生と死の不可逆を無理矢理捻じ曲げた。正確には、捻じ曲げてもらった。
「……これで、満足ですか?」
「はい。ありがとうございます、エーテルネーア様」
寝台に横たわる身体はどこもかしこも傷だらけで、ぐるぐると包帯の巻かれた手を取り頬を寄せる。冷たくともほんのり温かい体温は、手首から伝わる脈打つ鼓動は、彼が生きている紛れもない証拠だ。
「今度は、ちゃんとやってみせるから」
はじめ、ミゼリコルド様は呆れた顔で心底意味がわからないと言った。エーテルネーア様は肯定も否定もせず、君がそれを望むならと言ってくれた。
魂の抜けた亡骸を引き取って、アークの術式で離れた魂を引き戻し元の身体に繋ぎとめる。だがそのままでは同じことの繰り返しにしかならないから天子の呪いを受けない聖印と共に今までの記憶を曖昧にしてもらう特殊な式も組み込んでもらった。
この身体を貰う見返りに、地上は、彼の所属していた組織は、少なからずアークからの恩恵を受けられる。それが私の出した条件だった。
「ねぇ、フーガ」
目を覚ました君は私を見てなんて言うだろう。また笑ってくれるかな、それともやはり怒るのだろうか。
それを考えるだけで待っているこの時間すらも楽しくなってくる。早く、早く。でも、まだ休んでいていいから。
君の記憶がまどろむまで、あとすこし