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    すばる

    ヒッジとなぎこさんが好きです。

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    すばる

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    現パロ歳の差斎土がクリスマスを迎えました。かっこいい彼氏を目指すハジメチャンを正しく育てるヒジカタサンの育成ゲーみたくなってます。リボ払いは悪い文明…この後のことも気になりますね。

    #斎土
    pureLand

    クリスマス・サプライズ クリスマスイブの今日も、僕は働いている。
     僕の働くカフェではホールケーキやチキンの販売をしていないから、店頭販売などをする必要はない。その代わり、入れ替わり立ち代わりでやって来るお客さんたちをさばく。激務だ。
     カフェで待ち合わせをしてディナーやホテルや自宅へ向かうお客さんを見送ると、やっぱり心が荒む。
     別に僕にも彼氏がいるし、と思うこともできるのだけれど、土方さんは今日も遅くまで仕事だ。会うことは考えないように、と言い含められている。それは僕をバイトに集中させるための方便かもしれないが、そう言われればやはり悲しい。
     僕は特にさもしい人間ではないはずだが、自分が得られないものを得ている人を見て、温かく微笑むことはできなかった。
     まぁでも、人間ってそんなものだよね、と開き直って、回転率の高いフロアを右往左往する。
     学生の身分なので、土方さんへもそう高いプレゼントはできない。仮に分不相応のものを贈ったとしても、まずはリボ払いの心配をされるだろう。「アレにだけは手を出すな」と、人生の先輩として厳格に禁止されている。
     だから、僕の稼ぎで買えて身につけられるものを考えた。土方さんの目と同じ色の石が飾られたカフスボタンに目をつけて、給料日である明日買えるようお取り置きをしてある。
     アクセサリーを選んだのは、もちろん少しでも僕を思い出してくれる時間を増やして欲しいからだ。
    『プレゼントした服を脱がす』というのも、将来的にはやってみたい。いつになるかわからないけれど……。
     二十一時を過ぎて、さすがにお客さんの波は収まってきた。もうみんな目的地へ移動したのだろう。
     ラストオーダーは二十一時三十分だ。今から来る客もいないだろう、と思っていたら入口のドアが開いた。
    「いらっしゃいませ、もうすぐラストオーダーなんですけどよろし……」
     お客さんの顔を見て、絶句した。
    「一人。喫煙席で」
     黒いコートを脱いでスーツ姿になった、土方さんがいた。
     僕は動揺しながら土方さんを奥の席へ案内した。席に着いて、僕がメニューを見せる前に、「ブレンドをひとつ」と注文してくる。手の中のPOS端末が、心なしか震えた。
     同僚の女の子が、目ざとく土方さんを見る。
    「斎藤くん、今のお客さん、めっちゃイケメン……脚なっが……」
     ダメだよ、あの人は僕のことが好きなんだからね? 君なんて眼中にないんだからね?
     ただの同僚へそこまで言うのは常軌を逸している。僕は押し黙ったままキッチンからブレンドを受け取り、奥の席で待つ人へ届けた。
    「ブレンドでございます」
    「ミルクと砂糖を聞かれなかったんですが」
     赤い目のお客様は、僕を見上げて言う。
     え、あんたブラックしか飲まないでしょ。聞くだけムダだと思ったから聞かなかったんですよ。そんな、揚げ足取りみたいな真似を。
    「冗談です」
     たとえ僕でも、店員には丁寧に接する。そういうところにもお兄さんやお姉さんのしつけと愛情を感じる。好きだなぁ。
     からかわれたことへの憤りなど、どこかへ飛んでいってしまう。
     土方さんは濃い琥珀色の液体に視線を落として、ひと口すすった。その横顔の美しさに、ため息が出る。
     この店はカフェであってキャバクラではないから、あまり一人のお客様にべったりとついているわけにはいかない。僕は泣く泣く土方さんから離れ、キッチンとフロアの境目で他のお客さんを待った。
     土方さんは一服して、五十分頃に出た。早めにお客さんがはけたので、椅子と机を端に寄せて清掃する。清拭が終わった後、社員さんがシフォンケーキを一カット持たせてくれた。
     なんでかわかんないけど、土方さんに逢えて嬉しかったなぁ……途中のスーパーで売れ残りのチキンを買って、クリぼっちを満喫しよう……と思いながら裏口を出たら、土方さんが待っていた。
    「帰るぞ」
     そう言って、僕の腕を掴む。引っ張られるままになりながら、振り返る。
     さっき土方さんをイケメンだと言っていた子は、僕らを見て何か納得した表情をしている。
     だいたい誤解じゃないけど、僕が抱く側だからね? そこ間違えないでよ。
     いつまでも引っ張られるがままではいられないので、一度体勢を整えてまっすぐ立ち、土方さんと並んで歩く。
    「どうしたんですか」
    「仕事終わらせてきた」
     仏頂面で言う土方さんに、僕は疑問をぶつける。
    「終わらないんじゃなかったんですか?」
    「今日の夕方までどうなるかわかんなかったからな、ぬか喜びさせたくなかった。お前の落ち込む面は見てらんねぇ」
     普段なら、そんな配慮に『また子供扱いされた……』と落ち込んでいたことだろう。けれど、今の僕は違う。
    「それだけ、どうしても僕に逢いたかったってことですよね?」
    「言わせんな」
     土方さんは、うっすら唇の端をつり上げをた。僕の彼氏、本当に顔がいい。
    「所帯持ちのやつと、ソシャゲのイベントやりたがってたやつと三人で協力した」
     それぞれ事情は違っても、一刻も早く帰りたいのは一緒だったということか。
     お酒を飲んでもいないのに、地面がふわふわしてうまく歩けない。にひひ、と箍の外れた笑い声が上がりそうだ。
     でも。
    「もし僕が他の誰かと予定入れてたら、どうするつもりだったんです?」
     もちろん土方さん以外の人と個人的に逢ったりはしないけれど、こういうイベントの時、時折バイト先で『ぼっち会』が開催されることもある。
     しかし土方さんはこともなげに、
    「お前は誰よりも俺との用事を優先するだろ」
     出た! 自分が大事にされているとかけらも疑っていない発言! 事実なので特に言うこともない
    「ケーキもチキンも、どっかしらで買えるだろ。帰ったらひっそりパーティーするぞ」
    「はい」
     僕はよほどだらしない笑顔をしていたのだろう。土方さんは、
    「ケーキ食い終わるまでは待てよ」
     と、釘を差してくるが、まんざらでもない表情で言われてもあまり説得力がない。
    「プレゼントもあるからな、俺以外に」
    『俺』がプレゼントになりうることを理解している。さすが僕の彼氏は僕をよく知っている。
    「僕は明日渡します……すみません」
    「目先の欲に負けて金策しないのは結構」
     頭をなでられそうになったので、逃げる。
     少しでも、大人の男だと思われたい。あんたにふさわしくなりたいんだ。そのことを、なんとかして伝えたいんだ。
    『聖夜』を『性夜』と最初に呼んだのは誰だろう。みんながみんなそういうことをするとは限らないのに。風評被害じゃないのか。
     まぁ、僕らもこれからセックスするんですが。
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