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    にゃあ

    悠巳中心、巳波受全般好き(ŹOOĻ内カプはだいたいなんでも食べる)

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    『大人になったら』
    ŹOOĻの4人で温泉に行く話。悠巳です。作中で悠は性的な知識がバブちゃんなところがあります。

    悠の誕生日当日ということで長めのものをあげたかったのですが間に合わなかったのでちょっとずつ上げていきます…。

    #悠巳
    dollsFestival
    ##大人になったら
    ##悠巳

    旅館の大部屋に4人で泊まるなんてと悠はものすごくドキドキしていたけれど、他のみんなはそうでもないようだった。軽装でやってきたかと思うと、部屋ではすぐに思い思いにくつろぎはじめている。
     トウマは畳の上にごろりと寝転がっていて、虎於は行儀よく座椅子に座って地方新聞を広げていて、巳波は窓際の椅子に座って外の景色を眺めている。手持無沙汰にしているのは悠くらいだった。
     こんな何もないところでの娯楽、悠にはスマートフォンで時間をつぶすくらいしか思いつかない。祖母といっしょなら散策コースをゆっくり一巡りしてみたり、土産物屋をのぞいたり、いろいろと思いつくものもあったが、同じユニットのメンバーとそういうふうに過ごすところはいまいち想像できなかった。
    「そんな端っこにいないでこっち来たらいいじゃねえか」
     トウマがごろごろしながら手招きしてくる。
    「やだよ……、なんかおっさんっぽい」
    「おっさんって。俺はおまえと3つしか違わないんだぞ」
    「だってアイドルっていうか休日のお父さんって感じじゃん」
    「なんだよそれ……」
    「ははは、昼間っからゴロゴロしているからだぞ」
    「そんなこと言ったって、温泉旅館なんてさあ、ゴロゴロしに来るもんだろ? おまえは何見てんだよ」
    「新聞だ」
    「そんなの見りゃわかるよ! こんなとこまで来て新聞って」
    「知らないのか? 新聞には地方紙というものがあるんだ」
    「それくらいは知ってるけどよ、わざわざ見るほどのもんか?」
    「ああ、土地ごとの特色が出るからな。なかなかに興味深い」
    「へーえ……。おまえだってハルからしたら、おっさんくさいんじゃねえの? 新聞なんか。なあ、ハル?」
    「いや、別に……」
    「ほら、な?」
    「なんだよ、もう~……。いいんだよ、こういうの、楽で!」
     トウマは拗ねてしまったらしく、座布団を二つ折りにして抱えて、ごろんと向こうを向いてしまった。
     確かにトウマの言うとおり、畳の上に寝転がっているのは楽そうではあるが、一緒になって転がるのには抵抗があった。かといって虎於のように新聞を読むのも……と思う。悠はこれまで新聞なんて、学校の課題で読まされたときでもなければテレビ欄くらいにしか目を通したことがない。
     だとすると、やはりここで行くのは巳波のところだろう。ちょうど向かい側の椅子も空いている。多分、行ったときにかまってくれるのはトウマなのだろうし、それなりに相手をしてくれるのは虎於なのだろうと分かってはいるのだが、それでもこういうときにはどうしても巳波だった。
     それはもちろん、巳波が好きだからというのもある。巳波は甘やかしてくれないし、めったに優しくはしてくれない。頼るのはちっとも合理的じゃない。でも、悠が必要としているときには巳波は必ず手を取ってくれる。だから、こうしてなんでもない選択でもつい、悠は巳波を真っ先に思い浮かべてしまうのだ。
     できるだけさりげなく、悠は窓際のほうへ寄っていく。静かに椅子を引いたつもりが、巳波がすっとこちらを見た。目が合うとやわらかく口角が持ち上がる。こういう、笑ってくれている巳波の顔も好きだなと思いながら、椅子に浅く座った。
    「おばあさんと来られなくて残念でしたね」
    「んー、まあ、ばあちゃんには虎於がいいホテル手配してくれたから……。ばあちゃん、観光ガイド買って今からすごい楽しみにしてるし」
    「あら。ふふ、今回は何から何まで御堂さんですね」
    「うん」
    「そーいや、もともと福引で宿泊券当てたのもトラだったっけか?」
    「ああ。初めての福引でな。なかなかに楽しかったぞ」
    「ああいう抽選会とかって、わくわくするよな。ハルは何当てたんだ?」
    「ティッシュと骨せんべい。あと虎於が特賞あてたら、商店街の人が魚のアラとか牛脂とかくれた」
    「下町情緒あふれる話ですねえ」
    「何か土産とか買っていくか、配れそうなやつ」
    「そうはいっても商店街のみなさんに配るとなると、必要になる数も多いのでは?」
    「それはもう事務所と話をつけてある。俺たちの旅先での写真にサインを入れて配るぞ」
    「もしかして虎於、カメラ持ってくるようにオレに念押してたのそれ?」
    「ああ。商店街でもいい宣伝になるだろ」
    「でもよく事務所から許可が出ましたねえ」
    「商店街のほうでも今は買い物に来る客が減っているらしくてな。場所が余ってる店が多いらしい。そこに過去に出したライブグッズを置いてもらうってことで話がついていてな」
    「抜け目のないことですね」
    「やるなあ……、なんでトラ、アイドルなんかやってるんだ?」
    「やりたいからに決まってるだろう」
    「まあ、そりゃそうか」
    「だから悠、SNSで今回の旅行について書いてもいいぞ。リアルタイムはさすがにまずいがな」
    「書いていいっていうか、書いてほしいって言えよな……」
     4人の中では悠が一番若いということもあって、ラビッターやラビスタグラムなど複数のアカウントをうまく使い分けている。高校生らしいリアルな投稿はそれなりにウケていて、フォロワーの数もなかなかだ。
     もちろん他の3人もそれぞれアカウントは持っているが、旅行の写真をUPしたりするような使い方はあまりしていないので、悠が投稿するのが一番自然ではあるだろう。
    「投稿前には念のために俺が確認する。商店街は場所が場所だからな、自宅の場所が割れないように気を遣ったほうがいい」
    「別にそんな心配しなくたって、オレ男だし」
    「女のファンが来るとは限らないだろう? 留学中にもそういう事件の話はいろいろ耳に入ってきていたんじゃないか?」
    「んー……、それはまあ」
     確かに、そういう話はいろいろとあった。
     近づいてくる大人に気をつけるようにというのは繰り返し教えられていたし、気をつけていたであろう子供が行方不明になった事件の報道も数えきれないくらい目にしていた。
     そういったニュースを見ていてわかるのは、犯人は女子だけを狙うんじゃないということだ。男女問わず狙われる。犯人は男が多いが、被害者は女とは限らなかった。
    「面倒だとは思うが、誘拐対策という意味では俺はプロだぞ。誘拐されないように気をつけてきた側の人間だからな、経験者として信用していい」
    「虎於の場合、誘拐計画エグそう」
    「あ~、やっぱ御曹司ともなるとそういうのあるんだな」
    「大人になってからもときどきはあるぞ」
    「マジかよ! 大変なんだな……」
    「まあさすがに近頃だと身代金が目当てだがな。とはいえ、そのあたりの自衛は子供のころから仕込まれてる。SNSでの情報流出に関してもな」
    「女関係が派手なわりにスキャンダルにならない手腕もおありですしね」
    「今そういうことを言うな」
     虎於がばつの悪そうな顔をする。
    「すげえな、俺もそういうの覚えといたほうがいいのかもな」
    「狗丸さんは大丈夫では? 女遊びのできるタイプでもなさそうですし」
    「そんな、俺だって……!」
    「トウマだってデートくらいするんじゃないの?」
     悠が言うと、トウマが黙った。黙ったまま悠を見て、それから笑顔になってうなずく。
    「そ、そうだ……、俺だって女と遊びに行くくらいすることもあるかもしれないだろ! うさみみフレンズパークとか、パンダなめこランドとか……水族館とか動物園みたいなところに」
    「……そうだな、現地でバレてすっぱ抜かれないように気をつけろよ」
    「そうですね、狗丸さんでも囲まれたりしたら大変ですし。将棋倒しとか」
    「そう、そうだよ。将棋倒しは危ないからな」
     なんだか3人が挙動不審なような気もしたが、将棋倒しが危ないということそのものはその通りだったし、どう深掘りすればいいのかもよくわからなかったのでそのまま話を聞いておくことにした。
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    「だってアイドルっていうか休日のお父さんって感じじゃん」
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    「ははは、昼間っからゴロゴロしているからだぞ」
    「そんなこと言ったって、温泉旅館なん 3184

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     こんな何もないところでの娯楽、悠にはスマートフォンで時間をつぶすくらいしか思いつかない。祖母といっしょなら散策コースをゆっくり一巡りしてみたり、土産物屋をのぞいたり、いろいろと思いつくものもあったが、同じユニットのメンバーとそういうふうに過ごすところはいまいち想像できなかった。
    「そんな端っこにいないでこっち来たらいいじゃねえか」
     トウマがごろごろしながら手招きしてくる。
    「やだよ……、なんかおっさんっぽい」
    「おっさんって。俺はおまえと3つしか違わないんだぞ」
    「だってアイドルっていうか休日のお父さんって感じじゃん」
    「なんだよそれ……」
    「ははは、昼間っからゴロゴロしているからだぞ」
    「そんなこと言ったって、温泉旅館なん 3184