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    vi_mikiko

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    vi_mikiko

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    貴方は何処にkissをする? 企画参加作品です。降志です。
    ・額(祝福)
    ・鼻(愛玩)
    ・唇(愛情)

    ※ふるやさんが童●設定です

    #降志
    would-be

    「私、ふるやさんのことが好きなの……」

     上気した頬に、潤んだ瞳。降谷の隣に立つ女性・宮野志保は、恋する乙女の顔をしていると言って差し支えないだろう。酔っ払ってへべれけになっていることを除いても。
     動揺で彼女を支えていた腕の力が弱まり、かくんと膝を折らせてしまう。転ぶ前にもう一度腰を抱きよせ、正面に立たせる。
     残暑が過ぎ、秋が始まろうとする夜。仕事の飲み会で酔い潰れた彼女を家まで送っている最中の出来事だった。

    「……本当に?」
    「ええ。大好き」

     降谷の胸が歓喜で踊った。この記念すべき日を祝福し、彼女の額に思わずキスを贈る。ふふふと笑った彼女が可愛くて鼻に愛玩のキス。ついでに頬にもキス。
     最後は……迷って、唇に……



     携帯のアラームで我に返る。デスクのパソコンの時計を見ると、ちょうど午後二十二時を回るところだった。今日は合同捜査を行っているFBIとの親睦会と称した飲み会。いつもなら御免被るところだが、今日は宮野志保がいる。さすがに開始時間からの参加は無理だったが少し顔を出そうと、仕事を早めに切り上げた。行き先は安居酒屋のチェーン店。お互い高給なのだからもっと良い店を設定すればいいものを、向こうのお偉い方が「日本のトリノナンコツが食べたい」と言ったそうだ。さすがFBI、物好きだと鼻歌を歌いながら庁舎を出た。

     あの日は迷ったあげく、結局唇には口づけなかった。
     やっぱり、初めてのキスはお互い素面の状態で迎えたいから。

     そもそも彼女は自分が何を言ったか覚えているのだろうか。酔っ払いの戯言だった可能性も……いや、それは考えたくはない。首をぶんぶんと振りながら狭い店内に入り、宴会席へと向かう。最初に目についたのは、鳥軟骨をむさぼり食うジェイムズ。次に、凶器ではないかと思うほど巨大なビールジョッキを掲げるジョディ。その奥に……愛しの彼女がいた。

    「赤井さん」
     志保に声を掛けようとした降谷は、一度開いた口を結んだ。隣に、あろうことか天敵の男が座っていたのだ。酒で火照った彼女は、今にも赤井の肩にしなだれかかろうとしている。
     既視感のある光景。嫌な予感が降谷の全身を駆け巡る。これは、これは。

    「赤井さん、好きなの……」

     天敵に向けられた、潤んだ瞳。反対に石化しさらさらと乾いた降谷の心は、砕け散って灰になった。彼女はその灰燼を踏みにじるように赤井の肩にもたれ、すうすうと眠りに落ちていく。

    「よかったですねえ……二人ともお似合いじゃないですか」

     声を張り上げると赤井がようやくこちらの存在に気づく。志保を揺り動かしながら、彼らしからぬ冷や汗を垂らした。
    「降谷君、違うんだ」
    「もうお開きみたいですし、僕は帰りますよ。お幸せに……はは……」
     困り顔の赤井に、降谷はピキピキと青筋を立てながら微笑みを返す。表情を崩さないまま早足で退店し、夜の繁華街を走った。

     あの日、彼女の唇にキスをしなくて本当によかった。
     誰にも渡したことのない、降谷の初めての唇を――
     夜風は思った以上に冷たく、鼻の奥まで染み入る。このまま秋のせいにして、男泣きしてやろうかと思った。



    「あかいしゃあん」
    「志保、いい加減にしろ」
    「シュウ!」
     志保に手を焼く赤井に、派手に抱きついてきたのはジョディだった。嫉妬心から……では無論ない。千鳥足の彼女も完全に脳が酒でやられている。志保はその状況を楽しむようにくすくすと笑ったかと思うと、糸が切れたように黙り、また切なげな表情を見せた。

    「好きなの……」
    「わかってる」
    「私ね、ふるやさんが、大好きなの……」
    「だから、聞き飽きたぞ」
     志保が膝の上に寝転んでくるので、灰が落ちないよう煙草を消す。私も私もと反対側に回ったジョディが、もう片方の膝を占領する。

    「次の飲み会はいつやるう? 結局フルヤは来なかったじゃない?」
    「もう永遠に来ないだろうな……」
     赤井はタイミング悪く現れた仲間の心中に思いを馳せる。気の毒な降谷君。だが酔っ払い二人に膝を奪われた自分も負けてはいまいと考えながら、煙の出ない溜息をついた。



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