わたしの愛しいあなた馬鹿なやつら。なんでこっちの要求を大人しく受け入れないんだろう。歯向かったところでこれっぽっちも勝ち目なんて無いのに。
皺ひとつ無かった黒のスーツがいびつに歪んで、しなやかな脚が標本ピンのように肩を踏む。痛そう。
「……どうします? もう少し抵抗なさいますか?」
床に倒れる男へ小首を傾げながら問う巳波を横目に、この部屋で一番立派なデスクに鎮座するパソコンへ電気を通す。静かな機械音に続いてキーボードのタップ音が響き、デスクトップが立ち上がったところですかさず持ち込んだメモリをセットする。目的のフォルダへかかったセキュリティは事前に調べたパスワードを難なく打ち込んで解除。データをコピーしている間に周りを見渡すが辺りは死屍累々といった雰囲気だ、全員生きているけど。
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