自覚のある私なので、早速聞いてみた。
「土方さんって、恋人としてどうなんです?」
斎藤さんは、すすりかけの蕎麦を芸術的な軌跡で噴き出した。汚い。食堂のテーブル備えつけの布巾で周囲を拭き、斎藤さんは私に向き直った。
「そんなの、教えるわけないでしょ」
「あの土方さんがおとなしく三歩後をついてくるとか、そういうありえない話を期待してるんですけど」
「沖田ちゃん、情緒ないね…副長は副長よ、僕らの知ってる副長。ただ…いや、なんでもない」
斎藤さんは言いかけて口をつぐむ。
これは私でも隙がわかる。舌鋒で無明三段突きすればもっと面白い話が聞ける。クラス優位がなくても、私の方が斎藤さんよりも強い。
口を開きかけたら、頭を掴まれた。痛い痛い。見上げると、いつも通りの血色の悪い仏頂面があった。
「誰が三界に家なしだ」
土方さんは私の頭から手を離して、私の隣――つまり斎藤さんの斜め前に座った。
いい仲なんだから、もっとくっつくものじゃないのかな、と思うのは、私に情緒がないせいだろうか。
せっかくなので、土方さんにも聞いてみる。
「斎藤さんって、恋人としてどうなんです?」
土方さんはほんの少し――私や斎藤さんにだけわかるくらいの短さ――固まって、視線を動かさずに言った。
「内緒だ」
にやり、と意地悪な笑いを浮かべる。
「言わないでくださいよ」
「さぁなぁ」
蕎麦を食べかけのまま赤面する斎藤さんへ、からかいの言葉を投げる。カルデアのサーヴァントたちは知らない、『バラガキ』の表情だ。
やっぱり、面白い。新選組になる前の、試衛館でわちゃわちゃと過ごしていた頃を思い出す。
この気持ちを誰かと共有したい。SAITAMAの余韻で、間違って山南さんが召喚されないだろうか。子供サーヴァントを触媒にして、芹沢さんも喚べないだろうか。
そんなことを思ってしまうあたり、私にも一抹の情緒はあるのかもしれない。