罪咎目的もなく、ただ自身を何かに役立てたくてやってきた土地で宝物に出会った。
能力を厭わずそばにいてくれる友人達。
実家のように温かな帰る場所。
そして、村上の人生を根幹から揺るがせた来馬辰也。
村上は全てを守りたいと思った。
一等来馬を守りたいと願った。
それでも戦いに身を投じれば、一つ傷なくとはいかないのが現実だ。
トリオン体での戦闘は替えが効く。そのため捨て身の戦法も合法とされる。鈴鳴第一はそんな中、珍しいくらいトリオン体を傷付けないように戦う部隊だった。特に隊長の来馬を、村上も別役も身を挺して庇う。誰もそのあり方を攻めはしないが、ボーダーの中でも少し毛色が違うのは彼らが支部所属だからだろうかという声も存在するのは確かだった。
村上の部屋のクローゼットには、幾つもの来馬の破片が転がっていた。
腕、脚、指先、胴体、眼球、首。
まるで死体をバラした様な有様に絶句する。が、よく見るとそれは生身ではなく戦闘で破壊されたトリオン体の成れの果てだと言うことがわかった。
村上は大切にしまわれた来馬の首をそっと持ち上げる。美しい断面の、破損のない首はまるで眠っているようだった。
「これは俺の罪なんだ。来馬先輩を守れなかった俺の弱さそのもの」