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    つつ(しょしょ垢)

    @strokeMN0417
    げんしんしょしょ垢。凡人は左仙人は右。旅人はせこむ。せんせいの6000年の色気は描けない。鉛筆は清書だ。
    しょしょ以外の組み合わせはすべてお友達。悪友。からみ酒。
    ツイに上げまくったrkgkの倉庫。
    思春期が赤面するレベルの話は描くのでお気をつけて。

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    POIPOI 33

    2024年祭りの3日目を噛み締めていたら生まれた鍾魈。
    このあとある方とのリプやり取りで「霄灯を作ろう」は「たまごを作ろう」の隠語であると相成りましたことをご報告いたします。ん??

    ##小話
    #鍾魈
    Zhongxiao

    霄灯霄灯
     翹英荘での新たな縁を堪能したところで、別れ際にパイモンから
     「そういえばしょーりぃ、聞いて驚けー、なんと、あの魈が霄灯を自分で作ってオイラたちと一緒に飛ばしたんだぞ!」
     と心を揺るがす報告を受け、顔では柔らかな笑みを浮かべたつもりながらも、冷ややかな旅人の目に見透かされたようだった。
     璃月港に戻るという堂主の言葉に、もう一晩茶を堪能したいと別行動の許可を貰い最寄りの宿を取る。部屋に案内されるや否や『道』を開いた。
     目の前には霄灯に彩られた望舒旅館が広がり、祭りの雰囲気に浮き足立つ客たちの間を抜けていく夜風は冷たく、対照的にざわつく鍾離の心を撫でていく。
     勘のいい堂主に後日ここに来ていたことがバレるのも面倒かと姿を消して最上階に向かう。
     いつもなら、いくら部屋の主に許可を得ているとはいえ凡人らしく仙人への敬意を払い部屋に勝手に立ち入るなどしないのだが、今日は確かめたいことがある。
     主は、この時期なら仕方の無いことだが何時にもまして苛烈な降魔を行っているのか勿論不在だ。
     扉は仙力で閉じられている。
     望舒旅館に仙人がいるという話はまことしやかに流れており、仙人に縁を結びたいという凡人が訪れることも少なくない。だがここに住まう仙人は決してそう言った安易な祝福を望む者に好まれる性質をしていない。だがそのような事情は凡人の預かり知らぬところでもある。
     他の多くの仙人がそうであるように、彼もまた本質は静謐を好む。無用の凡人の訪問は忌避するところにある。故に彼の部屋は在室中であれ普段開かれることは無い。
     オーナーの話では彼女が持つ鍵で開く時は清掃のために立ち入ってもよいという証で、そうでなければ立ち入りを拒否していることになるそうだ。
     不在の今、自分の部屋というものにもこだわりが無い彼が部屋を仙術を持ってしてまで封じるのは先のような凡人たちが執念で部屋に近づかれるのを嫌っているからとも考えられるが、オーナーにも見られたくない何かがあるからだろう。
     さっと手をかざすと岩元素の光が弾け扉が開く。高位の仙人である降魔大聖の術式とはいえ元・岩王帝君を阻むことは出来ない。
     かくして鍾離の目の前には…ちぎれた紙きれ、折れた竹ひご、砕けた浮生の石片が点々と積み重なった光景が広がっていた。
     予想通りといえばあの子は傷つくだろうが、いわゆる努力の結果が形になっているようで愛しさとむず痒さについ口元が綻んでしまう。膝を折りそこにあった折れた竹ひごをまるで貴重な宝物のように手に取ると耐えかねてふふっと笑ってしまった。
     次に気になったのは彼の手だ。いかに多少の傷は直ぐに治るとはいえ、どれほどの擦り傷を作っただろうか?手袋をしたままでは作れないから絶対に素手で作業したはずだ。荒れてはいないだろうか?
     取り留めのない心配が生まれ、辺りを見回す。確か傷薬はあの棚に置いてあげたはずだ…と腰をあげると背後に覚えのある気配が立った。
    「て、帝君…っ」
     月明かりと外の霄灯の僅かな光に照らされて、翡翠色の美しい髪が輝き、自分とお揃いの黄金色の瞳がまんまるに見開かれていた。ほのかな水気を感じるのは降魔を終えて身を清めてきたからだろう。
     反射的に膝をつこうとした部屋の主…降魔大聖・魈は鍾離の手の中にあるものを見つけ、小さな悲鳴のような声を上げた。ついで部屋の惨状に思い当たったのか今にも泣きそうな声で「今すぐ片付けます!」と踏み出したところを捕まえるとふわりと抱きしめた。
    「パイモンからお前が霄灯を作って、友と一緒に飛ばしたと聞いた」
    頭を撫でようとしたが、手の中に折れた竹ひごがあることを思い出しくつくつと笑う。その振動が魈に伝わり彼の耳が真っ赤になったのが見えた。竹ひごを手近なところに置くと改めて頭を撫で、すまないと優しく呟く。
    「からかうつもりは無かった。お前がこうして霄灯を飛ばすという気持ちになってくれたことが嬉しかったのだが…やはりというか…」
     言葉に詰まってしまい幼子をあやすようにとんとんと背中を叩く。その気持ちを汲んだのかぽつりと魈は吐露し始める。
    「我は…弥怒のように器用ではありませぬ…このようなことになるぐらいなら少しぐらいは習っておけばと…帝君お目汚しになるとはあの頃には思いませんでした……」
     泣いているのではないかと疑ってしまうほどの震える声。
     かつて服飾の拘り話が長く気を抜いてしまった為に叱りつけてきたときと同じ声音で「弟分を泣かせるような主君を持った覚えは無い」と心猿大将に言われた気がした。
     そんなつもりは毛頭ないから安心して欲しい、と決意すると俯いたままの魈の頬を包み視線をあげさせる。
    「それでも霄灯を飛ばしたいと願ったのだろう? さっきも言ったがその気持ちがお前に芽生えたことが俺には嬉しい。そうだな…まだ材料はあるだろうか? 俺も心猿大将ほど器用とは決して言えないが作れないことは無い」
     羞恥のあまり泣くのを堪えていたことがありありと分かる潤んだ黄金色の瞳はかつての魔神の欲望を刺激するには十分過ぎた。
     額に一つ口付けを落とすと「ともに霄灯を作ろう」とこの上なく甘い声音で夜叉を誘った。
     
     しばらくして望舒旅館から二つの少し歪な霄灯が上がり、翹英荘の宿屋の一部屋からは明け方まで人の気配がしなかった。
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