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    mitsuhitomugi

    @mitsuhitomugi

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    mitsuhitomugi

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    ものすご〜〜く久々に書いています(現在進行形)。
    登場人物が構想に一切なかったはずの意図しない挙動をとりまくるのでこの後どうなるかは私にも分かりません。
    9/6 ちょっと進んだ

    俺たち同窓生 薄らと冬の気配を残した四月上旬の気候はまだ少し肌寒い。それでいて、新たな環境に浮かれる生徒達の騒めきがそうさせるのか、入学式から十日ほどしか経っていない校舎はどこか熱気を帯びている。
     初等部から高等部までを備えた学園の特性上、在籍する生徒の顔触れが一変する訳ではないのだが、やはり「高校生になった」という実感は別格のものなのだろう。持ち上がり組と受験組が混ざり合った新一年生の教室は、期待感と緊張感とで日がな一日落ち着かない様相だった。
     かくいう真田も、日頃あまり他人や環境の変化に左右されることは無いのだが、この時ばかりは密かに新生活への期待感に心を躍らせていた。高等部ともなれば、部活動の設備もより整ったものになる。中等部でも在籍していたボクシング部だが、高校では更に優れたトレーニングに取り組めるだろう。対戦相手となる他校生のレベルも当然上がってくるはずだ。そう思うと自然と胸の内に熱いものが滾った。
     加えて、特別課外活動部の本格始動もまた真田を燃え上がらせた。影時間にのみ現れる怪物――シャドウの討伐を目的とした、部活動の体を取った秘密組織。活動の特性上、実家を離れて作戦本部たる寮での生活も始まったが、それはさほど大きな問題では無い。そんな事よりも、人智を超えた怪物を相手に鍛えた力を試せるという期待感が何より真田の心を湧き立たせた。今すぐにでもトレーニングのメニューを組み、更に強くなるべく己を鍛え上げたい一心だった。

     ……だというのに、新学期早々に掃除当番だなんてツイてない。箒を床に滑らせながら、真田は一人溜息を吐いた。
    「クソッ、掃除なんかしている場合じゃないんだぞ……!」
     逸る心を抑えつつも、つい悪態が口から漏れる。真田の担当場所にあてがわれた廊下はひっきりなしに人が行き来し、塵を集めることすらままならない。それが余計に真田を苛立たせた。早く帰ろうが影時間が訪れるタイミングは変わらないのだが、今は取るに足らない些事に時間と行動を制限されるのがもどかしい。仕方なしに、往来が落ち着くまでは頭の中だけでトレーニングの段取りを組み立てることにした。例え集中を阻害される雑音の中だろうと、否、だからこそ精神が更に鍛えられるというものだ。静かに目を閉じて思考を鍛錬へと研ぎ澄ませる。
     徐々に周囲の話し声が遠ざかっていくのを感じたその時、猛獣の唸り声の如き轟音が廊下中に響き渡った。
    「ッ!」
     まさかシャドウか、いや今は日中だ、ならば本当に猛獣か。箒を手放して拳を構え臨戦体制を取った真田の目の前にいたのは、しかし怪物でも猛獣でもなかった。
    「な、ななななんだチミはっ!!や、やろうってのか!?ボクとやろうってのかい!?」
     普通の、いや、普通というにはあまりに肥え太ったただの人間だった。安堵とそれ以上の落胆に息を一つ吐いて構えを解く。
    「なんだ、つまらん」
    「つまらんって!チミねぇ、失礼だとは思わないの!?ボクを誰だとっ……」
     目の前の男子生徒は散々喚いていたかと思うと突然電池が切れたように黙り込んだ。得体の知れない奴だ。
    「うぅ……お、お腹が減ってぇ……力が出ない……。チミ、何か持ってない……?できればグルメで美味な……」
    「プロテインバーならあるぞ」
     どうやら先程の轟音はこいつの腹の虫の咆哮だったらしい。ならば腹を満たして黙らせるのが手っ取り早い。日頃携帯しているプロテインバーをくれてやると、男は半ば奪うように受け取るや否やすかさずパッケージを破いた。手汗か脂かは知らないが、指が滑ったのだろう。酷く不恰好な開け方だ。真田が白けた目で見ていることも厭わず、男は一心不乱にプロテインバーを貪り食っている。掃除の邪魔だから食べたら早く去ってほしい。
    「うん、まずまずってカンジ。でもおかげで飢え死にしないで済んだよ!なんだい、チミ、意外と良い奴じゃないか!」
    「その脂肪を蓄えている限り飢えることは無いと思うが」
     アッという間に食べ終えたらしく、調子を持ち直したのかテカテカした笑顔を向けられた。もはや精神を鍛えるどころではないので、箒を拾って掃除を再開する。とりあえず掃除をしたという事実さえあれば怒られることもないだろう。とにかく、さっさと掃除を終えて帰りたかった。
    「まあ、チミみたいなスリム人には分からないだろうねぇ。ボクの驚異的なボディの魅力はさ」
     調子を持ち直したどころか随分調子に乗っているらしい。構わず箒を床に滑らせ、適当な位置に埃を集める。廊下はいつの間にか自分達の他にほとんど誰もいなくなっていた。それ自体は好都合だったが、そんなに溜まってもいない埃を集めたところで、まるで綺麗にしている実感が無かった。
    「って、ちょっと!無視してんじゃないよ!これだから嫌なんだ!チミみたいな、スリムでイケてる奴は!」
     今度は勝手に怒り出した。先に突っかかってきたのは相手だが、それにしても情緒不安定な奴だ、と思う。もはや真田の反応など関係無いかのように、男は一方的な怒りを捲し立てている。
    「そうやって、みんなしてボクを馬鹿にするんだ!みんなボクを!見下してるんだッ!お、弟みたいにスリムじゃないしブサイクだからって!!」
     何の話かは分からないが、酷く興奮しているらしい。というか、様子がおかしい。身体はわなわなと打ち震え、呼吸もあわや過呼吸寸前というほど乱れている。何よりその顔が普通の形相ではなかった。流石にこれを放置することはできない。箒を壁に立て掛け、男の元へと歩み寄る。
    「おい、大丈夫か」
    「どぅわあ!?」
     肩に手を置いて軽く揺さぶる。……はずだったが、力加減を間違えたらしい。頬の肉が波打ったかと思うと、そのままバランスを崩して男は思い切り尻もちをついた。
    「な、何!?何が起きたの!?今、ボクの身に、何が起きた!?」
    「……済まん」
     動揺こそしているものの、意識はハッキリしたらしい。怪我の功名というやつだろうか。冷静さを失ってヤケクソになったり動揺したり、まるで美鶴の攻撃を喰らったシャドウのようだと思う。尤も、そういうスキルがあると聞いただけで実際に目にしたことはまだないのだが。
    「立てるか?」
     目を見開いたまま動かない男の顔を覗き込む。冷や汗か脂汗か単に顔が脂ぎっているのか判断しかねるが、顔中がじっとりと濡れている。
    「ボ、ボク……腰抜けちゃったみたい……」
     頬をひくつかせながら弱々しく言った。その青ざめた顔を見ると動揺のためか目が泳いでいて、決して真田の方を見ようとはしない。ともかく、このまま廊下に置いておく訳にもいかないだろう。背負ってこいつの家まで運ぼうかと真田が思い立ったところで、背後から馴染みのある声が聞こえた。
    「おい、アキ。何やってんだこんなとこで」
    「シンジ!」
     振り返るまでもなく、その正体は明らかだった。中等部で同じクラスだった生徒や三年間同じ部活だった奴より、遥かに長い付き合いの幼馴染――荒垣が来たと分かった瞬間、根拠も無く、助かった、と思った。
    「こいつが腰を抜かしてな。今からおぶって運ぼうかと……」
    「ふ、ふ、ふふ不良!?!?エエエエマージェンシィィィ!!!」
     真田が説明を終えるより先に、男は荒垣の顔を見るなり悲鳴のような声を上げたかと思うと、そのまま白目を剥いて気絶してしまった。
    「……いくら何でも失礼だろ」
     長めの前髪に隠れた荒垣の表情は見るからに落ち込んでいる。荒垣はその人相の悪さと威圧感のある体格とが相まって、初対面では不良と勘違いされやすい。荒垣本人も真田も慣れたものだが、流石に気絶されるのは初めてだった。後で何か自販機で奢ってやろう。真田は密かに同情した。
    「とりあえず、保健室に運ぶか」
    「……おう」
     男に肩を貸して何とか立ち上がらせた。荒垣と共に男を両脇から支える形で廊下を進む。
    「重てぇな、クソ……」
    「人ひとりがなんだ。進んで鈍器を振り回す癖に」
    「それとこれとはワケが違ぇよ、馬鹿」
     荒垣もまた、課外活動部に名を連ねる者の一人だった。といっても、中等部の頃に美鶴から誘いを受けた真田とは違い、正式な入部が決まったのはつい最近のことである。戦闘面でも、殆ど自分の身ひとつで敵の懐に飛び込む拳を使った真田とは異なり、重量感があり当たれば痛い斧や槌などの巨大な鈍器で殴打するスタイルを選んだ。
     荒垣は影時間への適性こそあるものの真田や美鶴より不安定らしく、真田も当初は入部を反対していた。しかし、人員の確保が急務であること、元々真田と顔見知りで連携に問題が無いこと、当分は戦闘よりも調査・研究を中心とした活動にする予定であることなどを加味して桐条グループからは部への加入を認められた。何より、本人の意思が固かった。真田に言わせれば入部も入寮も押しかけ同然だったが、何がそこまで荒垣を駆り立てたのかは教えられていない。だが、荒垣は喧嘩が強く腕っぷしには一切の不安がないということを真田は誰よりも熟知している。いざ入部が決まり、肩を並べて荒垣と共に戦えると思うと、適性への不安はすっかり消え去っていた。
    「つーかアキ、こいつに何した?」
    「いや、何もしていない」
    「何もしてなきゃ腰なんか抜かさねえだろ」
    「いきなり突っかかってきて、プロテインバーをやったら大人しくなったかと思ったら怒り出した。様子が変だったから肩を揺すったらバランスを崩して尻もちをついて腰を抜かした」
    「何だそりゃ」
    「変なヤツだ」
    「テメェも大概だろ。普通はプロテインバーなんざ持ち歩かねえよ」
     男を間に挟んで話しながら廊下を進む。保健室は確か下の階にあったはずだ。まだ高等部の校舎の全容を把握できていないが、少なくともこのまま階段を二階分は降りなければならない。これはいいトレーニングになりそうだ。
     一年生のフロアの端に辿り着き、階段が目の前に現れた。気合い入れて運ぶぞ、と荒垣に目配せをする。荒垣も頷き、階段を降り始めたところで今度は全く知らない声がした。
    「え、あの、病人ですか!?意識は!?」
     振り返ってみると、慌てた様子の眼鏡の男子生徒がこちらを見ていた。
    「一旦ここに寝かせてもらっていいですか!?左向きに寝かせて、頭を少し後ろに反らせてできるだけ気道を広げた状態で!保健室に運ぶなら担架……僕持ってきます!」
     もの凄い勢いで捲し立てたかと思うと、そのまま真田の横をすり抜けて階段を駆け降りて行ってしまった。荒垣と二人して呆気に取られていたが、ともかく指示通りにするべきだ。来た道を引き返し、廊下の端に男を寝かせる。左向きに寝かせるとか言っていたが、要は回復体位だろう。ずっしりとした巨体を九十度転がし、下側の左腕を体の前方に投げ出す。呼吸は安定しているようだった。
    「ん……?」
    「どうした、シンジ」
    「いや、こいつ、ケツのとこだけやたら汚れてんだよ」
     荒垣の指摘を受け覗き込むと、確かにズボンの臀部の辺りが埃にまみれて白くなっている。一体どうしたらこうなるのか……
    「あっ」
    「あ?」
     そういえば、こいつが尻もちをついたのはちょうど自分が埃を集めていた場所ではなかったか、と思い至った。それと同時に、掃除当番を完全に放棄していたことも思い出した。別に箒とかけている訳ではない。真田は咄嗟に自分に言い訳をした。掃除道具の類を出しっ放しにしているのは気がかりだが、意識不明の人間を放置してまで片付けるものでもないだろう。
    「どうした、急に馬鹿みてぇな声出して」
    「何でもない。あと馬鹿は余計だ馬鹿」
     怪訝そうな顔の荒垣を見ていると、何年も前の記憶が呼び起こされる。出したものは自分で片付ける、という孤児院の先生の声だ。クレヨンだか折り紙だか、使ったものを出しっぱなしにして、妹と並んで怒られた時だろうか。未だに物を出しっぱなしにすると先生に怒られるような気がして少し落ち着かない。ただ時折忘れてしまうこともあり、昨日なんかはたまたま寮のラウンジに私物を放置してしまったのだが。そして今朝、先生の代わりに美鶴に怒られた。
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    mitsuhitomugi

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    登場人物が構想に一切なかったはずの意図しない挙動をとりまくるのでこの後どうなるかは私にも分かりません。
    9/6 ちょっと進んだ
    俺たち同窓生 薄らと冬の気配を残した四月上旬の気候はまだ少し肌寒い。それでいて、新たな環境に浮かれる生徒達の騒めきがそうさせるのか、入学式から十日ほどしか経っていない校舎はどこか熱気を帯びている。
     初等部から高等部までを備えた学園の特性上、在籍する生徒の顔触れが一変する訳ではないのだが、やはり「高校生になった」という実感は別格のものなのだろう。持ち上がり組と受験組が混ざり合った新一年生の教室は、期待感と緊張感とで日がな一日落ち着かない様相だった。
     かくいう真田も、日頃あまり他人や環境の変化に左右されることは無いのだが、この時ばかりは密かに新生活への期待感に心を躍らせていた。高等部ともなれば、部活動の設備もより整ったものになる。中等部でも在籍していたボクシング部だが、高校では更に優れたトレーニングに取り組めるだろう。対戦相手となる他校生のレベルも当然上がってくるはずだ。そう思うと自然と胸の内に熱いものが滾った。
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    mitsuhitomugi

    DONE3月5日には間に合わなかったし言うほど3月5日に寄せた話でもない、後輩達の卒業を祝う美鶴の話です。
    スターチス その日中に終えねばならない粗方の仕事を片付け、ふうと息を吐く。するとふっと力が抜けて、こんなにも肩に力を入れていたのかと美鶴はようやく気が付いた。
     ここ暫くは公安と共同での非公式シャドウ制圧部署の設立及び始動に向けた各所への調整、交渉、加えて各地に出現したシャドウの対処など、やるべきことが隙間なく詰まっていて休む暇がほとんど無い。当然、仕事で手抜きなどするつもりは毛頭無いが、やはり疲労は相応に溜まってしまうものである。
     気分転換に紅茶でも淹れよう。そう思い立ち席を立った時、窓から差し込む夕陽が目に入った。時計を見やると、時刻はそろそろ18時になろうかという頃だった。
     ほんの少し前までは、この時間になるととっくに陽は落ち切っていた気がする。春というのはこうも知らぬ間に訪れているものだったか。大人になると時の流れが早くなる、とは聞いたことがあるものの、いざ実感すると何かに置いて行かれてしまったような寂しさがあった。それはきっと、1年前まで寮で共同生活をしていた仲間達を想う懐かしさと一体の感情なのだろうと美鶴は思う。
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