スモアディで水族館デート水族館の青い光に包まれた静かな通路を、スモーカーとアディオは肩を並べて歩いていた。巨大な水槽の中には、色とりどりの魚たちが悠然と泳いでいる。その姿に、アディオは少し興味を持ったように立ち止まり、水槽をじっと見つめた。
「お前、こういうとこ来るのが好きなのか?」アディオがふとスモーカーに問いかけた。
「まあな。たまにはこういう場所も悪くないと思ってな。落ち着く場所だろ」スモーカーは口元に微笑を浮かべて答えた。
「落ち着く場所、ねぇ…」アディオは小さく笑いながら、水槽の隣にある解説プレートをじっくりと読み始めた。魚の生態や特徴が細かく書かれたプレートを見ながら、時折「こんな小さいのに長生きするんだな」とか「こんなカラフルなのに毒持ってるのか」と呟いていた。
スモーカーはそんなアディオの様子を見て、自然と微笑んだ。彼がこんなにも熱心に魚の解説を読む姿に、少し意外な気持ちもあったが、それ以上に「ここに来てよかったな」と思わずにはいられなかった。
スモーカーの微笑みを、アディオがふと目にしてしまった。「なんだよ、その顔は…」アディオは少し照れたように顔を背け、軽く肩をすくめた。
「別に。お前が楽しそうにしてるのが、ちょっと嬉しかっただけだ」とスモーカーは軽く返した。それに対して、アディオは少し不機嫌そうに見えたが、再び無言で歩き出した。
やがて二人はシロイルカの展示エリアに差し掛かった。白いイルカが水槽の中を軽やかに泳ぐ姿に、アディオはふと足を止めた。
「スモーカー、お前そっくりだぜ」と、いたずらっぽく笑うアディオ。
「はぁ…?こんな可愛かねェだろ」と、スモーカーは少しむっとした様子で返す。
「いや?可愛いぜ、ははは、可愛い」と、アディオはさらに笑いながらスモーカーをからかった。
スモーカーは軽くため息をつきつつも、アディオの笑顔にどこか安堵を感じていた。
少し歩いた後、人が少なくなったエリアに差し掛かると、スモーカーはふとアディオの手を取り、そっと握った。アディオはその行動に驚きつつも、何も言わずに手を握り返した。
二人の間に、言葉はいらなかった。ただ、互いの存在を感じるその瞬間が、何よりも大切だった。
しかし、遠くから人の気配が感じられると、スモーカーは自然と手を離した。その動作はあまりにもさりげなく、まるで何事もなかったかのように振る舞うが、アディオの指先に残る温もりは消え去ることはなかった。
「今日はありがとうな、スモーカー」とアディオがぽつりとつぶやいた。それに対して、スモーカーはただ無言で頷くだけだったが、その表情には少しの安堵が浮かんでいた。
二人は静かに出口に向かい、夜空の下、外の新鮮な空気に触れる。スモーカーはアディオの隣を歩きながら、もう一度手を握りたくなる衝動を抑えつつ、ただ淡々と前を見据えていた。