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    柚月@ydk452

    晶くん受け小説

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    柚月@ydk452

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    ミス晶♂短編
    3周年ログストネタ。こんな感じで駆けっこが始まったのかもしれない。

    #ミス晶♂
    #ミスラ
    mithra
    #まほやく
    mahayanaMahaparinirvanaSutra
    #魔法使いの約束
    theWizardsPromise

    あなたに届ける物語貴方に届ける物語

    「じゃじゃん!今日は魔法を使わずに!」
    「駆けっこ対決して賢者ちゃんに物語をお届け〜!」
    スノウとホワイトの朗らかな声が、食堂に響く。突如始まった提案に、ある者は怪訝な表情を浮かべ、ある者は淡々と聞き流す。
    良くも悪くも変わらない、今となっては魔法舎の日常だ。
    「駆けっこ対決ですか?魔法を使わずに?」
    「南の国では、よくクラスの人達と遊んだりしたんですけど…。」
    リケとミチルの返答に、良くぞ聞いてくれましたとばかりに双子は目を輝かせた。
    「それじゃそれ!我らは魔法使いであるが故に、魔法を使えば大抵の事は片がつく。」
    「もちろん魔法舎での訓練や依頼をこなしている皆は、当初に比べれば魔法力も協調性も育っておるじゃろう。」
    自由で気まぐれで、個性豊かな魔法使い達が一箇所に暮らしている事自体が希少なのだ。無論、それを取りまとめている賢者の努力もあってこそ。
    今回はそんな賢者の気晴らしにもなればとの思いもありつつ。
    「…だが我らは気づいてしまったのじゃ。」
    「…恐るべき事実にな。」
    深刻な表情を浮かべる双子に、近くの魔法使いはごくりと息を呑む。

    「「基礎体力って大事じゃん??」」

    思いもよらなかった回答に、白けた空気が場を包んだ。
    「という事で、皆の基礎体力を順位付けしまーす!」
    「強制参加でーす!」
    そう告げると、スノウとホワイトはくるくると手を取り合って踊った。魔法舎を取りまとめる彼らの提案に、周囲の反応は様々だ。
    「それはいいな!純粋な体力勝負って、なんだかんだ初めてかもしれない。俺はレノックスとたまに鍛錬しているが、他の人も興味があるな。」
    「オズ、カインだけに頼ってはだめですよ。僕達もしっかり頑張りましょう。」
    「…………何故………。」
    「オズ様、懐かしいです。久しぶりに駆けっこをしましょう!」
    オズの周りを取り囲み、盛り上がりを見せる中央の国一同。
    「安心しろ、ヒース。俺が一位を獲ってやる。お前は待っているだけでいい。ネロ、報酬はレモンパイだ。ファウスト、勝ったら実技を増やせ。」
    「…確かに俺は一位はとれないだろうけど、ちゃんと参加するよ。」
    「何で俺らが褒美を与える事になってんの…?」
    「別にチーム戦じゃないんだが…?」
    シノを除き、静かに沈鬱な表情を浮かべる東の国。面白好きな西の国、団体行動の得意な南の国と各国特色あれど、前向きな姿勢を見せる一方で。

    「ハッ、馬鹿馬鹿しい。んなもん今更比べる事に何の意味がある?じじいの世迷言も大概にしやがれ。」
    フライドチキンを頬張りながら、苛立ったような声でブラッドリーは席を立つ。
    「なんでそんな疲れることをわざわざしなきゃいけないのさ。阿呆らしい。」
    「走る必要、ないですしね。空間魔法が使えれば十分です。」
    オーエン、ミスラもそれに続く。
    過酷な環境で生き抜いてきた北の魔法使い達は、強さが全てだ。特にブラッドリー、オーエン、ミスラは長年殺し合いを重ねてきた間柄。今でこそ奇跡的に同じ時間を共有しているが、次の瞬間にそれが崩壊するのも、もはや日常茶飯事だ。
    「ええー?つれなーい!」
    「空気読んでー!」
    「やだね。」
    「やだ。」
    「お断りします。」
    北の3人揃ってずらかろうとしたその時。

    「あ、皆さんおはようございます!」
    幸か不幸かのタイミングで、晶がやって来る。
    苛立っている北の魔法使い達を見ても恐ることなく、彼は笑顔を浮かべていた。
    「どうしたんですか?」
    「賢者ちゃーん!」
    「実はじゃのう…」
    事の経緯を説明された晶は、成程と頷く。何よりもまず、スノウとホワイトが自分のために企画してくれたことが嬉しかった。
    もちろん強制するつもりはない。
    けれど折角なら、一緒に楽しみたい。
    晶はそっと思案しながら、立ち去ろうとした北の3人に声を掛ける。
    「確かにミスラは強いですし、足も長くて格好良いので、走る姿はきっと様になるんでしょうね。」
    ぴくりと、ミスラは立ち止まる。
    「ブラッドリーは何と言ってもボスですから、きっと瞬発力や俊敏性はこの中でも一番なのかもしれません。」
    続いてブラッドリーも立ち止まる。
    「オーエンは…………走らない方がいいかもしれません。怪我をするかも。」
    「お前失礼すぎるだろ。」
    「いえ、オーエンの走る姿がちょっと想像できなくて…。お気持ちだけで十分です。ありがとうございます。」
    「勝手に終わらせるなよ。こいつらよりも走れるから。」
    「あ?盗賊団舐めんな、足腰の筋力はてめーよりあんだよ。」
    「賢者様の言う通り、俺が一番ですよ。オーエンは不戦敗で結構です。」
    シンと静まり返ったのも束の間。

    「「「殺す」」」

    「それでは平和に穏便に、駆けっこ対決で決めましょう!!」
    魔道具をいち早く取り出した彼らを引っ張りながら、晶は慌てて声をかける。
    「スノウ、ホワイト!中庭で良いですか!?」
    「おお、さすが賢者ちゃん!」
    「我らの賢者ちゃんは流石じゃのう!」
    ウキウキと弾む双子の後ろで、他の魔法使いは改めて晶の重要性を理解する。
    北の魔法使いの手綱を握るのは、もはや双子ではない。力で屈服させる事なく、彼らの尊厳と矜持を守りながらも寄り添ってくれる彼の存在は、今や必要不可欠だ。
    ならば祝福と、祈りを込めて。
    ささやかな物語を贈ろう。

    「ところで賢者様。報酬ください。」
    「まだ始まってないですよミスラ…。」
    「今晩は絶対に一緒に寝てください。」
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