会食「いい景色だな、兄弟」
「サイコーダナ、キョウダイ!」
炎国で竜医を務める俺は相棒と共に今は璃月を旅していた。
偶然出会った随分と気品があり、えらく顔立ちの整った青年にどんな旅行記よりも詳しく案内され、風国に向かうならと国境の旅館を勧められた。
眼下に広がる景色はまさに圧巻の一言。またあの青年に会う機会があればもっと話がしたいものだなと相棒に同意を求めたが、何故か相棒はちょっと震えて「マジカヨキョウダイ...」と少し遠慮がちに呟く。
確かに黒曜石の老婆みたいな不思議な威圧を感じたが、今は風元素を感じるだけだろう?と言いかけて一瞬思考が止まる。
あの青年は岩元素に満ちていた。テペトル竜か?というほどに純粋な岩元素だったのを覚えている。
では思わず思考が釣られてしまった強い風元素はなんだろうかと振り返ると、あの青年が笑顔を浮かべて立っていた。
まさかこんなに早く再会できるとは。しかし港へと向かっていた青年が真反対の旅館にいる事実が飲み込めず、口の中で「マジかよ兄弟...」と唸ってしまった。
さらに彼の後ろにはこれまた驚くほど美少年がいて、相棒は何かを感じとったのか小さく「マジカヨ...」と呟いていた。
彼が言うには見送ったあとで旅館に住む贔屓の小鳥に会いたくなったという事だったが、辺りを見回してもそれらしき鳥の姿はなく、そのままの流れで三人と一匹での会食の間、どれだけ小鳥を愛しているかの自慢話を聞かされただけに終わった。
まあ、故国でも仔竜の自慢話を滔々とするやつはゴロゴロいる。こういうのは慣れっこだ。
「タイヘンダナ、キョウダイ」
少年に向かって相棒が何故か励ましていたが理由は理解はできなかった。