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    ドラウズ

    @drowse_zzz

    【書いてるの】
    ピクミン4自機受け小説/ボルドルド隊夢小説
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    ドラウズ

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    ピクミン4の自機小説です。
    自機のアンシー📜が脳震盪+骨折をする話。
    ちょっぴり不穏要素あり。

    #ピ4自機小説_アンシー

    基盤錯乱普段から油断しがちって訳じゃないし、自分がドジな訳じゃない、と思う。ちゃんと警戒してピクミン達やオッチンを引っ込めたり、トツゲキするタイミングを計ったりしてる。ダンドリチャレンジやダンドリバトルだって、多分……そこそこできる方だと思う。
    ただまぁ、そう上手くいかないこともあるわけで。

    『危ない!』

    距離感やタイミングを見誤ったせいで、原生生物の振り払いに巻き込まれてしまった。ピクミン達も何匹かやられてしまったらしい。

    「ッ……!」

    ゴンッ!と大きな音を立てて変な体勢で岩に打ち付けられる。ヘルメットに頭をぶつけたのかめちゃくちゃ痛い。
    吹っ飛ばされて無防備になった俺に原生生物は狙いをつける。頭が変なかんじで、おれには成すすべもない。
    けどここにいるのは俺だけじゃない。いつの間にかピクミンたちを呼びあつめたオッチンが、原生生物の隙だらけのせなかにトッシンをしてピクミン達をはり付かせた。こんどは原生生物がはんげきをするまえに、ちゃんとたおせたらしい。

    あたまが、まわらない。
    いきをするだけで、むねがいたい。
    たいちょうやこりーさんがなにかいってるけど、よくわからない。へんじをしなきゃ。

    「う、あ゙……」

    いたくて、ぜんぜんしゃべれない。いきが、おかしくなる。
    なにかが、おれをはこんでる。そして、まぶしいひかり。



    「アンシー!生きてるか!」
    「意識消失してるねえ。隊長、急いで医務室まで運ぼう。」
    「ああ、分かった!」

    一見外傷はなさそうだけどあれだけ勢いよく打ち付けられて脳震盪を起こした様だし、おそらく肋骨も何本か折れてる。意識消失もあんまり長いと危険だねぇ。

    医務室まで運んでベッドに寝かせたところで、新米くんがうっすらと意識を取り戻す。

    「…………?」
    「ここは医務室。なにがあったか覚えてる?」

    事態が飲み込めない様子で、あたりをゆっくりと見回した。寝起きだからか、まだ症状があるからか、ちょっとぼんやりしてた。

    「えっと…………探索に行ってて……あれ、どこに……?」
    「覚えてないなら無理しなくていいよお。ところでこれ何本に見える?」
    「3本…?」
    「ボヤけたりとかはない?」
    「特には……」

    うん、視界も大丈夫そうだねぇ。
    その後も診察も続けて他に骨折はなく打ち身程度で、思ったよりも軽症そうなのが分かってて良かった。けどまだまだ油断は出来ない。

    「脳震盪を起こしたし肋骨も折れてるんだ、当分は任務を任せられないな」
    「本当は最低でも1ヶ月くらい休んで欲しいんだけど……状況もあるから、様子を見つつボクの特製の薬を飲んでもらって……2週間くらいかな」
    「2週間……」

    あんまり表情が動かない新米くんだけど、このときばかりは落ち込んでるのがよく分かる。それも当然だよねぇ、なんせ自分のミスで任務の進行が大幅に遅れる事になるんだもん。

    「怪我してしまったのは仕方がない。無茶をすると事態の悪化を招くから、焦るのは分かるがしっかり休むんだ。なに!ウチには優秀なレンジャーのディンゴもいる!宇宙犬が苦手なようだからオッチンとの連携は出来ないが、それを補って余りある実力があるぞ!」
    「大丈夫だよお。ディンゴだって最初の頃は大っきな怪我したこともあったけど、今はしっかり見極められるようになったからねぇ」

    んふふ、裏で悔し泣きしてた頃が懐かしいや。今やボクの前でもそんなこと殆どないから、ちょっとさみしいかなぁ。

    「そもそもだ、まだろくな訓練も出来てない君をこんな危険な初任務に呼んでしまったのだから、実力不足は仕方ないさ」
    「隊長が宇宙犬以外の生き物が平気だったら、新米くんの負担も減らせてたんだけどねえ」
    「うっ……!それは本当に、申し訳ない……」
    「あ、えっと、いえ、苦手なものは仕方ないですし……」

    新米くんが負い目を感じ過ぎないように、ボクがちょっと隊長の弱いところをつつく。まぁ実際、隊長が前線に出られるなら良かったのはホントだけどねぇ。



    「ま、お話はこれくらいにして、はい!これ飲んでねえ」
    「こ、これって……」

    話しつつも準備をしてたパピヨンさんが、何やら怪しい色の液体が入った小瓶を差し出してきた。美味しくなさそうな紫色をしている……。

    「怪我の治りを良くする薬だよお。味の改良がなかなか難しくて、あんまり美味しくないけどねえ」
    「う…………」
    「嫌な気持ちは分かるが、怪我の治りが早いのは本当なんだ……」

    どうやら隊長も飲んだことがあるらしい。渋い顔をしているから、やっぱり美味しくはないみたいだ……。

    「1つアドバイスをしよう。こういうのは一気に飲んだほうが、長引かないで済むぞ」

    隊長が真剣な顔で助言してくれた。ええい、ままよ!
    気合を入れるために、目をつむって奥に注ぎ込むように飲んだ。うっ……。

    「んく、んぐっ………………うえぇ……」

    めちゃくちゃ不味い。なんていうか、この、なんだ……エグみ?とにかく不味かった。

    「はい、お水あるよお」
    「ありがとうございます……」

    口直しに用意してたであろう水で、薬の残りを喉の奥に流し込む。うう、これでもまだ舌にエグみが残ってる……。

    「怪我も大きいし、これを毎日2回だからねぇ」
    「そ、そんな……」

    なんとなく察してはいたけど、これを2週間毎日なんてあんまりだ……。

    「あと、治りを早くする為にも絶対安静だからねぇ?ちょっとしたトレーニングとかも駄目だよぉ」
    「はい……」
    「諸々の処置はキミが寝てる間にやっとくから、安心して横になっててねぇ」
    「ありがとうございます。でも、流石にすぐにはねれないで、す…………あれ」

    急に眠気がやってきた。もしかしてさっきのんだくすりのせい?
    ゆっくりと意識が遠のいていく。



    パピヨンが紫の薬に混ぜた別の薬の作用で、穏やかな寝顔になったアンシーを見て一息つく。

    「それじゃあ、あとは任せたぞパピヨン」
    「アイ・コピーだよお」

    心配ではあるが、今後のことも考えなければいけない。パピヨンにアンシーを任せて医務室を後にする。
    他の隊員達に会議室に集まるように端末で指示し、私もそこへ向かう。

    「隊長!アンシーさんは大丈夫でしたか!」

    扉を開けるなり、コリーが声をかけてくる。

    「ああ、ひとまずはパピヨンの技術と薬でなんとかなる範囲なようだ」
    「良かった……けど薬って」

    コリーが苦い顔をするのに続けて他の隊員も感想、というよりも愚痴をこぼす。

    「……まあ、十中八九あの紫色の不味いやつだろうな。しっかり効くのは確かだから、味はもう諦めるしかねぇが……。まぁ改良は諦めてないらしいし、気長に待つしかねぇな」
    「ううむ、あればかりは癖の強い珍味をも上回る味の悪さであるからなぁ。いかに効くとはいえ、パピヨン氏でも味の改良が難しいのが悔やまれる……」

    我々はレスキュー隊だ。私やレンジャーのディンゴ以外の普段は後方支援を担当している者でも、どうしても大怪我をすることがあった。故に、皆があの薬の味を知る羽目になったのだ……。そんなことがなくとも、パピヨンの方から今後躊躇わない為だと、味見をさせてきそうではあったが。

    「パピヨンは2週間ほどで治すと言っていた。その間はディンゴに探索を任せる」
    「あ、アイ・コピー!」
    「コリーはこれまでの情報を整理しつつ、ディンゴとともにオペレーターとして補助にあたってくれ」
    「アイ・コピー!」
    「ラッセルは今後の安全の為にも、アンシーの宇宙服の強化に専念してくれ」
    「アイ・コピーだ!任せたまえ、シザイは使うだろうが良いソウビを作り上げて見せよう!」
    「ほぉ?なら俺は足りなくならないように、シザイも沢山見つけて来てやるよ」

    軽口を叩き合える程には気持ちも上向いて来たようだ。

    「隊長はどうするんですか?」
    「私も探索に参加出来れば良かったが……救助者のケアとレスキューキャンプの見回りをオッチンとしていよう。まだ不安な方も多いようだしな」

    このあたりは不思議なことに、原生生物が寄りつかないみたいだ。だがもしもがないとは言い切れない。ディンゴが探索に出てレスキューキャンプに隙ができてしまうし、いざとなったときに守れる力がある者がいないと困るだろう。未だにピクミンにすら慣れないが、オッチンがいれば原生生物の対処は……やってやるさ!

    「あとはそうだ、各自余裕のあるときにアンシーの見舞いに行ってやってくれ。おそらくはパピヨンの薬でよく寝ている方が長いかもしれないが……起きたときに誰かが居た方がさみしくないだろう」
    「アンシーさんはおそらく初めての大怪我でしょうし、心のケアもみんなでしませんとね」
    「うむ、こんな重大な事を初任務にさせてしまっているからな。安心させてやらねば」
    「そうだな。ひとまず緊急会議はこれで解散だ。各自任務についてくれ」
    「「「アイ・コピー!」」」
    「あ、そうだ、ディンゴはちょっと残ってくれ」
    「え?あ、はい!」

    先程から、どうにも浮かない顔をしていたのだ。皆の前では言いづらいかもしれないからな、一対一で聞くとしよう。



    「えっと、隊長、どういった用件でしょう!」

    な、なんで俺だけ残されたんだ?いや、でも考えてる事を相談するいい機会かもしれない!

    「先程からディンゴが浮かない顔をしているのが気になってな。良ければどういったわけか教えて欲しいんだ」

    良かった、ちょうど心配してたことについてだった!

    「た、隊長は俺が優秀なレンジャーだったてことは、よく分かってますよね?」
    「ああ、我が隊の誇りだな!」
    「ありがとうございます!……で、そんな俺がめちゃくちゃ活躍、しかもアイツよりも活躍したらですよ?いくら新人とはいえ、自分なんか要らないんじゃないかって落ち込むんじゃないかって」

    情けねぇ話だが、俺だって新人の頃はそんなときがあった。けど嘆いてた俺を先代やパピが励ましてくれたから、自他ともに優秀だと自信を持って言えるほどの実力を俺は身につけられた。

    「なるほど……私もまだまだ新人の頃はヘコむことも多かったからな。しかしどうしたものか…………そうだ!」
    「いい案が思いつきましたか!」
    「ああ!ディンゴだって苦手だったり対処しづらい原生生物もいるだろう、そこをアンシーに話してやればいいさ!」
    「……なるほど!俺は宇宙犬と一緒じゃない分戦い方が変わりますからね、確かに難しいと感じる原生生物もいるでしょう。それで、俺に出来ない事を出来てるって褒めてやれば更に良い!」
    「その通り!流石ディンゴだな!」
    「い、いえ!隊長こそ流石です!」

    へへ、隊長に褒められたぜ……。おっと!呆けてちゃいけねぇ!

    「それじゃあ隊長、俺は探索の準備をしてきます!」
    「ああ!任せたぞ、ディンゴ!」

    コリーにもこのことは伝えておくか。新人が良く出来てるポイントを探すためにも、アイツの視点も大事だからな!



    ぼんやりと薄暗い中で目を覚ます。ライトは薄くついているが、窓を見るともうとっくに夜らしい。
    息は……問題なく出来る。深呼吸はちょっと痛かった。固定のためなのか、バンドのようなもの?が胴体に巻かれている。
    頭のフラつきはよく分からない。寝起きならそれもそうか。たんこぶは……出来てるっぽい。頭痛がしないだけマシ、かな。
    サイドテーブルにお見舞いらしき物がいくつかと、パピヨンさんが残したであろう薬やメモがあった。

    [新米くんへ
    念のため、起きたら体温を測っておくこと。ご飯はテーブルに用意してあるものを食べてね。暖かくはないけど、美味しく食べれる味付けにしてあります。
    もし熱が出たら解熱剤は用意してあるから、小瓶の錠剤を2錠飲んでね。飲んだら時間を記録しておくこと。
    脚を骨折したわけじゃないけど、脳震盪をおこしたのでトイレには気をつけて行くように。尿瓶しびんを用意しておいたので、もしトイレに行くのが大変そうだったらこれを使ってね。
    パピヨンより]

    「げ、尿瓶……は出来れば頼りたくないな……」

    なんとなく、やだ。やっぱり排泄はトイレでしたい。
    とりあえず尿意はあるので、ゆっくりと、気をつけてトイレに行く。

    トイレから戻り、ベッドのフチに座る。
    あ、良く見たらこれリクライニング出来るやつだ。しかも電動。
    一旦横になり、いい感じの角度に調整する。えーっと、そうだ、体温測らなきゃ。

    計測が終わった音が鳴る。……良かった平熱だ、熱は出てないや。
    用意されてた食事はオートミールのお粥のようなものだった。あ、これ味からして宇宙食から作ったやつかな。それでも結構美味しい。
    普段家で食べてる食事よりも健康的かもしれない。いや、お粥だと歯ごたえが足りないから、その点ではパスタの方が……良いかも?

    「(そういえば、久しぶりの一人の食事だな……)」

    朝と夜はシェパード号の中で皆と食べてるし、昼はビーグル号内部ではあるけど通信を繋いで食べてる。宇宙食ではあるけど、なんだかんだでそこそこ賑やかな食事になってた。

    さみしいのも、随分と久しぶりに感じた。
    大丈夫、さみしいのは前と変わらない。慣れてる。賑やかになったから、久々の落差に慣れてないだけ。
    大丈夫、変わらないし変われない。そうだろ?

    当分寝れそうにないだろうから、お見舞いの品らしき物を見ていこうか。
    まず隊長の。オッチンの写真が何枚もある。療養している間、俺がさみしくないようにだろうか。あれ、俺が一緒に写ってるものもある。いったいいつ撮られたんだろ……。
    次にコリーさんの。美味しそうなクッキーだ。ちょっと小さいけど缶でくれてる。……まてよ、これパピヨンさんの許可通ったのか?隠すように置いてあったし、コリーさんのことだからこっそり持ってきたのかもしれない。負の信頼?
    次にディンゴ先輩の。えーっと、色々書いてある手紙だ。……なるほど、以前の大怪我の経験からのアドバイスかぁ。助かる。大怪我なんて初めてだし、怪我でちゃんとしたアドバイス貰うのも初めてだ。……パピには従っておけとも書いてある。いったいなにがあったんだ……。

    「ん?これは……」

    原生生物への対処の仕方を質問してきてる。あれかな、見てるだけじゃ分からないこともあるからなぁ。オッチンなしで対処したときのことを元に色々書いておくか。

    ……よし、こんなものでいいかな。こうやってしっかり書くのも久々かも。
    次はパピヨンさんの。何かの本……あらすじがあるしこれ小説だ。ちょっと不思議だけど穏やかな日常系っぽい。こういう本読むなんてなんだか意外だ。それになんとなくデジタルで読んでそうだった。
    色々とやかく言うより、小説でも読んでゆっくりしてねってことかもしれない。まだ眠くはないし、とりあえずこの小説でも読んでいよう。


    「アンシーさんはまだ寝てるようですね」
    「そのようだな。本が手元にある故、寝落ちてしまったのだろう」

    朝食を終え、コリーと同じ目的であるアンシーの見舞いに医務室へ来た。
    暇を持て余してしまいそうだからと音楽プレイヤーを持って来てやったが……、まぁテーブルに置いておけばよかろう。

    「コリィ〜〜〜?」
    「ギャッ!」
    「これ、寝ている者が居るのだから静かにしたまえ!」

    部屋の隅に居たパピヨン氏が、後ろからコリー氏にやや怒った様子で近づく。コリー氏の驚きようもなかなか面白いな!まぁ十中八九アレの件であろう。
    アンシーを起こしてしまわぬように、我々は小声で会話を始める。

    「まったく、コリーったら油断も隙もないんだから!新米くんのお見舞いにクッキー置いてったでしょお」
    「そ、そんなに多くないですし、おやつがあった方が気分が上向くかなぁと……」
    「だぁめ。第一あのクッキーってカロリー高いやつじゃん。それに新米くんは今動けなくてカロリーの消費も出来ないんだから、なおさらダメだよお」
    「そんなぁ……せっかくお気に入りのクッキーを持ってきたのに…………」
    「そんな顔してもダメ!」
    「コリー氏よ、流石に諦めたまえ」
    「うう……」

    コリー氏の食への欲求は相変わらずだな。効率ばかり求めていては確かに味気はないが……ふむ?

    「おや、どうやらまだ缶の封が切られていないようだな」
    「? ええ、まぁ。開けた物を持ってくるのもなんだかなぁって思いまして……」
    「ああいや、そうではないが……そうするとアンシー氏はまだあの食べていないのか」
    「そうだねぇ、食べちゃう前に没収出来て良かったよお」

    折角送られた物を味わう前に没収されるというのも、なかなか酷であるな……。

    「ふむ、ならばパピヨン氏が管理して与えれば良いのではないか?」
    「……ラッセル〜、まさかそっち側なのお?」
    「なに、美味しそうなクッキーが食べる前に没収されたというのも、なかなかショックな出来事ではないかと思ってな。一口も味を知らないというのも可哀想ではないか」
    「そうですそうです!ショックで元気出なくなっちゃいますよ!」

    それはコリー氏だけ、というわけでもないからな。多少健康には良くないものだとしても、我でも同じ様なことがあったら深い悲しみを覚えるかもしれぬ。

    「はぁ〜〜………………仕方がないなぁもう」
    「やったー!」
    「ただし!コリーはもうおやつのプレゼントはダメだからね!」
    「う、……まぁ、クッキーが許されただけ、いいですかね……」
    「も〜〜、そもそも本当はダメだなんだよ?しかし、ラッセルまでコリーの味方するなんて」
    「なに、こんなときは少しくらい甘やかしてやるべきだろうと思ったまでよ」

    新人の初任務でこんな大役を任されてしまっているのだ、今後も気にかけてやるべきだろうな!



    「……ほんとバーナードが居なくて、いや、これはやめとこお」
    「パピヨンさん……」

    アンシーさんが遭難者達を救助してくれてるとはいえ、その中にまだバーナードさんはいない。治療した葉っぱ人の中にも、まだ彼は見つかってなかった。

    「いったいどこに居るんでしょう……そろそろ生命維持装置のバッテリーが気になる頃ですし」
    「普段は陽気だがああ見えて判断力がある故、スリープモードにして稼働時間を延ばしているかも知れぬがな……」
    「問題は、原生生物に襲われてたり事故で大怪我でもしてたら、流石に厳しいんだよねえ」

    ディンゴさんは途中で見失ったと言っていたけど……あのディンゴさんがそういうことになってる時点で、とても厳しい状況だったに違いない。流石に見捨てるような人ではないし。

    「今の我々に出来ることはディンゴ氏と今後復帰するアンシー氏のサポートだな」
    「ええ、自分達に出来ることを精いっぱいやっていきましょう!」
    「ボクも救助した人のケアとか、葉っぱ人の研究をしておかないとねえ〜」
    「はい!……それって半分はパピヨンさんの趣味じゃないですか?」

    その知的好奇心によって助けられてるところも多いけど、やっぱりなんだか心配だ……。


    「ぅん……」

    そろそろそれぞれの配置に着こうかというとき、もぞもぞとアンシーさんが目を覚ました。

    「おはよお新米くん」
    「おはよおございます、アンシーさん」
    「おはよう、気が紛れるだろう物を持ってきたぞ。テーブルに置いておくから後で使ってみたまえ」
    「ん…………」

    ぼんやりとした顔で、頭をゆっくり縦に振る。
    ちょっと久しぶりに見たけど、やっぱりアンシーさんは朝に弱いらしい。ラッセルさんが作った目覚ましのお陰で、最近は比較的ちゃんと起きられるようになっていた。

    「それじゃあ、僕らはそろそろこれで。薬は美味しくないですけど、頑張って下さい!」
    「ではな、早く良くなることを願っているぞ」



    「新米くん頭は痛い?」
    「んぅ」
    「胸は痛い?」
    「ん〜……んぅ」

    う~ん、新米くんはやっぱり朝が弱いらしいから、ちゃんと寝たあとの寝起きの問診は難しいなぁ……。雰囲気からして痛みはなさそうかな。

    受け答えがしっかりしてない新米をどうにかして、とりあえず体温は測った。うん、熱は出てないねぇ。

    「ご飯は食べれそう?」
    「ん」
    「一人で大丈夫?」
    「ん」

    ちょっと心配だから見てないとなぁ。コリーや隊長曰く、食べ物をこぼすとか食器を落とすとかは特になかったらしいけど……。

    「んむ、む……」

    こうして見ると、新米くんて結構かわいく見えるかもしれない。ガツガツ食べるディンゴの食べ方とは正反対だからかなぁ?背は大っきいけど。
    新米くんは身長が高いから、そもそも食べる量が多い。レスキュー隊に入る前はもうちょっと少なかったらしいけど、今は結構体を動かすし実はディンゴよりも食べてるくらいだそう。ただ身長に対して体重が軽かったから、本当はもっと食べて欲しいんだけどなぁ。まぁ、そこに関しては少しずつ増やして行ければいいかな。バーナードみたいに激しい偏食って訳でもないし。

    「んぉあ、した……」
    「お、ご飯食べ終わった?」

    しばらくしてご飯を食べ終わった様だけど……うーん、まだ呂律が回ってないや。食べ終わったけど未だに寝ぼけてる。アレで眠気は覚めそうだけど。

    「さて新米くん。ご飯も食べ終わったし、お薬飲もうねえ〜」
    「……ぅ」

    美味しくないのはちゃんと覚えてるのか、ちょっと眉間にシワが寄る。

    「飲めるう?」
    「んぅ〜……」
    「飲まなきゃ怪我が治らないよお。ほら、ちゃんと飲んだらクッキー食べて良いから」
    「ん……ん〜」

    新米くんはしぶしぶ、といった様子でちびちびと薬を飲んでいく。口直しにクッキーをあげるかぁ。まさかコリーのクッキーをこういうふうに使うとはねぇ。

    「う〜〜……あー、えっと、その…………お手数おかけしました…………」
    「うふふ、やっと目が覚めた?」
    「えっと、まぁ、はい……」

    薬を飲んだら流石に目が覚めたみたい。申し訳無さそうに顔に手をあてて、恥ずかしいのかちょっと隠してる。

    「朝が弱いこと自体はしょうがないよお。改善出来ない体質だってあるしねえ」
    「パピヨンさんでも無理そうですか……?」
    「出来なくはないけど…………別のところでしわ寄せが来ちゃうだろうね〜。少なくとも当分は難しいかなあ」
    「ん〜……、残念です」

    本人も困ってるみたいだけど、体を悪くしちゃう方法なら良くないからねぇ。うーん、研究しがいがあるよお!



    なんだか悪寒を感じるような……?
    朝に弱い俺の体質は、パピヨンさんでもまだどうにも出来ないのは残念だ。でも、将来的になんとかしようとしてるっていうのが凄い。流石スーパードクター。

    「コリーからのクッキーは没収しておいたんだけど……ラッセルにもちょっと言われたし、お薬飲んだらおやつに食べて良いよお」
    「あ、あのクッキー……」

    そういえばお見舞いにクッキーの缶があったなぁ。あれやっぱりコリーさんからのだったんだ。ラッセルさんが何か言ってくれたらしいから、完全に没収とまではいかなかったらしい。やった!
    今はパピヨンさんの手元にある。美味しいと無くなるまで食べちゃいそうだし、パピヨンさんに管理してもらう方が良いかもしれない。
    1枚だけ、と渡されたクッキーの個包装を開けて一口。

    「美味しい……」

    この味は多分バターが多いやつだ。そりゃパピヨンさんは没収する。砂糖も多いだろうし罪の味だ。……コリーさんはこんな感じの他にも持ってるの?別に医者じゃないけどちょっと心配になる。
    ちびちび味わっていても、そんなに大きくないからすぐになくなってしまう。名残惜しいけどこれで終わり。

    「そうだ、昨日言い忘れてたんだけど、このボタンを押せばボクのところに信号が来るんだあ。もし何か体調の変化とか異常があったら、これを押してくれればすぐに来るからねえ」
    「はい、分かりました」

    なるほど、ナースコール的なやつ。
    レスキューキャンプはすぐそこだし、すぐ来てもらえそう。広くなってきたとはいえど、行き来に困る広さじゃないから大丈夫でしょ。

    「ボクはそろそろ他のことやってくるから、大人しくしてるんだよぉ?」
    「はい、分かってます。ディンゴ先輩のアドバイスにもしっかり書いてありましたし……」
    「へぇ、ディンゴったらいったいどう書いたのかなぁ?」

    あ、やっべ。

    「あー、えっと……ほ、本人に聞いてもらうかこの手紙を読んでいただければ……」
    「ふぅん?」

    すいませんディンゴ先輩、売ります。
    手紙を受け取ったパピヨンさんは、なんとも言いにくい笑顔でへぇとかふぅんとか言っている。なんかこわい。

    「さて、それじゃあボクはディンゴのところに行ってくるねえ」

    恨まないで下さいね、先輩。俺だって命が惜しいので……。
    その後ディンゴ先輩がどうなったかは、結局俺は知らないままだった。



    1週間後。夜の食堂にて。

    「うーん……」
    「どうしたパピヨン、そんなに浮かない顔をして。もしかしてアンシーの治りが悪いのか?」
    「ああいや、そうじゃないんだぁ隊長。むしろ良いというか……良すぎるんだよねえ」
    「良すぎる?どういうことですか?」

    アンシーさんを除く皆で食事をしていて、そのアンシーさんの怪我の話になった。

    「実のところ、新米くん明日には復帰出来そうなんだよねえ」
    「……は?流石の俺様だって、パピの薬使ってもそんなに早くないぞ。脳震盪はともかく、骨折は流石に直ぐに治るもんじゃないだろ」
    「しかしパピヨンがそういう言い方をするとなると、……治りが早い体質って訳でもないんだな?」
    「うん、特段周りの人と比べて違いがあったとかは無いらしいんだよねぇ。ちなみにここに来てからも、特に治りが早いとかは無かったらしいよぉ」

    話を聞くと血液検査でも異常は見当たらなかったらしい。
    不思議だなあ、いったい何が原因なんだろう。特にそれらしいものは思い当たらないけど……。

    「シザイという万能な素材や時空が歪んでいる地下空間もある故、何か特殊なエネルギーの影響を受けた可能性もあるが……」
    「墜落の原因も未だに分かってませんからね……。整備不良ではなかったですし、あのバーナードさんがミスをするとは思えません」

    ここにやってきた人達もことごとく遭難していることから何かありそうだけど、ラッセルさんが調べてもよく分かってない。

    「とりあえずは経過観察をしつつ定期的に検査もする予定だよぉ。今のところは悪い影響がある訳でもないからねぇ」
    「分かった。よろしく頼むぞ!」
    「アイ・コピーだよお」



    「新入りよぉ、本当に大丈夫か?」
    「不思議なことに、むしろ前より調子が良いですね」

    もしかしたらスタミナも増えたんじゃないだろうか、って思えるくらいに調子が良い。パピヨンさんや隊長に言いつけられてるし、当分無茶をする気はない。俺も流石に何かあったら怖いし。

    「ま、なんかあっても俺様がいるんだ。お前はあんま気負わずにやってけ!」
    「っ、うす!」

    先輩なりの応援なのか背中をパンと叩かれ応援された。まだ心配なのか軽めの力だったけど。

    「ワンワン!」
    「げ、ワン公!」

    ちょっと遠くからオッチンの声が聞こえてくる。宇宙犬が苦手らしいディンゴ先輩は、声を聞いてそそくさと何処かへ行ってしまった。

    「ワゥ〜ン!」
    「よしよし、久しぶりだねオッチン」

    俺に飛び込まず直前で止まって、ハッハッと撫でて欲しそうにこちらを見る。いっぱい撫でてやるぞ!尻尾をフリフリと振ってるのがかわいい。
    オッチンもお見舞いに来ていたらしいけど、どうにも俺が寝てたタイミングだったらしいので触れ合えなかったのだ。

    「オッチンは元気にしてた?」
    「ワン!」

    全身を使ってオッチンを撫でてあげる。背の高い俺でも問題なく乗れるんだから、オッチンは凄いよなぁ。
    隊長がいてもきっと寂しい思いをさせてしまっただろうから、優しく、ゆったりと撫でて甘やかす。

    「オッチン、これからもよろしくな!」
    「ワウッ!」

    大丈夫、きっと上手くやれるよ、俺。
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